サーブ
2点のリード、幸先良いスタートだ。
次は俺のサーブ。
センターに寄り、相手コートを見る。
エンドラインよりも前で、外寄り。
ラインにつま先を揃え、後ろに体重を置く。
サーブはトスが重要だ。
左腕をヘソの当たりまで振り、そこから真っ直ぐ上へ。
指先から離れた球は、構えた体のかなり前、高めに上がった。
時間が止まったような、集中。
少し球が落ちるタイミング。
自らも、前へ、高く飛び上がる。
ギンッ。
高い位置で捉えた球は、サービスコート内側を削る。
相手は反応できない。
ノータッチエース。
「良しッ!!!」
思わず声を上げた。
調整のための練習をしていたとは言え、一切衰えていない。
衰えぬ才能、山路漱石!
今のサーブで自信を掴んだ。
相手コートから球が送られてくる。
まずは、この試合に勝つ。
サーブはレシーバーのバッグハンド側。
フレームに掠った音が響いたが、何とか後衛へ返っている。
俺はサーブの勢いのまま、ローの位置。
ネットに着くことも出来る。
相手前衛は、まだサービスラインの後ろ側。
状況は優勢だ。
強めの打撃が聞こえ、球が高い位置を横切った。
相手後衛へ伸びた球は、エンドラインを割る。
アウトだ。
組み立てていたパズルが崩れていたような感覚。
というより、それが何の意味も成さなくなったような。
しかし、ここで味方の気を落とすわけにはいかない。
笑顔を見せて、ドンマイドンマイと声掛けする。
次だ。
最初のプレイが活かせる場面だ。