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ノーナの昇級試験

試験官オーリンは、石級冒険者で言うと上の下にあたる力量だ。

不可が少ないバランスの取れた『良い冒険者』というものだ。

しかし、バランスの良さを売りにしてしまい、結果、突出した部分がないのだ。

それ故、上の級に昇るのに苦労しているのだ。


全ての中で、何か突出した才能があれば良いという訳ではない。

自分にしかできない何かを見つければ良いのだから、バランスの良いことはむしろ、自分にできることをみつけることができるチャンスだ。


「私はオーリン、あなたのことはもう知ってるわ。魔族なのに、人間の言葉も喋れることも、敵意もないことも。」

「うむ、分かってくれて嬉しい。だが、これは手を抜いてはならんとシズヤに言われておるのでな、全力でいかせてもらうぞ。」


初手から槍を構えた。

腰には双剣を携えたままだ。武器屋で武器を買ったとき、おまけでベルトまで貰った(買わされた)のだ。


ノーナの槍の構えは突きではなく、凪ぎ払いに重きを置いているものだろう、穂先を斜め下に柄を石突きを斜め上にしている。

敵がこちらに走って来たなら、逆袈裟懸けすれば良いし、もしも避けられたならそのときはその時だ。

と、ノーナが言っていた。

初手から必殺を狙うのは些か無謀過ぎるが。

それもまた、訓練、修行だ。


未熟を噛みしめれば、苦汁を飲むことになる。

悔しい思いは、強くなるために必要なスパイスとなる。

勝っても負けても結局は経験だ。



ノーナとオーリンの試験が始まろうとしていた。


「始め!」


開始の合図は受付のサラがかけた。

その合図で双方の動きは違っていた。

オーリンは、リーチの短く手数の多い短剣、故に相手に近付かなければ攻撃できない。投げナイフとは違い刃が重いため投擲には向かない。

一方のノーナは、相手の動きを読んでから攻撃するのだろうか、相手をただじっと見て構えていた。


超近接ではオーリンの方に分がある。

槍は致命傷を与えられる範囲が決まっているため、柄で攻撃しようにも、とても近くに来られれば攻撃方法が決まってくる。


ノーナのとった攻撃は蹴りだった。

相手の腹部を右足で思いきり突き飛ばす勢いの蹴りだ。


そして離れたところで突きにかかる。



槍の突きは、一点突破の突きと連続する突きがある。

ノーナの放った突きは一点に集中するもの。

当たれば危ないが、今回の試験は武器が与えられる。

木で出来ているが、突き技はとても危険だ。

下手すれば人を殺しかねないからだ。

剣道も、一定年齢まで突き技が禁止されているのはそういった理由があるからだ。


そもそも槍はそのリーチを生かした武器。

歩兵、騎兵、どの兵にも持たせることができ、更には誰にでも扱える武器だ。



オーリンは迫り来る槍を短剣でいなし、そして、距離をとった。

オーリンは侮っていた。魔族の女が槍を扱う。そこまではよかった。

しかし、体術も使えることを侮っていた。

固定観念というものから、武器を振り回すだけの野蛮な奴らと思っていた。

しかし、目の前の女は違った。

戦いに馴れている。


オーリンは短剣を持ち直し、気持ちを切り替える。

油断はしない。全力だ。

オーリンは新たなサブの装備を使うことを決意した。


ノーナは追い打ちをかけるかのようにオーリンへ向かって走る。

穂先を向けて、確実に仕留めるという勢いで。

しかし、勢いのある槍はオーリンの武器によっていなされた。

いや、武器というにはあまりにも雑だ。

ただの棒、そう見えるものが両手に。

その棒が組合わさり、一つの槍と化した。


オーリンのサブ装備は、組立式槍だ。

槍は種類にもよるが、とても長く、閉所では使い勝手が悪い。

だから、組立式にすることによって短槍にもなれば、柄だけで組み合わせたものを二対作れば疑似双剣?にもなる。

バランスタイプは千変万化になり得るのだ。


棒を手早く組み合わせ最後に穂を着ける。

すると、接続部が消え、何個ものパーツで組み合わせた槍が、一本の頑強な槍へと変化する。

特殊な武器だと認識し、槍使い同士の戦いが繰り広げられる。


突き出される槍を避け、いなしては、踏み込み突き、凪ぎ、叩く。

先端が重くなるため、槍はしなる。

とても真似できそうにない技同士がぶつかる。

刃が潰されてても、飛び交う火花。

掠れば皮膚が切れ、血が垂れる。




勝負は受付のサラが合図をだし、止めた。

観客席にいるもの達は、二人の戦いに目を奪われていた。



結果は石級昇格審査に合格。

体の至るところに傷をつくり帰ってきたノーナにお帰りと声をかけて、医務室へと向かった。

オーリンも、ノーナと同じ数の傷をつくり医務室へと足を運んだ。


ノーナとオーリンは先刻の戦いを得て、友情を得たのだろうか、二人は何気ない会話をしている。



静也は迫り来る試験の時を待っていた。

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