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ソフトテニス  作者: 山西タツキ
8/55

引退

今取られたので、ゲームカウントは3-3。

ファイナルゲームにもつれ込んだ。

相手があからさまな味方狙いを始めてから、常に劣勢。

3ゲーム目まではまだこちらにブッシングが飛んできていた。

が、そのゲームを境に、方針を固めたらしい。

俺の方にはロブすら上がらない。

威力を殺して、俺が取れないような軌道を徹底している。

安定性のない味方のミスを誘う形でしか得点されていない。

どうにかカバーへ行こうとするが、あからさまに出過ぎたら抜かれるのが落ちだ。

ゲームカウント3-2で後衛を変わろうと提案したのだが、大丈夫、と一言で流された。

口数も少なくなり、集中しようとする様子は見て取れた。

だが、自分が狙われていることへの不満や、力み過ぎて入らないことへの怒りがミスを誘発している。

いくら考えても、この状況を現実的に打開する手段が思いつかない。

そもそも、ここを勝ったから何に成るのだ。

さっきまで俺が目指していたのは優勝だった。

しかしこれでは、この先勝てるわけがない。

この試合に関しては、強引な攻めで足掻く事はできる。

例えばこの一本、自分のコースを捨てて決めれば、次のプレイから駆け引きが生まれる。

でもその後、結局、自陣を固める事になる。

次カバーに出る時は更に警戒される。

それでも出て、裏をかかれたなら。

この試合初めての、俺のミス。

俺のミス。

俺は今、この試合の自分の戦績を汚したくないだけなのか?

それだけのことで、試合を捨てようとしているのか?

久しぶりに出た大会、久しぶりのプレイ。

自分の実力が確かなものであると実感して、満足していた。

挫折で終わりたくないのだ。

自分にはまだ希望がまだあると思いたいのだ。

歓声が好きだ。

褒められるのが好きだ。

そんな自己満の結果だけを求めている俺に、勝ち上がる才能は無かったんだ。

味方のセカンドがネットに掛かる。

ファイナルゲーム3-7で、俺は初戦で敗退した。

もうソフトテニスからは足を洗おう。

高校を卒業した時よりも明確な意志で、そう思った。

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