重いとかじゃない気がする
嫌だ…また学校に通う日々が始まってしまうのか…
「それでは第一走者の方、スタートです」
一斉に、かどうかは分からないがスタートした。まあ、第一走者も何も4組しか居ないんだけどな。体育会系じゃない系生徒の救済、要するに消化試合のこの競技にそんなに人数はいらないんだろう。何人いようと大して盛り上がらんしな。
「ニ組速いです」
「三組、頑張ってください」
なんで体育祭の実況ってこんなにも感情が篭ってないんだろうか。一応本職の放送文化部がやってる筈なんだがな…これが実況席とテントの違いなのか…。
「九条くん…暇だね」
「この場にふさわしい言葉では無いと思うが…同意だ」
そう、二人三脚ともあろう競技がスムーズに進むわけがないのだ。焦って転んだりもつれたりするタイプか、慎重になりすぎて亀顔負けの足取りになるかの二択。ちなみに僕らは僕の運動能力的に後者を選択した。
「そろそろかな…」
人数合わせに入れられたであろう斉藤が帰ってくる。これは…目も当てられないな。
「九条くん、その言葉ブーメランになりうるよ」
「仰る通り」
まあ言葉では無いけど。あれ、僕ずっとこんな感じでくだらないツッコミを脳内で入れてる感じ?
「九条君、あとは頼んだ…!」
「やめろ、荷が重い」
「嘘でも「おう、任せろ」ぐらい言って欲しかったなぁ」
そんなこんなで順番が回ってきたため、日陰といいう待機場所から出る必要がある。
「なんか…日焼けを気にする女の子みたいなこと思ってるよこの人…」
「お肌のスキンケアに興味は無いけど」
何故こんな風に雑談なんてして居られるのか。別に余裕があるとかそういう訳ではなく、実際は怪我をしないように細心の注意を払っている。要約すると、順位を意中の外においてマイペースに進んでいる。逆に言うと、こんなことをやっているから雑談できると言ってもいいだろう。
「そう言えば、なんでそんなに怪我を怖がってるの?何かトラウマでもあるとか…」
「いや、紫音がな。「兄さんに怪我をさせるような学校は嫌です。退学も視野に入れないと…」とのことだ」
「それはまた…愛が重い?」
「これは愛なの…か?」
「あんまり深い考察をしてはいけない気がするよ」
「奇遇だな、僕もそう思う」
それにしても紫音ちゃん、積極的という域を超えてるような気がするな。これが家族の距離感というやつなのか…
「なんだかんだ言いつつ、もう次のペアに交代だな」
「順位が安定の最下位なのは触れちゃダメ?」
「ダメ」
「でしょうね」
この夏休み、本当に何もしてないな。




