-part12-お袋
今、俺の周りには三人の男が倒れている。
このまま放置しておくと、警察を呼ばれて問題になる事は目に見える。
「これ・・・裕翔がやったの?」
「いや、事故」
俺はお母さん・・・お袋に車でコンビニまで来て欲しいと頼んだ。
「そうなの。まぁ、このままここに放置すると、コンビニの人に迷惑をかけちゃうわ」
そう言って、母は奈留と晴人を――って、お袋!
「どこ触って、持ち上げようとしてるんだよ」
奈留は普通に持ち上げて、車に積み込んだのに対して、晴人には股から持ち上げようとしていた。
「こうやって、持ち上げた方が楽だから」
「もういい、晴人は俺が車に乗せる」
晴人の肩を担いで、車に乗せた。
スタンガンで気絶させて、意識の無い人を車に乗せる。
やっている事は、誘拐犯である。
「ちょっと、待てや」
なんと、怖い人が意識を取り戻し、立ち上がったのだ。
怖い人は分厚い服を着ていたので、スタンガンの威力が半減していたのだ。
「この仕返しは・・・って姉御??」
「久しぶり。ちゃんと働いてる?」
「はい。姉御が紹介してくれた・・・」
怖い人は俺のお袋を見るや否や、さっきまでの今反撃しますという威勢とは、打って変わって頭を地面につけて謝罪した。
「まさか、姉御の息子さんだとは露知らず。申し訳ございませんでした」
「あんたさぁ。私の息子じゃなかったらこんなことしていいの?」
「それは・・・・」
「前々から口を酸っぱくして言ってるよね。弱い者から獲るなって。獲りたいなら強い奴からにしろって」
「はい。申し訳ありません。おっしゃる通りです」
うーん。獲ること自体が駄目だと思うのだが、ツッコミを入れるタイムングを逃した。
「分かってるならいいけど、次そんな事してるのを知ったらどうなるか。覚悟しなさいよ」
「はい。もうしません」
「分かったのならいい。もう帰れ」
「はい」
怖い人は多々謝った後、足早に帰っていった。帰りの車の中でお袋に今話した内容はお父さんには内緒と言われた。
絶対に言わないでおこう。何故だって?世の中には知らない方が幸せな事だって沢山ある。