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末弟の思惑


 翌日。


 祈りの儀式の期限は明日になった。


 ゲオルグ様は、国がおしまいだと言っていたけれど、どうも呪いで滅ぶらしい。


 我が家は貧乏だけど、それでも貴族なので困る話だった。


「うーん……」


 ちょっと悩む。


 もしも、このままヘルンメイル様が逃亡したままだったら、どうなるんだろう?


 代役がいる?


 妹のローゼル様が居るけれど……。


「このまま国が滅んだら、国民は死んじゃうのかな?」


 親が無くとも子は育つと言うけれど、国が無くとも国民は育つんだろうか?


 死んでしまうなら、ヘルンメイル様だって逃亡している意味がない。


「探りを入れてみますか」


 今日は来客の予定がない。


 お昼ご飯が終わったら、情報収集に出かけよう。






 ローゼル様に会いに行くので、ヘルンメイル様に変身した状態で部屋を出た。


 ちょっと具合が悪そうにしながら歩いて行く。


 伏せっているという設定だから、あまり元気にしているとマズイだろう。


「あなたは何度間違えば気が済むのですか!」


 ローゼル様の部屋の近くまで行くと、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。


 わぉ、ヒステリーというのはこういう声なんだな。


 廊下の角から覗いてみると、ローゼル様がメイドを突き飛ばしている。


 姉妹揃ってヒス持ちなのは、いかがなものだろうか。


「ローゼル、そこまでです」


「お、お姉様……!」


 度重なる目撃で、負い目が出来ているんだろうか。


 ヘルンメイル様を、怖がっている素振りすらあった。


「あなたは、もう少しおしとやかに出来ないのですか?」


「これは……この子が悪いんですのよ」


 そう言って、メイドの子を指さす。


 そうなのかもしれないけど……。


 ここでひとつ、カマをかけてみることにした。


 上手くいけば、自然に話を聞き出せる。


「私に何かがあったら、あなたが祈りを捧げるんですよ?」


「何を仰っているんですか? ワタクシに祈りは捧げられません」


 あれ?


 どうも、そういうことではないみたいだ。


「調子が悪いらしいですが、怖じ気づいて、そんなことを言っているんですか?」


 反撃とばかりに、ローゼル様が食ってかかってくる。


 でも、丁度いい。


 この機に、聞けることを聞いてしまおう。


「では、わたしが今日死んだら、どうなるのですか?」


「はぁ? お姉様は死なないし、死ねないでしょう? 今更何を言っているんですか?」


「…………」


 どうも、そういうものらしい。


 生まれながらなんだろうか?


 後天的なら、魔術か魔法の薬でもありそうだけど。


「…………」


 じゃあ、ヘルンメイル様はどうするつもりなんだろう?


 このまま、明日になったらヘルンメイル様がいないと騒ぎになるけれども……。


 これは、早く手を打った方がいいんじゃないだろうか?


 ゲオルグ様に話は聞いてみるけれども。


「話はわかりました、ローゼルはもう少し周りに優しくなりなさい」


「お姉様に言われたくは無いですわ」


 そう言って、ローゼル様はどこかに行ってしまった。


 メイドを突き飛ばしている姿は、王族として恥ずかしい。


 まだ、羞恥心はあるみたいだった。


「あなた、大丈夫でしたか?」


「は、はい、ありがとうございました……」


 手を取って起こしてあげる。


 ローゼル様の周りは大変そうだ。


「悪いのだけど、ゲオルグ様を私の部屋に呼んでください」


「は、はい! すぐに呼んで参ります!」


 いじめられていたメイドが飛ぶように駆けだしていく。


 どうするつもりなのか、ゲオルグ様に聞こう。


 わたしは、部屋に戻っていった。






「オレを呼び出すなんて、ずいぶんと偉くなったモンだな」


 ゲオルグ様が部屋に来た。


 あまり機嫌は良くないようだけど、王女に呼ばれて来ないわけにもいかないだろう。


 まぁ、今はメイドの姿になっているけれども。


「ご足労をおかけします」


 一応、謝っておく。


 わたしの勘違いかも知れないし。


「なんだ、どうしたんだ?」


「祈りのことをアルフレート様に聞きました。明日、ヘルンメイル様が不在のままでどうするんですか?」


「そんなこと、お前が心配する必要はない」


 面倒くさそうにそう言う。


「国が滅んだら、わたしだって困ります!」


 わたしは、この計画から今すぐ下りてもいいんだ。


 国が滅ぶくらいなら、魔術のことがバレた方が多分いい。


「今の女王が、三十年の祈りを終えて女王になった。だから、その女王に、もう三十年間努めてもらうのさ」


「そんなこと可能なんですか?」


 二十歳で祈りを始めたとして、今、五十歳。


 もう三十年ということは、八十歳までだ。


 寿命的にも健康的にも、無理なんじゃないだろうか?


 それとも、死なない秘密は持続されているんだろうか?


「どうせオレは、貧乏貴族を嫁にあてがわれる部屋住みだ。未来なんて無いも同然なんだから、これに賭けるしかないんだよ」


 ゲオルグ様の継承権順位は低い。


 有力貴族と結婚はできないだろうし、女王が統治するこの国で、継承権順位の低い王子には大した役割もないだろう。


「ヘルンメイル様を逃がして、何か取引をしたんですね?」


「そうとも、オレと結婚をするという約束だ、そうなれば、オレがこの国の王となる」


 それで、姉弟で浮気なんてしていたのか。


 ゲオルグ様は養子だから、血のつながりはないとしてもだ。


 でも、これで危険だということはわかった。


 ゲオルグ様は、自暴自棄になっているのかもしれないけど、他の国民はそれに巻き込まれたら困る。


 問題は、これをどうやって解決するかだけど……。


「…………」


 ヘルンメイル様は、どこか遠い土地に逃げたのかも知れない。


 探し出すのは困難だろう。


「ヘルンメイル、いるのか?」


 扉をノックする音と一緒に、アルフレート様の声がした。


 少し強ばっている声だ。


「は、はい、少しお待ちください!」


 今入ってこられたら面倒だ。


 わたしは、ヘルンメイル様の服を取ってカーテンの後ろに隠れる。


「変身しろ」


 言われなくてもそうする。


 わたしは、ヘルンメイル様になって服を着ると、ベッドに横になった。


 ゲオルグ様が扉を開ける。


 入ってくるなり、アルフレート様はいぶかしむような目でわたしたちを見た。


「ゲオルグ、良くない噂が流れているぞ」


 どこかから、ゲオルグ様がヘルンメイル様の部屋に来ているという情報を得たんだろう。


 注意に来た、という感じだ。


「良くない噂とは?」


「それは……良くない噂だ」


 わたしの目の前で、それは言い難いんだろうけど、浮気の噂だ。


 ゲオルグ様とヘルンメイル様が浮気をしているという噂。


「では、退散しますかね」


 長居をするつもりは無いのか、ゲオルグ様は部屋を出て行ってしまった。


 上手くやれよという視線を残して……。


「ヘルンメイル、今日も侍女がいないのですね?」


 うっ……。


 さっき返事をしたのは失敗だったか?


「そ、それは……」


「確かに、扉の前で侍女の声を聞きましたが?」


「聞き間違いでは……」


 苦しいか……でも、とぼけるしかない。


「今日は、入れ違いになったとは言わせませんよ」


 何かがおかしいと、確信を持っているしゃべり方だ。


 これは誤魔化せないか。


「…………」


 わたしの魔術がバレたら、どうなるのだろう。


 禁忌の力。


 処刑されるのだろうか?


 でも、国が滅んだら何にもならない。


 せめて、わたしだけの事で済ませてもらえれば……。


「アルフレート様……お話があります」


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