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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人間に裏切られた少年、仲間を取り返すため、最強を目指す。

作者: 兪護

空が赤黒く染まり、煙で霞んでいる。



怒号が聞こえる。悲鳴が聞こえる。



周りの家は炎に包まれている。



村の物が片っ端から壊されていく。






みんなは…?



みんなはどこ…?



どこにいるんだ…?



どこに行った…?



俺を置いていかないでよ…



どこ…?



どこにいるの…?



やめて…



1人にしないで…



どこにいくの…?






行かないで…



行かないで…



行かないで…








みんなを返して………







♦︎



「うぅ…返して……」


「アサヒ!アサヒ!」


…………ああ、またこの夢だ。最近しばらく見てなかったのにな。

「おはようアサヒ、大丈夫?またあの夢?」


「最近見てなかったんだけどな。久しぶりに見たから余計にキツかったのかな。」


「アサヒ………」


「大丈夫。いつもありがとな、ミナ。」


ミナはいつも俺がうなされているとすぐに俺の部屋に来て起こしてくれる。

昔は毎日この夢にうなされていて、俺の心は壊れていた。

そんな俺のそばにずっとミナは寄り添ってくれたんだ。


「私はアサヒの許嫁だもん。旦那を支えるのは当たり前でしょ♪」


でもいつもこの調子で俺のことをからかってくるのはちょっとね……


「からかうなよ。それは小さい頃お前アイツが『結婚するー!』っておれにくっついてきてただけだろ。普通なら黒歴史としてしまっとくようなものだぞ?」


「えー?アサヒだって『わかった、わかったからっ』って言ってくれてたじゃない!それに」


ミナがニヤニヤしながら言った。


「アサヒだって私達がくっついてても嬉しそうだったし。なんだかんだ言ってうれしかったでしょ?」


「うぐっ………それはお前らの勢いがすごかったから……」


「えー?声が小さくて聞こえないよ?」


おい、ニヤニヤが増してるぞ。

小さな俺はこの猛烈なアタックに根負けし、ついわかったと言ってしまったのだ。あのときちゃんと断っていればこんなにからかわれなかっただろうに。


「わかったからもうからかうのはやめにしてくれ。別にあの頃はお前達のことを好きだったわけでもないから安心してくれ。」


「え、じゃあ私のことは今はどう思ってるの?」


「もちろんおまえのこともアイツのことも昔から本当の妹のように愛してるつもりだよ。」


「…………」


ん?何か返答を間違えたか?

あの夢を見て沈んでいた俺を元気付けようとしてくれる本当に優しい妹だと心の底から思っているのだが………


「ミナ、どうし………」


「アサヒのバカ‼︎」


そう言ってミナは顔を真っ赤にして部屋を出て行ってしまった。

面と向かって言われるのは恥ずかしかったのかな?



♦︎



起きたのが遅かったので、急いで村長の部屋へ来た。仕事の時間だ。

俺はもう18年間、ミナの父親でこの村の村長でもあるグランドさんの家で暮らしている。グランドさんは俺の、いや、俺達の育ての親だ。

部屋にはグランドさんの他にもみんながもうそろっていた。


「おはようございます!すいません、遅くなっ…」


「おいアサヒ、大丈夫なのか!?今朝ミナが血相を変えてお前の部屋に入って行ってたが!?」


そう言って村長が俺に気づくなり飛びかかってきた。

俺の肩を掴んでオロオロとしている。

すると周りの奴らもこっちによってきて、


「そうなのか。アサヒ、今日は休むか?」


「俺達の事は気にすんなよ、お前が倒れたら悲しいぞ?」


などとみんなが口々に俺の事を心配してくれる。

ああ、もうこの人達は優しすぎる。


「ありがとうございます。久しぶりにあの夢を見てしまって。でももうミナのおかげで大丈夫です。」


そう言ってみんなに笑いかけたのだが、なんとも言えない顔をされた。

理由はわかっている。でも俺はみんなに安心して貰いたいんだ。


するとグランドさんが俺を抱きしめた。


「無理はするなよ。お前は1人じゃない。辛かったら俺たちを頼ってくれ。俺たちはみんなお前の家族だ。」


「そうだぞ!アサヒも…………それにアイツらも…………俺たちの家族だ。な、村長?」


「そうだな……お前はもう大人だろうが俺達からすれば可愛い子ども達なんだ。辛い時は俺らに頼ってくれ。」


「はい…………ありがとうございます。」


俺はこの悲しさと辛さを乗り切るために強くなった。誰よりも強くなって、今度こそアイツらを守り切るために。

でもいくら強くなったって心は晴れなかった。むしろ焦燥感が募るばかりだった。

でもミナや村のみんなが俺の弱い心のを支えて、壊れないように繋ぎ止めてくれた。

本当にここの住民は暖かいんだ。


「湿っぽいのはよろしくねぇ。うし、今日もいっちょ働こうじゃねえか!」


「「「おう!!」」」



♦︎




「アサヒ!奴らがおいでなさったぞ!右側の熊は任せてもいいか⁉︎」


「任せてください!」


「ようしお前ら、アサヒに負けんなよ!?アイツは1人でやるんだ。親父たちの意地見せてやるぞ!」


「「「おおぅ‼︎」」」



森の奥から巨大な熊型の魔獣とトカゲが姿を表した。

どちらも背丈は俺の身長の3倍はあるだろうか。


「グゥゥルルルララァァァッッ!」

「クリュリュリュリュリゥゥゥ!」


魔獣達の咆哮に萎縮してしまいそうになるが、気合を入れて長剣を握りしめて熊型の魔獣に飛びかかる。


「よし、おまえの相手はこの俺だ!」


手始めにに熊の目を狙う。

目が潰れればこちらの圧倒的有利で戦闘を進められる。先手必勝だ。

剣を熊の目めがけて横に払う。


「グギャァァ!」


「チッ!」


左目は潰せたが右目を潰しきれなかったらしい。

熊型の魔獣はすぐに俺と距離をとって立て直そうとした。


「させるかよっ!」


すぐさま追撃を開始する。

後ろを向いて距離を取る敵の背に向かって勢いよく剣を投げ刺した。

熊は剣を払い落とそうとその場で暴れ始める。


「いよっし!今のうちに畳み掛けるぞ!」


暴れる熊を避けながら背中の剣を抜き、首に切りかかった。


「グギャァァァァァァ!」


「くそっ、流石にこの大きさの首は一気には切り落とせないか。」


首周りがあまりにも大きいため、切り傷が骨の手前までしか入らなかった。

しかしあの傷は致命傷だろう。このまま放っておけばすぐに倒れる。

すると奥の茂みから()()の女の子が出てきた。


「おい!?なんでこんな所に居るんだ!?」


「グギャァァァァァァ!」


「きゃあ!ま、魔獣!?」


彼女を見つけた魔獣は最後の力を振り絞って彼女に向かって襲いかかった。


「くそっ!」


魔獣は他の生き物を補食することで回復する。なので熊は必死に彼女を食らおとしているのだ。


生き延びるために必死な魔獣は先程の何倍も素早かったが、彼女に魔獣の腕が届く寸前になんとか間に入ることができた。


「ふん!」


俺は長剣を一閃し、もう半分の熊の首を切り落とした。


「あっ、あっ、あうぅぅぅぅ………」


恐怖による緊張の糸がほどけたのか、後ろでは彼女が腰を抜かして泣き出していた。

そういえばアイツもよく犬とか暗闇とかを怖がって座り込んで泣いていたな。

あの頃の俺は泣き方がかわいいとちょっとだけ思ってしまっていたが。


「もう大丈夫ですよ。俺は近くの村で仲間と暮らしている猟師です。」


とにかくこのままにしておくわけにもいかないので、声をかける。

俺たちは一応表向きは猟師ということにして生活をしている。


「は、はい。ありがとうございます。おかげで助かりました。」


「いえいえ、こちらこそ熊を初めに仕留めきれなかったので危険な目に遭わせてしまいました。すいません。」


「いえ、こちらこそ不注意で近づいて申し訳ありませんでした!!」


どうやら怪我も何もないようでよかった。

しかし()()か………………どうしたものかな。

取り敢えずこの森は危険だ。


「あなたはどこから来たのですか?よろしければ街まで護衛をしましょう。」


「い、いえ。だっ大丈夫です!!1人で帰れますので!!それでは!!」


「まってください、ここから先は魔獣の生息地ですよ?あなた1人で行くのは無理があるかと。」


彼女が歩いて行こうとしたのは魔獣が発生すると言われている地域だ。

魔獣とはどのように生まれるかはわかっていないものの、何らかの理由で普通の動物が魔獣に変わってしまうと言われている。


「え、そっそうなんですか…………」


どうやら知らなかったようだ。


「おーいアサヒ!?そっちは終わったか?」


おっ、どうやらグランドさん達の方も終わったようだ。


「こっちです!魔獣の討伐の方は終わったんですけど…………」


すぐにグランドさん達が姿を現した。


「アサヒ、どうし………」


やっやばい!彼女にこの人達を会わせたら…………


「ちょっと待っ………」


「えっ!?鬼!?」


そう。俺達の村は鬼の村なんだ。







最後までお読みいただきありがとうございます。一応主人公は人間です。

面白いと思った方、ご意見、ご指摘がある方はぜひ感想を書いていただきたいです!連載するとなった場合に活かしたいと思います!

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