恐怖心
中華料理屋に着くと八神さんが、
「奢ってくれるの?あざぁっす!」と口にしたが、兄がすかさず「いや、困るっすよ生活費とかあるんで」
兄は冷や汗をかきながらそういうと八神さんは、
「そうか、なら仕方ないわここは俺が出すから今度頼むよぉ?」とにやけながら言う八神さんを見て兄弟揃って
「任せてくださいよ!」冗談気味に言った。
店に入ると日替わりランチが1から6番まで選ぶことができどれも目を引くくらい美味しそうで全部食べたいと思ってしまった。
席に着くと八神さんは「3番、にんにくありで!」
兄も慣れたように「2番、辛くない方!」
優柔不断な俺は決めるのが遅く仕方なく兄と一緒の物を頼んだ。
料理が届くと八神さんには青椒肉絲が届き、
ピーマン、細く切った筍、ゴロゴロっと入った豚肉に
にんにくの香りがちょうど良く食欲がそそった。
兄と俺は、麻婆豆腐が届き、
皿並々に餡が注がれていて、艶のある豆腐にひき肉がたくさん絡まってこれも食欲が増した。
この店は店員さん達も気さくな方で各席にしゃべりにくるほど賑わっていた。
食べ終わって店を出る時には店員が
「また来てね〜!」と手を振りながら送り出してくれた。
店を出て車に乗り込み、タバコを吸う3人は車を出しまだ時間があるのでコンビニでアイスを買うことになった。
アイスは兄の奢りでとても満足な昼だった。
アイスを食べ終わるとゴミを捨てにコンビニに行くついでに俺は給料を全額おろした。
持ったことも無い感触ににやにやしながら車に乗ると
八神さんが
「エロ本でも見てきたんか!」そういうと俺は、
「違いますよ!給料をおろしてきたのでにやけてるだけっす!」と言うと八神さんは
「そんなんな、今だけだから貯めとけよ?」と真面目な顔をして言ってきたので俺は、こんな顔をするんだと思いながら
「そうします」と現実を真に受けた。
昼休みが終わり仕事を早々と終わらせ、その日は定時で退勤できた。
家に着くと兄に
「給料見せてみん、引くで」そういうと渋々渡した。
兄は俺の給料を手に取り何枚か数え出した、
兄は札を数え終わってこう言った。
「家賃、ガス、電気、飯代、タバコ代、引いて〜はい
3万ね」と言いながら3万だけを俺に渡した。
妻子持ちの兄の家では喧嘩はしないと決めていたが流石に気に食わなかったので兄を自分の部屋に呼んだ。
「いや、流石に取りすぎじゃね?生活費でそんなかからんやろ?」とキレ気味に言うと兄は、
「はぁ?何言ってんの?お前、金がない時も助けてこの家に住わせてやってんのに図々しいぞ?しかもタバコも買ってやって、プラス飯も作って車にも乗せてるのに取りすぎ?馬鹿か?」
と横暴な態度で言われ呆れた俺は、
「まぁいいわ、貰えただけありがたいと思うわ。
まあそれだけだから」
と昔からの恐怖心に勝てない自分を情けないと思いながら俯くしかできなかった。