【台本】決闘の極意講座
沖田:おーい山本ー。山本ー
沖田:おーい、朴念仁でつまらない山本ー。顔がいいけど面白みのない山本ー。真面目が裏目に出て結構仲間に嫌われてるゴミ野郎ー。
沖田:いないなぁ。島原で私の女を紹介しようと思ったんだけど……
沖田:……ん?何だこの紙切れ
(沖田、紙切れを拾う)
沖田:山本宛ての文か。ええっと、『ご存知より。宴の日、桜の元でお待ちしております』、だって?
沖田:……
沖田:って、恋文じゃないか!?
沖田:あっ知らない人のために説明するね!『ご存知より』っていうのは恋文にありがちな書き出しだよ!
沖田:あの堅物に恋文とは……!
山本:何だかこっちで悪口言われてた気がするんだが……あ、沖田先生!その文は……!
沖田:見たよ見たよ見ちゃったよ~?何か面白いことになってるじゃあないか!
山本:お、面白いだなんて!さすがに相手に失礼でしょう!
沖田:ごめんごめん、山本は真面目だなぁ
沖田:で、山本?これはどういうことなんだい?師匠に説明してくれるかなぁ?
山本:……誰にも言うべきではないと思い黙っていたのですが……見ての通りです
山本:私……
山本:決闘を申し込まれたんです!
沖田:……ん?
山本:言うまでもなく、武士は主君のため国のために命を使うものです
沖田:んん?
山本:ここで命を落としていいものかと思いつつ……相手の覚悟に応えることもできず武士を名乗ることはできないと思う自分がいるのです
沖田:んんん?
山本:戦いから逃げることを男らしいとは言えないでしょう。だから私は全力で戦います!
沖田:えええええ!?
山本:沖田先生!よろしければ、決闘の心構えを教えてください!
沖田:え、やだよ!
山本:即答!?
山本:で、でも、そうですね、申し訳ありません。この戦いは私に申し込まれたもの、私が1人で乗り切らねば……なってみせます、真の武士に!
沖田:待って、それ多分女子からの
山本:では失礼します!
沖田:待って!それ多分女子からの文で
山本:何を言っているんですか!武士道に女子のつけ入る隙はなーいッ!!
沖田:山本!待って!分かった!教えるから!決闘の心構え教えるから立ち止まれええええええ!!!
山本:本当ですか!?ありがとうございます!
沖田:(小声)だめだこの男、このままじゃ「女の姿で惑わす卑怯者!」とか言って斬りかかりかねない……
山本:それで先生!ここはやはり隊服で行くべきなのでしょうか!鎖帷子をつけたいところですが私は非力なほうなので、
沖田:(遮って)呉服屋でいい服を買って来なさい
山本:なにゆえ!?
沖田:えっと、そ、そういう仕来たりというか……とにかく、失礼がないようにね
山本:な、なるほど。確かに礼儀は大切です
山本:他に準備をしておくべきことはありますか?
沖田:いいかんざし屋を紹介しよう
山本:なにゆえ!?!?
沖田:あと手土産の一つでも持っていきなさい
山本:だからなにゆえ!?!?!?
沖田:えーい、いちいち反論するんじゃない!私の言う通りにするんだ!
山本:は、はい……分かりました……
山本:気を付けるべきことなどはありますか?
沖田:そうだな。お前は酔いやすいのだから、酒は飲み過ぎないように
山本:酒を飲む時間がどこに!?
沖田:あとうっかり眠らないように。門限を破ったら切腹なんだから
山本:眠る時間がどこに!?!?さすがに人殺した後うっかり眠る神経の持ち主じゃないですけど!?
沖田:割と疲れるんだよ!分かりなさい!!
山本:分かりません!!先生!!分かりません!!
土方:おい、廊下で騒ぐんじゃねぇよ
沖田:あ、土方さん!
山本:副長!失礼いたしました!
土方:それにさっきから聞いてりゃ、面白いことになってるじゃねぇか
沖田:聞いてよ土方さん、山本ってば『ご存知』さんと決闘するって聞かないんだよ!
山本:申し込まれた決闘から逃げることなんてできませんよ!
土方:山本に『ご存知』たぁ珍しいこともあったもんだな
土方:おい山本。この場合一番最初に何をするべきか分かるか?
山本:分かります!抜刀ですよね!
沖田:『ご存知』さんに抜刀するなあああ!!
土方:フッ……残念ながら違うぜ
土方:そこに誰が待っていたとしても、まずは話すところからはじめるんだ
土方:相手が何を考えてるかを聞いて、そうしてようやく自分のするべきことが分かるってもんだ
山本:話を聞く、ですか。なるほど確かに、相手がどのような覚悟を持っているのかは聞かねばなりません
土方:分かってるだろうが、いきなり斬りかかるのは武士じゃねぇ。相手にきちんと向き合うんだぞ
沖田:さすが土方さん……!すべての問題を速攻で解決した……!
山本:副長……!分かりました!先生方、ありがとうございました!しっかりと相手に向き合う所存です!
山本:では、失礼いたします!
(山本、去る)
沖田:すごいね土方さん、さすが女遊びが得意なクソ野郎
土方:いや褒めろよ
沖田:それにしても、山本に『ご存知』かぁ。島原で遊んだことなんて数度しかないはずなのに
土方:顔はいいからなあいつ
土方:それに、あいつに惚れてる遊女っつったら大体察しがつくぜ。確か小町とかいう女だったな
沖田:へぇ、そうなんだ。うまく行くといいねぇ
沖田:……
沖田:ってそれ私の女だけどぉ!!!!!!!????