入学式後
入学式が終わると、クラス順に式場を出た。
俺らDクラスはもちろん最後。AクラスからCクラスまでは拍手や「がんばれよ」などの声援が送られていた。しかし、Dクラスになると、それは一変し、クスクスと笑い声。中には野次を飛ばしてくるものもいる。散々な扱いだ。Dクラスのみんなは萎縮して、ただ下を向いて歩くだけになってしまっている。そうして、俺たちDクラスは式場を出た。
空気の悪いところからやっと抜け出したかと思えば、外にはCクラス、Bクラスの人間がわんさかいた。
「なんでこいつらここにきたの?」
「みじめだなぁ」
「存在価値なし」
散々に言ってきたが何も言い返せない。それがこの学園のルールだからだ。実力が全ての実力主義。こんな学園クソ食らえだ。
俺たちが教室に入ると、クラスのみんながため息をついた。最悪な空気の中にいたんだから、無理もない。
Dクラスといえど、全員が落ちこぼれというわけではない。半数くらいは指揮官志望というものもいるのだ。
まあ、半分は単に落ちこぼれなのだが。
教室に戻って程なくして、俺は学園長に呼ばれた。
何のことかと思い、学園長室に行くと、中には学園長が椅子に座り、その隣にDクラスの担任が立っていた。
「君に話がある。まあ、そこに座ってくれたまえ」
俺は言われるがまま、前にある椅子に座った。
「君は御三家のようだね。今回の結果について君はどう考えているかな?」
静かな声で淡々と聞いてきた。
「当然の結果だと思います」
俺は迷いなく答えた。それはそうだ。なぜなら俺は…
「そうだね。君はスキル披露の項目でいきなり棒立ちし始めたのだからね」
学園長の声が部屋に響いた。
そう、あの日俺は何もしていなかったらしい。
いや、何もできなかったんだ。
-入学試験-
「次のグループは入りなさい」
試験監督に呼ばれ、俺たちのグループは入場した。
試験の内容は、単純な力や速さを測る基礎技能、基本的な動作がしっかりしているかの型の披露、そして、自分の個性を発揮するスキル披露の3つに分かれている。
俺はその日、特に不調でもなく、基礎技能、型の披露の2つを終えた。しかし、最後のスキル披露のときにそれは起きた。
突如、俺の視界が真っ暗になった。どんな時でも冷静さを保つのが師匠の教えだから俺は慌てることなく、ただ呼吸を整えた。すると、視界が徐々に戻り始めた。そこには信じられない光景があった。
俺が宙に浮き、試験を見ているのだった。隣でクスクスと笑う声。声の方を向くと、羽の生えた何かがそこにいた。
「お前は誰だ?何のためにこんなことをしている?」
何かはこちらを見つめながら、
「僕は御使い。名前はないよ。何のためか…強いて言うなら、君の邪魔かな」
聞いたことのない種族。いや、伝承にいたか?それよりも、
「俺の邪魔をして何になる?まさか、ミオたちの差し金か?」
すると、御使いは怒りの眼差しを向けてきた。
「人間の?ふざけるな!下等生物の命令など誰が受けるか。僕が受けたのはガブリエル様の命令だ!」
「大天使…だと⁈」
「そうだ!偉大なる大天使ガブリエル様だ!」
御使いの言葉に半信半疑の俺は頭でいろいろ考えた。
なぜ狙われるのか。どうしてこのタイミングなのか。考慮すべきことはまだまだあるだが…
早くここから出なければ!
俺は剣を構え、御使いに斬りかかった。しかし、剣は御使いをすり抜けた。
「無駄だよ。僕に実体はないよ。まあ、もういいかな。ほら、いまだしてあげるから」
すると、俺の視界がまた真っ暗になった。少しすると、試験終了の合図が聞こえ、俺は元に戻った。これがあの日の試験であった事。
しかし、誰も信じてくれず、また信じてくれないだろうと思っていたから、今まで言わなかった。
「俺はあの日のことを弁明する気もありませんし、その結果を含めて、この学園に入れたのはあなたです。一体何がしたいんですか?」
学園長はニヤリと笑い、話を始めた。