エピソード1 底の見えない沼がある
季節は夏。セミの音はけたたましく、クーラーの聞かない自習室は蒸し風呂のようになっていた。
【ギュゥン、ドゥゥン、ギュイギュイギュイイィィィィン!!!!!!】
「うるせーーー、テスト期間中にスマホでパチンコの動画ばっか見てんじゃねぇぇぇ!!」
「いやー。また打ちたくなっちゃってさぁ」
この隙あればケータイでパチンコの動画ばかり見ているのは、友人のM。1年前からパチンコにハマり、暇があれば玉を弾きに行くパチカスだ。
もっとも金無し大学生なのでもっぱら1パチだが、、、
「いやー。O。お前も来いよ。教えてやるからさ。」
「うるせー。俺はそういうのハマってしまうからやらないようにしているんだよ。」
こいつは隙があれば俺をパチ沼に引き込もうとしてくる。我ながら自己分析はできる方だ。俺は絶対行かない方がいい、、戻れなくなる。
「おら大学ラストの学年で再来月からは卒試もあるんだ勉強するぞ。」
「おー。まあ終わったら1人で行ってくるわ。」
◆
会話でも出たが、大学最後の年ということで卒業試験が近い。俺とM、今日はいないがもう1人Sの3人で最近はよく勉強している。
問題はこのM、、、隙があればパチンコの動画を見ている。
3人とも決して頭は悪くない。大学生が普通にパチンコをやっているだけでは勝てないことは知っている。この男はただただパチンコが好きなのだ。
あの7色のけたたましい光!鼓膜に突き刺さるような音!目から耳から脳に直接情報をぶち込まれ、脳汁が吹き出る感覚が好きなのだ。
そんなこんなで最初の方は抵抗していた俺。懸命なる読者の諸君はタイトルから察しているだろう。そう、これは俺がパチカスになるまでの物語なのである。
◆
いつも通り3人で勉強していたある日、、、俺はついに言ってしまう。
「俺もパチ行ってみよかな」
読者の皆さん。急に話が飛んだと思ったでしょ。こいつ文章書くの下手だなぁ、構成下手だなぁ、って。違うんすよ、これがパチンコ恐ろしい所なんです。最初の1歩が意外と軽く、突然踏み出されるんすよ。別に最初の会話から期間そんなに空いてないからね?!1週間とか2週間とかの話だからね?!?!
いやだってしゃあないじゃん!悪いのMじゃん!あいつずっっっとケータイでパチンコの動画ばっか見てるんだもん。ちょっと興味持つやん!!面白そうやん!!!
M「お、いいやん。この後行くかぁ!!Sはどうする?」
S「おーいいで。俺も行く」
そんなこんなでついに俺はパチンコの沼に片足を突っ込んでしまう。恥ずかしながらこの時はこう思っていた
。
(人生1回ぐらい勉強のために行っとくかあ)
過去の俺に言おう。1回で済むわけねーーだろ!!ボケカスゥ!!!!