-part1-悩み事
「うぇ!」
思い出したくない、夢を見て、目が覚めてしまった。
ベットの横に置いてある、時計に視線を向ける。
もうこんな時間か。
ベットから起き上がり、学校へ向かう為の身支度を整える。
僕の名前は、谷木 裕翔。
今年の四月に無事、希望する高校へ入学することが出来た。
そんな僕は、小さい頃から悩み事を抱えている。
身長が平均より、小さい。視力が悪くて眼鏡をかけている。
偶に、街中で女と間違われ、ナンパされてる。
・・・今、挙げたこれらも悩み事であるが、これらより、もっと重大な悩み事が僕にはある。それは。
ピンポーン!
インターフォンが押され、自宅に音が響いた。
そして、数秒後に母さん僕を呼ぶ。
「晴人さんが、来てくれたわよ」
「分かった」
高校へ行くための身支度を整えて、玄関に行くと、母さんが待っていた。
「母さん。やめてよ」
「えっ。何を?」
僕がやめてよ、と言う意味を理解できずにきょとんとする母さん。
「だから、その。言いにくいんだけど。母さんは晴人に会わないで欲しい」
「何で?わ、私はただ、息子の友達に挨拶をしているだけじゃない」
ただ、挨拶するだけなら、そんなにも化粧をして、おしゃれな服を着るものではないと思う。
「ほら、晴人さんが待ってくれてるんだから、早く出なさい」
母さんに押されるかたち押される形で家を出た。
玄関先には、幼馴染である神野 晴人が一緒に登校しようと待っていた。
この幼馴染こそが、最大の悩みの種。
今だって、僕と目が合うと、ニコッと笑顔と甘い声で。
「裕翔。今日も可愛いね」
背筋が凍る。
偶に、女と勘違いされる事があるから、間違えて女扱いを受けるのは、まだ我慢が出来る。が、晴人は僕の事を男だと認識した上で言ってくる。
「晴人さん。おはようございます」
「裕翔のお母様。おはようございます。今日も綺麗ですね」
「ま、まぁ。そんな事はあるかもです」
母さんの日本語がハチャメチャになっている。
「母さん・・・。もう行くね」
「行ってらっしゃい。裕翔、晴人さんに迷惑かけないように」
晴人の方が迷惑をこっちにかけてきてるんだよ。とは言わなかった。
一刻も早く、母さんと晴人を引き離したかったので、ツッコミたい気持ちを押し殺し、学校へと向かった。