-part23-失敗
時は少し遡る。
『もしもし、うん。上手くいった』
『それは良かった。あの悪魔をこれで晴人様から引き離す事が出来るわね』
その悪魔と付き合って事になってるの私なんだけど・・・。
心の中で愚痴を思うも口に出す事はしなかった。だって、これも全て晴人様の為なのだから。
『明日はデートに行くんでしょ。どこに行くか決まってるの?』
『あんまり詳しい事は聞いてないけど。映画館に行くみたいなことを・・・』
『初デートで映画館?!普通過ぎ、ありえない』
大げさに反応しているが、私的にはいいじゃないかと思っている。
まだまだ、付き合って間もない。これで遊園地などに行けば、アトラクションの待ち時間で会話が続く気がしない。その点、映画なら今見たものの感想という共通の話題が出来る。
『特段言うことはないけど、その調子で上手い感じで頼むわよ』
* * * *
失敗した。
言い訳させて欲しい。
だって、晴人様が来たんだもん。
突如現れた、晴人様に興奮してしまい。周りが見えていなかった。
「映画楽しかったね。今日は帰るよ」
「えっ。ご飯はいかないんですか?」
「ごめん。そんな気分じゃない」
そう言い残し、祐翔は帰ってしまった。
「あの、この後、一緒にご飯でも・・・」
思い切っては晴人様をご飯に誘ってみた。
すると、晴人様は私に顔を近づけた。
「(この展開は、もしかして♥)」
どこかの少女漫画の様な展開を期待した。
「おい。良くも俺の愛しの祐翔に色目使って誘惑したな。しかも、好きだから誘惑したんじゃない。俺から引き離す為に色目を使ったんだろ」
「あ、違・・・」
私の期待とは、間反対だった。
「いいか。数日以内に祐翔から別れろ」
「・・・」
「返事は?」
「・・・はい」
晴人様の圧はとても怖く、断る事が出来たなかった。
返事を聞いた晴人様は「フン」と言って、帰って行った。
緊張の糸がプチンと切れて、私はペタンと下に座り込んだ。
私の中で、憧れの晴人様の像が崩れていく。