ビッチ皇女と引き籠りの人形フェチ皇子
今回はビッチ皇女と引き籠りの人形フェチ皇子の話です。
「隣国バルトス帝国から留学生が来るそうです。しかも皇族らしいです」
隣国バルトス帝国から皇族の留学生が来るという噂で、学園内は大騒ぎになっています。
ハオウ王太子殿下が言われた通り、隣国バルトス帝国の皇女と皇子が留学して来るようです。
「隣国バルトス殿下の第三皇子のライドルだ。わざわざ留学してやったのだから、我と宜しくしろ」
「隣国バルトス帝国の第二皇女のライカです。留学を楽しみにしておりました。宜しくお願い致します」
第三皇子のライドルは傲慢な性格で、第二皇女のライカは穏やかな性格のようだ。
「ライカ姉さん、ずいぶん猫を被っていたね。普段はビッチなのに」
「うるさいわね。ライドルこそ、ずいぶん虚勢を張っていたじゃない。普段は引き籠りの人形フェチなのに。笑いを堪えるのが、大変だったわよ」
「引き籠りの人形フェチって言わないでよ。この国の貴族子女に侮られるなという父上の命令なんだから、仕方ないじゃないか」
「分かっているわよ。そんなに睨まないでよ。それよりもダイアル嬢よ。噂通り国王を誑かす程の悪女なのか、それとも身の程知らずの愚かな令嬢なのか、どちらだと思う」
ライドルにダイアル嬢の印象を聞いてみた。
本来は私だけが留学するつもりだったのに、人の悪意に敏感だからという理由で父上に同行させろと命令されて、わざわざ引き籠りの人形フェチのライドルを連れてきたのだから、役に立ってもらわなければ困るわよ。
「まだ分からないよ。あんな短時間で見極めるのは無理だよ」
「アンタに期待した私が馬鹿だったわ」
「・・・・」
どうやら二人は本当に本性を偽っていたようだ。
そしてダイアルを見極めるのが目的だったみたいだ。
更に仲は余り良くなかった。
「ライドル皇子は傲慢過ぎるだろう」
「あんな態度では、宜しく出来ません」
「それに比べて、ライカ皇女は淑女でしたね」
「そうかしら。私はそうは思わないけど」
「どういう意味ですか」
「ライドル皇子は虚勢を張っているだけで、本当は臆病者な感じがするのよ。逆にライカ皇女は猫を被っている感じがするのよ」
あの二人からはダイアル様と同じような雰囲気を感じた。
「勘違いじゃ無いのか」
「気のせいだろう」
「ライカ皇女に失礼ですよ」
「私もカグヤ様と同意見よ。お二人は本性を偽っていると思う」
私はハオウ王太子殿下から二人が本性を偽っていると教えられていたので、カグヤに同意した。
「根拠は何ですか」
「女の勘です」
「女の勘よ」
「はぁ、女の勘ねぇ」
「具体的な根拠になっていません」
「女はこれだからな」
「女の勘を馬鹿にしないで下さい」
「女の勘を舐めない方が良いわよ」
ナルカ達が女性を侮辱するような発言をしたので、私達は腹が立った。
ハオウ王太子殿下から教えられたなんて、言えないのが、とても悔しいです。
ダイアル様と同じような雰囲気を感じたなんて、言えないんだから、仕方ないじゃない。
私とカグヤは二人が本性を偽っていると言い張り、ナルカ達はそれを否定し続けた。
初めて私達の見解が二つに割れて、私達の関係に変化が起こりました。
「嫉妬するなんて、私はダイアル嬢を見損ないました」
「私もダイアル嬢には幻滅しました」
「私もダイアル嬢には失望しました」
「・・・・・・この私が嫉妬をしたですって。この私に向かって、嫉妬をしたなどという、戯言を良く言えたものだな」
ダイアル様がキレそうになってしまった。
直ぐにナルカ達を止めないと、不味いわね。
カグヤはダイアルの口調が変わったのを気付いたが、他の三人は気付かなかった。
「貴方達、ダイアル様に失礼じゃないの。直ぐに謝罪しなさい」
「断る。私達は事実を言っただけだ」
「その通りだ」
「私達は間違っていない」
「貴方達、いい加減にしなさい」
ダイアル様が本当にキレるじゃないのよ。
「・・・・・・・・貴様達の気持ちは分かった。とても残念だが、貴様達とは暫く距離を置く」
あぁ、半分程キレてしまった。
「早く謝罪しなさい。本当に不味いのよ」
「良いですよ」
「構いませんよ」
「望むところです」
「・・・・・・・・・・そ・う・か・よ」
あぁ、殆どキレてしまった。
「最後の忠告よ。貴方達、直ちに土下座して、謝罪しなさい。さもないと絶対に後悔するわよ」
「うるさい」
「後悔なんかするか」
「こっちのセリフだ」
「・・・・・・・・・・・・」
あぁ、完全にキレてしまった。
「ダイアル様を完全に怒らせてしまうなんて、貴方達って、本当の愚か者よ。後で泣き付いてきても、知らないわよ」
「とても不愉快です。カグヤ様、寮に戻ります」
「はい、ダイアル様」
こうして私とカグヤはナルカ達と距離を置き、疎遠になった。
「お三人共、どうなされたのですか」
「ライカ皇女、聞いて下さい。ダイアル嬢とカグヤ嬢が貴女を侮辱したのです」
「そうなんですよ。ライカ皇女が本性を偽っていると、言い張っているんです」
「そうです。ライカ皇女が猫を被っているとも、言っていました」
「・・・・そうですか。しかし私は気にしませんよ。中傷には慣れておりますから」
あの二人は何者なのよ。
あの短時間で私の本性を見抜くなんて、信じられない。
ダイアル嬢を見極めるどころか、私が見抜かれるなんて、大変な屈辱よ。
あの二人は要注意人物ね。
ライドルにも警戒するように、言っておかないとならないわね。
都合が良い事にコイツらと仲違いしたみたいだから、愚かなコイツらから彼女の情報を聞き出すとしますか。
「ダイアル嬢、我と昼食に付き合え」
「申し訳ございません。お断りさせて頂きます」
「ダイアル様に対して、非礼過ぎますよ」
「ふざけないで下さい」
「私達の目の前から消えなさい」
「ひぃいいい」
ライドル皇子が昼食に付き合えと戯れ言を吐いたが、カグヤ達に叱責されて、怯えてしまい、脱兎の如く逃げ出した。
やはり虚勢を張っているだけの臆病者だった。
「今日も昼食に付き合え」
「絶対にお断りよ」
「今日こそ昼食に付き合え」
「お断りしても、良いですか」
「今日こそ絶対に昼食に付き合え」
「いい加減に諦めろ」
「何か有益な情報は得られた。私の方は駄目だったわよ」
「ダイアル嬢からは複数の性格を感じた。つまり多重性格者みたいだよ」
「多重性格者?多重人格者の間違いじゃないの」
「違うよ。多重人格じゃなくて、あくまでも多重性格だよ」
「どう違うのよ」
「多重人格というのは一人の人物に複数の人格とか記憶とかが存在して、全ての言動が変化する事だよ。多重性格というのは単に性格だけが変化する事だよ」
「・・・・???」
「つまり僕達みたいにわざと口調や態度を変えるんじゃなくて、彼女は自然に口調や態度が変わるんだよ」
「・・・・???」
どうやら姉さんには違いが理解できないみたいだ。
僕だってあんな変態が居るなんて、想定外だから、仕方ないか。
「何なのよ。この命令は」
「冗談だろう」
取り敢えず当初の目的は果たせたので、一安心したのだが、新たな命令が伝えられた。
それは帰国命令が出されるまで、この国で諜報活動をしろという内容だった。