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28 放逐の理由

また短いですm(._.)m

「【放逐ほうちく】って事は、俺を解放してくれるんですか?」


【放逐】とは、追い払うと言う意味を持つが、それが名目上である事は明らかだ。

長一郎の問いに、ミストレアは彼を馬車の近くまで手招きした。


「大きな声を出すでない。ソナタのお陰で、近代日本と言う良い情報源を手に入れられた。加えて、現世へと帰りたいソナタの要望と、実際に帰れるのか試したい我々の利害関係が一致したのじゃ。幸いにも、常世に来て間がないソナタは、成功の可能性が高い」

「可能性ですか?」


ミストレアですら現世へ行くのにはリスクが高いと言うのに、何故に自分は可能性が高いのか、長一郎には分からなかった。


「ソナタは、まだ、この世界に慣れておらぬだろう?この常世に慣れるという事は、常世の物質で肉体を構成し、常世の魔力によって維持をすると言う事よ」

「そう・・・なりますね。俺も最近は魔法が少し使える様になりました」


長一郎の首輪を指差すミストレアに、長一郎は頷く。


「グージャスから聞いており、ソナタも体験しておると思うが、常世と現世を分けておる力によって、双方の生物には相手側の世界では肉体が崩壊してしまう」

「あっ・・・・・確かに全身が痛かった」


この世界に飛ばされて来た時に、息も出来ず全身が悲鳴をあげていた事を、長一郎は思い出した。

自らの首に掛かっている首輪は、いまだに外す事が出来ない。

物理的にではなく、実際に外すと、まだ呼吸困難におちいり、身体の末端が痛くなるのだ。


「結果は判らぬ。次元の壁を無事に踏破できるか?瀕死の状態になるか?死ぬか?踏破すら出来ないのか?その危険性を承知で行くと言うのならば、途中までしか同行できない我々としては、目的地まで単身となるソナタに武術でも授けてやろうかと思ってな」

「確か、目的地付近では人間は食料扱いなんですよね?【野生の獲物】としては、確かに抗う力は欲しいところです」


意図をくんだらしい長一郎に、ミストレアは頷く。


「我々にもメリットのある試みだが、決めるのはソナタだ。適応とチャンスを考えれば次回は無い。あと七日の内に取り止めると決めれば放逐も無く、親戚との安定した生活に戻してやる」

「わかりました。御時間をいただきたいと思います」


頭を下げる長一郎に、護衛の中から近付く姿があった。


勿論、蜥蜴人であるが、他の者よりも立派な装備をしている。


「ミストレア様。人間かちくと仲良くするのは、いかがなものかと思いますが?」


表情が読み取れず、言語も上手く翻訳されてはいるが、その言葉には【敵意】が込められているのを長一郎は感じた。


「ディーガよ!そう言うではない。この長一郎は、わらわのお気に入りなのじゃ」

「今に、痛い目を見る事になりますよ」

「そうなれば、捨てるまでじゃろう?この世界で【軟弱な人間風情】が、庇護なくしてどうなるかは、ソナタも存じておるじゃろう?」

「フフッ!確かに」


ディーガと呼ばれた蜥蜴人が、明らかに笑みを浮かべて長一郎の方を見る。


「そう言う訳じゃから長一郎よ。これからも妾に面白い話をきかせてたもれ」

「努力致します」


長一郎はディーガの手前、膝をついて頭を下げ、その場を立ち去る。

ディーガの視線が背中に痛いが、何とか難を逃れたら感じだった。



長一郎が立ち去った後にディーガはミストレアに片膝をついて頭を垂れた。


「差し出口を致しまして申し訳ございません。されど、御身には【品格】を守っていただかなくては、下々の者に示しがつきませぬ。何とぞ御一考ください」

「ソナタは、相変わらず堅いのう。されど、あの者に関しては領主様の指示もあっての事じゃ。寛容にな」

「なんと、領主様も?何故に?」


ミストレアは、周囲の護衛に聞こえない様に、片膝をつくディーガの耳元に口を近付けた。


「簡単に言えば、人体実験の生贄じゃから、いろいろと大目にみておる。良い結果を出す為にも決して手を出してはならぬぞ」

「左様でございましたか。承知致しました。姫様に害が及ぶ以外は、無視すると致します」


実験用のマウスでさえ、手間をかけてやれば良い結果を出すと言う。

生け贄は、大事に育ててこそ実りのある御加護が得られる。


そう言った教育を、ちゃんと受けているディーガは、再度頭を下げると鼻歌混じりに隊列の先頭へと戻っていった。

周囲の護衛達の心の内は複雑だろう。

尊敬する隊長と、快挙を成し遂げた者とが、対立しているのだから。


尚且つ、小声で話された内容は周囲の者達には伝わってはいない。

ただ、ティラナだけが困惑した顔をしていた。


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