忘れられない歓声
これから毎日投稿していきます。
登場人物の名前やあらすじなど、まだ未確定なので
変更する場合がありますのでご了承下さい。
(その場合、変更した点を次話の前書きに記載いたします)
あの時の歓声は今でも忘れられない。
俺が一番輝いていた時期。
深いロブをエンドラインまで下がって打った。
ライト側の相手前衛は抜かれることを警戒して出てこられない。
威力はないが、深いシュートボールになった。
球筋は相手後衛の正面。
だが、冷静に構えを取られる。
その瞬間、前に落とす、と分かった。
予想通り。
意表を付いたつもりの構えが大袈裟に見えた。
コート左前に跳ねたボール。
既に追いついている。
バックハンド。
どこに打つかは決めていた。
必殺技と評して、こっそりと何度も練習してきた技。
畳んだバネを開放するように、大きく振り抜いた。
打つ寸前、石川から「バカッ!」という声が聞こえた。
それよりも、俺は球筋を見つめていた。
球がガットに芯で軽く擦れた感触。
相手コート右端、急角度。
良い!!!
観客席からウオッっという歓声が湧いた。
隣コートへ鋭く伸びた球には、もう追いつけない。
決まった。
その結果を知って石川の声も歓声に交じる。
しばらくの間、会場全体がザワザワと鳴り止まずにいた。
俺たちは中学一年の学年別県大会の優勝を勝ち取ったのだ。
次々と嬉しさが込み上げて仕方が無い。
誇張しすぎた思い込みは、これからの自分の人生・シガラミ・不安がすべて解決したかに思わせた。
感動の涙を流し高くガッツポーズをする。
たしか、あの時は涙なんて流していなかった筈なのに。
…ん?あの時?
あれ、それって、いつの思い出だ?
いや、違う。
今見ているこれが、今じゃないんだ。
じゃあ、これは…夢?
妙に明るいテニスコートが真っ暗になった後、新たな世界が生まれる。
ぼやけた視界が低い天井に掲げる拳を見上げていた。
耳に熱いような冷たいような雫が滴る。
ご拝読いただき誠にありがとうございます。
11/1~徳島の方で個展を始めますので、第一回の展示をこの作品に掛けたいと思います。
僕が、ソフトテニスに抱く熱い想いを物語として、何とか読めるレベルまでにしたいと思っております。
是非明日の更新もよろしくお願い致します。