-part3-閃き
今日も一日中、ずっと晴人が近くにいた。
「はぁー」
ため息をしながら、家に帰宅した。
「どうしたの。ため息なんかついて」
母さんが心配して、声をかけてくれた。
「いつもの事だよ。今日も晴人が付き纏って来たんだ」
愚痴を母さんにこぼすも、母さんは僕の味方ではなく、晴人の味方である。その証拠に、もの凄く羨ましそうな顔でこっちを見ている。
「いいじゃない。あんなイケメンなかなかいないわよ。母さん、後、二、三歳若かったら、父さんと離婚して晴人さんに告白しに行ってたかも」
母さん。
息子と同じ年齢で、しかも幼馴染相手に何を言っているのか。
「じょ、冗談よ。嘘に決まってるじゃい」
憐みの目を息子から向けている事に気がついたのか、母さんは慌てて言う。
冗談に聞こえないから、こんなにも憐れんでいるのに。後、言うタイミング悪すぎる。
ドサッ。
手に持っていた鞄を床に落として、固まる父さん。
家族の為に働き、仕事を終え、くたくたで家に帰ると、妻が離婚なんて言葉を冗談でも使っている。
「か、母さんの浮気者ー!!!!」
涙を流しながら、父さんは家を飛び出してしまった。
「・・・テヘェ☆」
「母さん。「テヘェ」じゃないよ!父さん家出しちゃったじゃないか!!」
僕が怒ると、やれやれと言いながら母さんは父さんを探しに行くと、支度をし始めた。
「探しに行ってくるから、結香と先にご飯食べておいて」
「分かった」
母さんが家を飛び出て、晩御飯の用意をする。
用意と言っても料理は母さんが作っており、僕が今しているのはお皿に料理を盛り付けリビングのテーブルへと運んでいるだけである。
「結香~!ご飯だぞ!!」
二階の自室にいる結香を呼んだ。
「アレ?お母さんとお父さんは?」
「お父さんの家出」
「あーね。分かった」
一言で察した結香は、これ以上何も言わなかった。
晩御飯を二人で食べる。
「お兄ちゃん~」
「嫌だ」
「ひどい。まだ何も言っていないのに」
ブーブー文句を言う結香。
何も言わなくても分かってしまう。だって、いままで結香が僕にしてきた頼み事は全て晴人に関わる頼み。今回だってきっと。
「晴人《様》写真を撮って来て欲しいだけど」
ほら。やっぱり。
「ただ写真を撮るんじゃなくて、出来れば着替えているタイミングで写真を撮って」
「はぃ?!」
由香がとんでもないことを言い出した。
「嫌だよ。そんなの撮ってるが、もしクラスのみんなにバレたら、一生変態扱いだよ。下手したら警察に捕まるかも。てか、さっきからなんで様付けで、晴人の事を呼んでるんだ?」
「私、晴人様ファンクラブ副会長になったんだ。だから、お願い」
「絶対に嫌だ!」
断固として断る僕に「もう、お兄ちゃんのケチ。嫌い」と言って、晩御飯を食べ終わった結香は食器をそのままにして、部屋に籠ってしまった。
全く、結香は。
その時、名案が閃いた。
どれだけ、僕が晴人を避けても付き纏ってくるなら、晴人の方から避けて貰えばいいじゃないかと。