03 別世界の話
少し理屈の話になります。
一方的に未来へと流れる【時間】は別にして、縦、横、高さの移動が可能な、この空間を我々は【三次元】と称している。
三次元を、平面たる二次元が累積した物と考えるならば、上位にあるだろう【四次元】とは複数の三次元空間が累積した物であり、複数の三次元空間を移動できると考えられる。
その様な四次元空間が存在すれば、別の三次元も存在する可能性がある。
自分達だけの世界が唯一無二の存在だと信じるのは、盲目過ぎるのだ。
この様に、我々の三次元空間と別に存在する別の三次元空間を、SFでは【亜空間】と呼び、ファンタジーでは【異世界】と呼び、オカルトでは【アストラル界】等と呼んでいる。
実在するのかは判明していない。
だが、それは否定の要素足り得ない。
仮に有ったとして、どの様な世界なのか?
我々の世界と物理法則まで同じなのか?
鏡の様に、歴史や砂の一粒まで同じ世界か?
似ているが、少し違う世界か?
物理法則まで根本的に違う世界か?
地球ですら、地上と海中と地中では環境が違う。
地球と月や火星でも同じではない。
現世でも、人が暮らしていける環境は、とても狭いのだ。
何らかのトラブルで亜空間や異世界に迷い込んだとしても、人間が生きていける環境である事は、皆無だろう。
世界や物理法則を超える超常的な存在が介入すれば、話は別だが、その様な介入が起きると考えるのは、自らが神に次ぐ存在だと傲る中世の宗教家に等しい。
それは、彼等が悪徳として禁じる【傲慢】であるにも関わらず。
【神の様な存在】と【世界の絶対者】とは、根本的に別物なのだ。
だが、どうだろう?
人とライオンが、市街地とサバンナの様に、生活圏を分ける事はできる。
鋼鉄の箱の中に、地球上では存在しない【真空に近い環境】を作る事はできる。
勿論、容易くはなく多くの資材やエネルギー、手間を必要とするが狭い範囲であれば不可能ではない。
古代の超文明についても触れたが、過去に同居していた存在達が、地球と言う狭い範囲で世界を住み分けたのだとしたら・・・
過去の神話や伝承。
異常な失踪や紛失。
更には、宇宙の彼方で観測されるダークマターやダークエネルギーの存在さえ合理化できる。
いや、地球の近くでも、太陽と見掛け上のサイズが同じ月や、ロッシュ限界ギリギリを飛び続ける火星の衛星など、確率論的に無理のある存在が有りすぎるのだ。
細工の無い二個のサイコロで、一のゾロ目が百万回続く様な事は、確率論的にあっても現実では、そうそう有る事ではない。
だが、現世の地球上の物理法則が、【何か】が欠落したものであるならば、その疑問も解明できるのかも知れない。
勿論、環境や物理法則の変化も起きるだろう。
別れた兄弟世界へのランダムな転移も生じるだろう。
別れた兄弟世界の環境は、我々の現世と異なるが、似たものではあるだろう。
ならば、異界を体験した者の話も理解はできる。
物理法則や環境が近いが、少し異なるのも道理だろう。
【生命は如何にして誕生したか】などの命題も、別れる前の世界なら明白なのかも知れない。
全ては妄想で、絵空事なのかも知れないが。
最新の天文学の計算では、銀河系で測定されるダークマターやダークエネルギーの量は、我々の知り得る物質やエネルギーを合わせた総量の九割近いらしい。
つまり、地球以外の世界では、大半が地球の物理法則以外でできている可能性が高い。
近年の天文学では統一宇宙論か崩れつつある。
仮に、先の推測通りに地球だけ兄弟世界と別れたのならば、現世の物質などが、質量的に大きい別世界へと一方的に引っ張られるのは仕方がないのだろう。
亜空間/異世界へと引き込まれる物はあっても、その世界から我々の物質世界へと引き込まれる物は皆無になると言える。
現状を見る限りでは、兄弟世界との断絶は、完璧なものではない様だ。
そしてそれは、いつまで維持可能なのだろうか?