五人のド変態
今回はメインとなる五人のド変態の話です。
私はカシワ公爵家令嬢ダイアル。
これは父から聞いた話なのですが、父方の家系の女性には三世代前以降の性格が混在しているようなのです。
つまり私には四人分の性格があるのです。
本来の性格は淑女なのですが、時々ツンデレと天然と男勝りな性格になる時があるようです。
学園ではそれらの性格を隠している筈ですが、どうやら隠しきれていないようです。
その証拠にまともな友人が一人も出来なくて、幼馴染みのド変態な友人達しか居ません。
それらの友人達にはとても好かれているのですが、やはりまともな友人が欲しいです。
「ダイアル様、おはようございます。今日も素敵な体臭ですね」
彼女はイオニック侯爵家令嬢カグヤ。
私の幼馴染みで、匂いフェチのド変態だ。
彼女は最も親しい友人ですが、最も迷惑な友人でもある。
その理由は直ぐに私の体臭をクンカクンカと嗅ごうとするからだ。
どうやら私の体臭が超好みのようだ。
「ダイアル嬢。おはよう。私は今日も美しいだろう」
彼はトスカーナ公爵家子息ナルカ。
私の幼馴染みで、ナルシストのド変態だ。
「ダイアル嬢、おはようございます。今日も冷たい視線で見つめて下さい」
彼はムエタイム子爵家子息エムル。
私の幼馴染みで、マゾのド変態だ。
「ダイアル嬢、おはようございます。この服は可愛いでしょう」
彼はウソップ伯爵家子息ジョイ。
私の幼馴染みで、女装マニアのド変態だ。
「皆様、おはようございます」
今朝もド変態な友人達に取り囲まれた。
ド変態でさえなければ、良き友人達なのですが、本当にド変態でさえなければ。
全員が同じクラスで、席も四人に囲まれてしまった。
ちなみに前の席はナルカ、右の席はジョイ、左の席はエムル、後ろの席はカグヤだ。
カグヤは授業中でも私の体臭を嗅ごうとするから、とても困っている。
「お姉様、お昼を御一緒しましょう」
昼休みになると、下級生の友人が昼食を誘いに来た。
彼女はビアン男爵家令嬢ユリカ。
私の幼馴染みで、同性愛者のド変態だ。
彼女は二番目に親しい友人ですが、少し妬ましい友人でもある。
その理由は私より胸の発育が良いからだ。
ハッキリ言うと、いわゆるロリ巨乳だ。
私は未成熟な身体なので、とても悔しい。
「良いですよ。一緒に食べましょう」
拒否すると面倒な事になるので、承諾するしか選択肢が無い。
私は生徒会メンバーなので、放課後は生徒会の活動をしている。
私が生徒会長、ナルカが副会長、会計がジョイ、エムルが書記、カグヤがコピー等の雑務係だ。
完全に何かの呪いだと、思っている。
「はぁ、落ち着く」
寮の自室だけが安らぎの空間だ。
しかしこの後に入浴という最大の試練が待っている。
カグヤとユリカが寮の大浴場で、絶対に待ち構えているに違いない。
お二人は背中を洗う名目で、身体中を触りまくるというセクハラ行為をする。
カグヤは体臭を嗅ごうとするし、ユリカは胸を揉んだり、お尻を撫でてくる。
本当に勘弁して欲しい。
「まもなく学園祭ですが、良い案はありますか」
「私の美しさを讃える朗読会が良いと思う」
ナルシストのナルカがふざけた案を出した。
「却下します」
「私へのムチ打ち大会が良いと思います」
マゾのエムルがとんでもない案を出した。
「却下します」
「体臭の品評」
「却下します」
匂いフェチのカグヤの事だから、絶対にまともじゃない案だと感じたので、言い終わる前に却下した。
カグヤが不満そうな表情をしたが、スルーした。
「コスプレ喫茶が良いと思います」
女装マニアのジョイがまともな案を出した。
「ありふれていませんか」
「もちろん普通のコスプレ喫茶ではありません。男子が侍女姿になり、女子が執事姿になるのです」
「面白そうですね。他に案はありますか」
「「「・・・・」」」
三人はジョイがまともな案を出した事に驚愕したみたいだ。
「他には無いようですので。コスプレ喫茶に決定します」
「衣装は私が用意しますので、他の準備はお任せします」
ジョイが衣装を用意する事になり、他の準備は残り全員が担当する事になった。
「「「「「きゃああ、素敵です」」」」」
女子達の黄色い叫びが喫茶内に轟とどろいた。
「「「「「・・・・」」」」」
男子達は無言で私達を見つめている。
視姦されているみたいで、男子は嫌らしいと再認識した。
「私の美しい姿を描いた絵だ。嬉しいだろう」
「私が貴女にムチ打ちされている絵です」
「私が一番お気に入りのドレスを着ている絵です」
「姉様と私が愛し合っている絵です」
まともな誕生日プレゼントが一つもありません。
「香水です」
やっとまともなプレゼントを貰えた。
「ダイアル様の体臭を再現した香水です」
こんな事だろうと思った。
私の感動を返してよ。
どうすればダイアル嬢に私の美しさを理解してもらえるのだろうか。
私の美しさを再現した彫像をプレゼントすれば、理解してもらえるかもしれない。
有名な彫刻家に依頼しよう。
最近ダイアル嬢の視線が益々冷たくなり、私は感激している。
あの氷のような瞳で見つめられると、とてもゾクゾクする。
あの蔑むような視線で睨まれながら、虐められたい、責められたい、罵倒されたい、足蹴にされたい。
その事を妄想して、興奮が止まらない。
実はエムルはカグヤを遥かに凌駕する程のド変態だった。
「何ですか。今の身体中を走る不気味な悪寒は」
身体中を不気味な悪寒が走り、不快感が脳を直撃しました。
「どうすればダイアル嬢にお揃いのドレスを着てもらえるのだろうか」
私と同じデザインで色違いのドレスをプレゼントすれば、着てもらえかもしれない。
一流のデザイナーに発注しよう。
「どうすれば私とお姉様がもっと親密になれるのだろうか」
今まで以上に積極的にスキンシップしよう。
「あれ、下着が無い」
大浴場の脱衣場に置いておいた下着が無くなっていた。
しかも替えの下着ではなく、入浴するまで履いていた下着だ。
完全に油断していた。
間違いなくカグヤの仕業だ。
「はぁ、ダイアル様の下着は良い匂いです」
カグヤが自室でダイアルの下着をクンカクンカと嗅いでいる。
下着を取り返す為に、急いでカグヤの部屋に駆け込みました。
鍵が掛かっていましたが、合鍵を強引に渡されていたので、入室する事が出来ました。
「カグヤ様、私の下着を返せ」
「いきなり何ですか。ダイアル様の下着なんて知りません」
「惚けないでよ。私の下着を盗んで、クンカクンカするようなド変態は匂いフェチの貴女だけよ」
「人聞きの悪い事を言わないで下さい。大体ダイアル様の下着を盗んでまで、クンカクンカしません。そんな面倒な事をしなくても、普段からダイアル様の体臭は堪能しています」
「余計悪いわよ。この超ド変態。私に近付くな」
「そんなに疑うなら、私の部屋を確認して下さい」
ずいぶん自信たっぷりに否定している。
簡単には見つからない場所に隠してあるのだろう。
「分かった。疑って、ごめんなさい」
「貸しにしておきますね」
仕方なく謝罪したら、ドヤ顔で貸しだと言われた。