作戦
味方のロブで相手後衛がレフト方向へ走った。
見極める事が大事だ。
ネットから一歩下がった位置で待つ。
シュートボールか、ロブか。
シュートボールならば、逆クロスか、ストレートか。
相手の動き、もしくは状況から決断を起こす。
ここは全力で後ろに下がって良い。
逆クロスならば後衛に任せる。
ストレートなら返球さえしておけば良い。
テイクバックした瞬間を見計らって素早く下がり始める。
そこを付いて、直前でストレートに変える可能性はある。
しかし、想像通り。
ロブだ。
前にいたならジャンプしてもギリ届かない高さ。
俺は下がり切らない。
ストップと同時に、膝を曲げて、高みへ飛び上がる。
テニスではあまりしない動き。
でもこれこそが、決めにいく為の一手だ。
ガッドの上側で捉えた硬い衝撃。
相手コートのセンターバッグに突き刺さった。
味方から、ナイススマッシュ!という掛け声を貰う。
後ろまで下がっていたならば、決め手にならなかった。
距離が空けば、ただのストロークだ。
仮にそうなったとしても、リスクを回避した作戦はナイスだった。
当然だ。
しかし、これで歓声を上げるギャラリーが居ないとは。
今のプレイが勿体ない。
相手の応援は、マグレマグレッと仲間を鼓舞している。
分かっていないならばそれで良い。
順調に進めるのみだ。