布石
試合開始の合図。
思ったよりもギャラリーは多い。
やはり相手は大学のサークルらしい。
チームで揃えたウインドブレーカーマンが並んでいる。
緊張はあるが、それよりも高揚を感じている。
久々のこの空気感が、懐かしくて。
感慨に浸っている場合ではない。
味方のサーブから始まる。
ファーストを外し、セカンドでゆるい球がサービスコートに入る。
少し後ろに退いて、相手の手を待った。
高くないバウンドに入り込みトップ打ち。
明らかに抜きに来る構えだ。
反射で返球するしか無い、見ろ、見ろ。
バサッっとネットに吸い込まれていく。
力み過ぎたみたいだ。
ネットに掛かったポイントから上へ来ていたら、右胸あたりか。
大丈夫だ、取れていた。
それに、今のプレイは一つ取っ掛かりを作った。
それはともかく、セカンドに成ったらローボレーまで下がった方が良いだろう。
あの打ち込まれる球は、張り付いてはいけない。
打ち込まれないような工夫が無いセカンドは、前衛に取って危険だ。
立ち位置を移動して、次のプレイを待つ。
今度はファーストサーブが入った。
自陣は締めておこう。
俺をかわして後方への返球。
レシーブ後、すぐに前へ詰めてくる。
取り敢えず、平行陣の線は消えた。
両者陣形に着いた今からが、本当の戦いとなる。