諸悪の根源 vol1
ちょっとシリアスパートですよ。
「兄さん、今日これが届きました」
「これは…」
差出人は九条 雪乃、つまり僕らの母親だ。どうやら家に目上の知り合いが来る
らしく、そのときに家族円満に暮らしてますよ、ってアピールしたいそうな。
自分で追い出したくせに、1時的に実家に戻ってこいということだ。
「どうしますか?」
「応じるわけ無いだろ、こんな身勝手が許されるはずがない」
「そうですよね…」
「拒否の意思をお繰り返しておく」
ちなみに僕ら親子は連絡先の交換を行っていない。母親いわく「子供の連絡先な
んて入れたくない」とのこと。
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「どうしたの?なんか思考が迷子だけど」
そうだ、こいつに隠し事なんて出来ないんだよな…
「いや、ちょっとな。昨日母親から接触があってな」
「あの例の…」
恐らく紫音から聞いたんだろう、思い当節があるようだ。
「九条くんさえ良ければ、詳しく話してくれない?」
「分かった。ただここじゃ無理だ、今日うちに来てくれるか?」
「うん」
今まで心配してくれる人なんて居なかったので、なんか良いな、こういうの。
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「お邪魔します」
「紫音は幼児で遅くなるから、先に座ってて」
今日は補講的なものがあるそうな。たまに忘れるが、あいつも受験生なんだな。
「じゃあ、順を追って話してくれる?」
「分かった」
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僕はごくごく一般的な家庭に生まれた。父親は会社員、母親は専業主婦。なんの
変哲もない家族だった。しかし、父の勤める会社が倒産した結果、その普通は崩
れることになる。母親と父親は収入がなくなったことを理由に離婚、つまり父親
を見捨てたわけだ。けど離婚したからって所得が発生するわけではない。そこで
母親が考えたのが「子供を芸能人にする」というものだった。しかし、僕はお世
辞にも見てくれが良いとは言えず、テレビ映えするような人間ではなかった。そ
こで、養子施設から見た目の良い子を引き取った。それが紫音、当時僕は中学
3年だった。けれど、それまで芸能活動なんて視野に入れてなかった子だ。母親
が収入源として当てにしているというのもあって、厳しすぎる指導に耐えきれな
くてしょっちゅう泣いていた。そんな紫音を何とか慰めようと僕がしたのが、今
の兄弟仲の根源とも言えるだろう。
次回も続きます。




