ハーレムの中の何か
「凄く肌ツヤツヤねー」
「そんなジロジロ見ないで下さい」
「脚綺麗、触っていい?」
「やん、やめてぇ」
俺は女風呂を覗きに来ていた。
だが断じて下心からではない。
何かがおかしいのだ、何かがあの中に居るのだ。
異世界から召喚されて俺が来た場所は女だらけの国だった。
何もしてないのに姫様や貴族に武道家等々、色々な美女に囲まれて早くもハーレム一直線。俺は浮かれていた。
しかし何かがおかしかった。
俺は特に戦う事もなかったし、それ以前に敵が居ない。
一体何の為に召喚されたのだろう、女の子たちとキャッキャウフフをする為だけに呼び出された訳であるまい(それはそれで悪くないが)。
見渡す限りに女しか居ない国だ、しかも彼女らは俺を飢えた獣のような目で見て来る。
これは困った、体が持つだろうか等と思っていると。
「おい、お前! 逃げろ!」
男の声だ、どうやら男が居たらしい。内心、舌打ちをしながら目をやるとそこには薄汚い布を纏った男が立っていた。
すると俺を囲んでいたハーレムたちが目の色を変えて走って行く。
何が起こっているのだろう。
「そいつらはカマ──」
そして俺はその時、ほんの一瞬だけ見た気がしたのだ。
女達の服の下から緑色の刃物のような物体が飛び出すのを──。
あれは一体何だったのだろう、敵らしい敵も居ないこの世界であの武器は何だ。そしてどこに隠していたのだ。そしてあの男は何物?
俺がいくら問い掛けても女達は何も言わなかった、怪しい……。
だから俺は調べに来た。
まず更衣室に武器がないか確かめると、お待ちかねの身体チェックだ。全裸なら隠す場所もあるまい。
改めて言っておくが俺は決して下心からこんな事を──。
「キャー! エッチー!」
その直後、飛んで来たタライの一撃を受けて俺は卒倒した。
ひどい話だ、俺はただ事実を知ろうと思っただけなのに──。
目を覚ますとベッドの上だった、姫が俺を見下ろしている。
「いてて……、俺は何を」
俺の問い掛けに首を振ると姫は静かに言った。
「さ、子作りしましょうか」
「や、優しくし──」
てね、と言おうとした直後だった。
姫がドレス乱暴に脱ぎ捨てると、衣類の下から緑色で節目のある足が現れる。それはまるで昆虫の足のようだ。
俺は男の言葉を思い出す。
そいつらはカマ──、キリだったのだ。決して同性愛者の蔑称ではない。
そしてカマキリの有名な生態と言えば、性交の後にオスを食い殺す事だ。
その事実に辿り着くと俺は窓の外へと猛然と走り出