2-6 シルフィVSドスヤクザ! そして、裏取引の人食いの傀!?
「っはあああ!!! 分身・アロー!!!」
「連続・ワープ! ワープ・スラッシュ!!!」
――ガキンガキンガキン!!! ガッッッ!!!
「く!」
「へへへ!!!」
『『『『『うおおお!!!』』』』』
「「「「「すげえええ!!!」」」」」
『『『『『「「「「「ヒューーー!!!」」」」」』』』』』
うおおお!!! やっべえええ!!!
よくやった! シルフィ! よく、ワープ斬りを躱した!!
ああ、幽霊モードで見学してるが、凄いぞ! この戦い!!!
シルフィのサイバー・ビーム流は、弓とナイフ! そのうち、弓でめっちゃ攻めているが!
ドス・ヤクザは、連続ワープや、ステップ、ドスでの捌きや撃ち返しで、その猛攻をしのぐ!!!
っで、クールタイムが終わったら、ワープ斬りという糞技で、めっちゃ遠い所からでも、一瞬で近づき! 切り降ろし!!!
この技が、めっちゃクソ!!!
なんでかと言えば、表裏の2択を押し付けられるからだ!
うん! 俺もやられたからわかる!!
ワープ斬りでは、ボタンの微妙な長押しと、放つタイミングで!
『前からの攻撃か、後ろからの攻撃かが、超見分けづらい』!!!
なぜかといえば、ワープして降りてくる攻撃の絵面が、そのままで!
攻撃判定のみが、前か後に発生する。その違いしかないから!!!
見てても、判別がつかない!
流れの中での人読みで判断するか、前か後ろに賭けて防ぐ! 運ゲーが始まるのである!!!
守護霊かけてたら、それを防いでからの流れ狩りか、バクステ移動狩りに話が移り変わるんだが。
俺たち、光速の戦術を手に入れたサイバー・ビーム流に、絶対防御はない!!!
それゆえに、シビアな2択を押し付けられる。クソゲーが始まるのであるが!!!
シルフィ! ずっと2択で、正解引いてる!!
避けて、防いで、ナイフ・カウンターして!
ダメージ稼げてるぜ!! ええ!!!
凄い! これはもう、凄い!!!
やっぱり、シルフィがナンバーワン!!!
やっぱあれか? 弓矢のハンターだから、目がいいスキルとかるのかね?
まァ、いいや!!!
とにかく、このまま押し勝て!!!
このままいけば、勝てる! うん!!!
もう俺も、実感したし、分かってたことだが!
PKたちも、独自のスキル武術! カルマ武術を作ってるからな!
俺は負けたが、シルフィは勝って! 相手に、プレッシャーを与えてくれ!!!
大イベントまで、あと数日!!
このまま開発を進めるべきか? っと、PKに疑問を与えるためにも!
ここで、シルフィの勝利で! 一石投じておきたい!!!
大イベントでも、勝つためにも!!!
がんばれぇぇえ!!! うおおお!!!
っと、めっちゃ応援していると!!!
「おお、おったわァ。ちょとええかァ?」
「え?」
そう、声をかけられたのである!
「誰って、え!? か、傀!?」
「よーす。ちょっと情報交換しようやァ」
同じ幽霊モードの傀に!!
めっちゃフレンドリーに、話しかけられって。
ええええ!?
「じょ、情報交換!?」
「せやでぇ。見学の幽霊モードやったら、配信とかしてない限り。完全防音されとるからなァ。絶好の内密モードやん。せやから、情報交換したいんや」
えええ。
いや、その、えええ。
「いや、ちょっとそれは……」
「そんな構えんでもええやん。明かしていい情報を交換しようってことやで」
「ほら、うちらもスキル武術を作ってたのは、予想してたやろ? なら、他にも持って帰らないと、成功とはいえのちゃう? もっと情報、欲しいんとちゃう?」
っぐ。
それはそうだな。実際予想してたことはしてた。
俺たちが、サイバー・ビーム流を開発したんだから、向こうも何か作ってる。
そういう予想はあった。
それを確信できた……だけじゃァ、弱いよなァ。
下手したら、俺らのところ以外の潜入チーム。即死部屋で死んでる可能性もあるし。
情報は、ほしいか……。
うん。
「……大イベントのために、街の破壊活動はやめてほしいな。PKは、レベルUPに必要だから、いいけど」
「それは無理や。スパイ活動でしか得られない栄養もある。ってか、そっちも送り込んでんだから、お相子やろ」
ぐぬぬ。
「まァ、イベントもあと数日だし、やってほしい・やめて欲しいの話はなしや。うちらはかなり自由で放任主義やから、するなっていってもするやろうしなァ。無駄や無駄。もっと建設的な話をしまひょか」
建設的?
「ズバリ、そっちの錬金術師は、何してはるんってことや」
チャリン・スキーさんの事か。
街の復興や、銀行での業務だよ。
「ほーん。錬金術は教えてもらってんの?」
? 錬金術?
「いいや、あれはレベルが足りないってことで、教えてもらってない」
「ほーん。そうなんか。それはええこときいたで」
え? 何?
チャリン・スキーさんが、どうしたんだ?!
「どういうことだ?」
「説明してもええよ。でも、それしたら、『それがあんたの聞きたいこと』ってことで、情報交換終了や。ええの?」
っぐ!
気になるが、良くないな。
「やめとこう。別の事を聞きたい」
「せやな。その方がええやろ」
……じゃあ、そっちのキャプテン・ビリーは何をしてるんだ?
「いろいろしてるでぇ。飯食ったり、酒盛りしたり、歌うたったり、デートしたり、戦闘訓練の相手になってくれたり、戦法やカルマ武術作りのアドバイスをしてくれたり。一緒に狩りをしたり」
え? え? ええ?!
「デート!? 戦法アドバイス!? 何してんだ!?」
がっつり教え込んでるってか、遊んでるな!?
「そういうキャラってことやろ。めっちゃ行動力あるかんなァ。うちのボスは」
そうなのか……。
「せやで。でも、そっちもなんか、してくれるんとちゃうん?」
「え、いや、特には……銀行で金増やしたり、武器は買えるけど」
特殊効果あったり、強い武器とかね。マジで助かる。
っが、それだけだ。
何かを教えてもらった覚えや、話は聞かない。
「ほーん。そりゃあ妙やな。キャプテン・ビリーとチャリン・スキーは、対称のキャラのハズ。なら、チャリンにも何かあると思うが……レベル以外に、条件があるとかかな?」
条件?
「うちらは、初めのリーダー決めで、ボスと戦ったんや。それから、一緒に遊んどるし、師事もしとる。そう考えると、バトルが全てのきっかけ。条件やったんかな? って、そう思う」
あー、なるほど。
そういうことね。
「っで、そっちのチャリン・スキーとは、そういうことしてないんか? っちゅー話や」
いや、してないな。
彼は、商人NPCだったし。
戦う流れがなかった。
「じゃあ、してみたらええわ。ボスと対のキャラであるチャリン・スキーなら、戦いが条件の可能性もあるやろ。何か教えてくれるかもしれへんで」
……なるほど。そうだな。
その発想はなかった。
でも、いいのか?
「? 何が?」
プレイヤーに塩を送ってって事。
チャリン・スキーさんとの戦闘で、強くなれる可能性があるって。
教えていいのかよ。
「ああ、それか。ええんよ。僕は、『ゲーム楽しみたい派』やから」
え?
「さっきも言うたろ? 僕らは基本自由にやってるって」
「始まりの街襲って、弱くする。『絶対に勝ちたい派』も、当然いるけれども。うちは、『そもそもゲームを楽しみたい派』なんや」
「せやから、今回の戦いで、物足りなさを感じとるんよ。
ゲームはもう少し歯ごたえが欲しいやん? 故に、もっと強くなってくれ!!!(ニッコリ)」
「ええ……そんな理由?」
すげぇ個人的だな。
冒険者にも、『ゲーム楽しみたい派』は、いるにはいるけど。
そう思ってもPKと交流する人はいないだろ。
でも、PKにはここまで自由な人がいて、それが当然の空気みたいだなァ。話の節々でそう感じる。
変わった文化だなァ……。
いや、こいつが特殊なだけの可能性もあるけど。
うーん。分からん。
「せやで! ゲームは楽しまんと! それに、強くなった方がお得なPK達もおるからね! へへへ!!!」
そうなのか……。
「……ちなみに、傀。君は最後。俺の仲間のビーム弓矢で死んだんだが、あれは君が弱かったってことで、歯ごたえはあったんじゃ」
「お、そろそろ決着やな」
え!?
そう言われて、振り返ると!!!
「はあああ!!! 『光の嵐』! そいやァァあ!!!」
全方位に、ビームの矢を放つ!!
シルフィ!!
「これはまずいな! 『緊急ワープ!』」
それをシュンッッッ!!! っと、ワープで避ける!
ドス・ヤクザ!
ああ、今ので、矢の薄い所へ跳んだらしい!!!
ダメージが一番低い所へ行ったのか!!
マジで立ち回りが、上手いぞ!!
あのヤクザ!!
っが!
「!? ぐわ!!」
そんな彼の背中に、矢が!
スピードの遅い! 普通の矢が、刺さって!!
「かかった!! 『ロック・シュート』!!!」
そこめがけて! シルフィは、すかさず技選択!!!
相手をロックオンし、力を込めた!
必殺の矢を放った!!!
「じゃあ、こうするね。『シルフィの前にワープ』!!」
それに対し! ドス・ヤクザは、ワープ!!!
シルフィの目の前に来る!!!
く! 近い!
あれでは、隙を晒してる! 殺られるぞ!!!
そう、彼女も思ったのだろう!!!
目を見開いて驚くが!
「『ナイフ・抜刀』! せいやあああ!!!」
「!! おわ!?」
おおお!!! 凄い!! 凄い!!!
その可能性も、しっかり考えていたんだろう!
ビーム発射の間に、先行入力で、ナイフ抜刀を仕込んでいたんだ!!!
これで、ビーム発動中の隙を潰す様に! ナイフを抜き放ったシルフィ!
その刃が、目を見開いて驚く! ドス・ヤクザの首を狩りかけた。
その時!!
――『ロック・シュート』着弾! 今!!!
――ズッガァァァンンン!!!
さっきシルフィがはなった、『ロック・シュート』が!
ロックオンした、ドス・ヤクザを追って、着弾!!!
奴と、その目の前にいたシルフィ!
二人を巻き込む、大爆発を! 起こしたのだよォォお!!!
えええ!?!?
「!?!? がっはッッッ!!!」
! シルフィが、ぶっ飛ばされた!!!
ああ、コロセウムの壁にぶつかる!!!
でも、まだKOじゃない!!
HPは、8割砕け散ったが! それでもまだ生きている!!!
頑張れ! まだやれるぞ!!!
そう、俺の聞こえない声援に応じるよう!
「っつゥ!!」
綺麗な顔に、怒りを浮かべ!
即座に立ち上がりかけ――ドス!! え。
「!? かっは」
――どさりと、倒れこむ。シルフィ。
え。
今、何が……?
なんで、彼女は、倒れて。
口から血を吐き……あ!
「うわ、えげつな~。やっぱドス・ヤクザはんは、ヤクザやねぇ」
「エルフはんの首に、『ドスを転移させて刺し殺す』やなんて」
「!!!」
俺の隣で、うわァ……っと、ドン引きしている傀の言う通り。
シルフィの首には、ドスが刺さっていた。
ドス・ヤクザが、ドスだけをワープさせて。
シルフィの首に、ドスを生やせた。
そうして、HPが砕け散ったのだ!!!
!!! ッッッ!!!
これが、ドス・ヤクザ!!
上位PKの、殺し技……!!!
遠い! あまりにも!
サイバー・ビーム流では、今のままでは、勝てないのか!!
ぐううう!!!
「でも、ヤクザはんも、ぎりぎりやったみたいやね」
「え?」
傀の発言につられ、俺は、爆心地を見た。
ああ、そこには、血を流しているが、確かに生きているドス・ヤクザ!!!
かろうじて!
『HPバーが、1割残って生きてる』!
満身創痍の、ドス・ヤクザの姿があった!!!
!!!
あと1割……!!!
クソ!!!
内容としては、薄氷の勝利。
展開や、運次第では、こちらが勝っていた試合だった。
少なくとも、俺と傀のバトルと比べたら、シルフィとドス・ヤクザの試合は、そうだった。
それが悔しく、妬ましい。
ちくしょう……!!!
PKは、人食いの傀は、ドス・ヤクザは、強かった!!
シルフィが! スパイ・ゲームに熱中してて、俺よりもPKを狩ってない、シルフィのほうが! 俺よりも強かった!!!
その事実を突きつけられて。
敵にも、味方にも、嫉妬して。
忸怩たる思いを感じていた、その時!!
――観戦終了。リスポーン地点に戻ります。
俺の幽霊ボディは、光に包まれ!!
「じゃ、ここまでやな! ほな次は、イベントでお会いしましょ!!」
そう、傀に見送られながら! その場から、消えたのである。
かくして。
「は!?」
俺は、はじまりの街の、ギルドに!
「!!! っがあああ!!! 悔しい! あとちょっとだったのに! ああああ!!!」
悔しがるシルフィと一緒に、リスポーンしたのである!!!
その後、俺達の経験と情報で、プレイヤー全体が危機感を持ち!
さらなるサイバー・ビーム流の開発に、磨きがかかる事になるのであった!!!