整理
思い出深い夢を見た所で現実は何も変わらない。
さっきまで感じていた幸福感が幻だった事を知り、怒りはない。
そりゃそうだろうな、と諦めの気持ちが鼻からあった。
とっくに捨てた筈なんだ。
うだうだ考えても仕方が無い。
まだどこか喪失感の残る頭に、笑顔で本物の幸福を送る。
不思議なもので、取っ掛かりさえあれば物事は次に進む。
時刻は午前7時。
最悪なようで、実は全然良い始まりだ。
朝、動けない日もある。
でも今みたいに頭が使えている間は、何ら問題ない。
キッチンに移動し調理を始める。
余っている食材で味噌汁を作った。
半分は昼用に残しておく。
ラーメン用のお椀に具沢山で注いで、ソファベッドに腰をつく。
ワンルームで冷蔵庫の音と、窓の外では鳩が跳ねをバタつかせる音が聞こえている。
朝日に暗さは無い。
良い天気に成るだろう。
のどかな時間を感じながら、考え事を始めた。
いちばん大事なことは問題解決。
さっき見た夢、それによって感じた事を整理し、自分の考えを固めることだ。
その為には、経緯を思い出そう。
半年前まで、ソフトテニスサークルを転々としていた。
18の頃、高校を卒業して、しばらく離れていたのだが、2年ぶりにしたく成って、社会人サークルに参加した。
数度打てば、すぐにある程度の感覚が戻った。
やっぱり好きだと感じた。
球を弾く感覚も、球筋を読む集中も。
相手がいて、乱打をするだけでも楽しい、と本気で思えた。
何度か通っていたら、社会人の大会への参加を勧められた。
自分がどれだけ通用するのか試したく成った。
もしかしたら、今からでも結果さえ残せれば、高い位置に行けるのではないか?
そんな希望を抱いてしまった。
出会って2ヶ月程度の後衛と組むことに成った。
上手いとは言えないが、乱打を見る限り、ストロークやロブは普通に出来る。
彼が繋いで、俺がちゃんと決めさえすれば、十分戦えると思った。
大会当日。
コンディションは万全だった。
しっかりとした時間に寝て起きて、軽い朝食も摂った。
朝食から時間も空いている、眠気も一切ない。
学生の時は、興奮して寝られなかったり、勝てなく成ってからは、何となく寝る気に成れなかったりがほとんどだった。
今、この状態で試合をしたら、自分はどこまで行けるのか、楽しみでもあった。