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説得 その1

会話描写が多くなっちゃいました…

「え?」


静也はかなり驚いていた。

普通に会話できるし愛の神が普通に会話していたものだから言葉がわかるものだとばかり思っていた。

しかし、現実は逆だった。

会話できる自分は異常だった。

思い返せば、起死回生の神が虚無の中からノーナが出てきたとき、声がわからないと言っていた。

神の中にも魔族と話せる神と話せない神がいるのだろうと判断する。


「本当に何を話しているかわからないんですか?」

「あぁ。」《そうだ。》

「なんて話しているように聞こえてるんですか?」

「変な言葉と変な言葉が重なって聞こえるぞ。」《変な言語を使っておるな。》


開いた口がなんとやら、驚愕の事実。

ここで静也はある提案をする。


「俺が二人の会話の翻訳をしましょうか?」と。




静也が提案して、約二時間


「ふっぐぅぅ…お前も魔族の癖に大変だったんだなぁぁ!」


デカルトは豪快に泣いていた。

なぜないているのかはノーナの話を聞いていたからだ。


彼女はもともと魔族の住む集落の長だった。

ある日、集落に他の集落の魔族がやってきた。

そいつらは領土拡大のために侵略しに来たのだ。勿論そんなことさせまいと抵抗する。

そして、集落を防衛することに成功。

しかし、侵略しに来た魔族の一人がある魔術をノーナに掛けた。それが虚無と呼ばれるものになるのだ。

虚無の魔術を掛けられたノーナは自分に掛けられた魔術を介して死んでゆくものを見たくもないのに見せられていった。

虚無の中では彼女だけしか生きれない。他のものが入ろうとすれば虚無に食われるのだ。

衣服がなかったのは虚無に食われたせいである。

虚無を一時的にとめることに成功することができたが、食い止めることが出来ず他種族も殺してしまうなんてことを繰り返し、何十年も過ごし、やってきたのがここだった。


と、いう話。

聞き話ししていた静也は目頭を押さえて涙を堪えていた。



「…そいつが悪いやつじゃないってのはわかった。けど、魔族がこの村にいるのはさすがに他のやつらが認めないだろ。」

「そうですか…でも話したら分かり合えますよね?」

「…まぁ、無理じゃないだろうけどさ…」

「せめて、彼女がこの村の中で暮らせるようには出来ないですか?俺、家をかりるので、そこで彼女を暫く匿ってやれるんですけど…」

「他のやつがきたらどうする?隠していて、何かの拍子に見られたらどう説明するんだ?」

「そのときも話しますよ。彼女は悪いやつじゃないって。」

「…何を言っても無理そうだな…そいつに言っておけ、他の魔族を連れてくるなよ、ってな。」

「それってどういう…」

「良いって言ってんだよ!この馬鹿!察しろ!」


デカルトが静也の頭に拳骨を落とす。

傘を持っていないためダメージは大きかった。目玉が飛び出そうになるという表現がぴったりの痛みだった。


《な、何ゆえシズヤを殴る?!》

「あーこれは照れ隠しですよ。ノーナさんがこの村で隠れて住んでてもいいって言ってくれたんですよ。」

《そ、そうなのか?…本当か!?》

「はい、暫くは俺の家で匿うので、文句は言わないでくださいよ?」

《うむ、文句などありはせん。むしろよいのか?妾を寝泊りさせても…》

「大丈夫ですよ。俺今のところ一人暮らしなんで。」

《う、うむ…そうか…》


静也は家を借りることを決心したのだった。




「え?あの家を借りたい、ですか?勿論構いませんよ?そのために紹介したのですから。」


不動産に向かいホーセに物件を借りたいということを伝えるとこう返答が返ってきた。

バランの横の繋がりは広いということを感じさせられる。


「ありがとうございます。物件はいつから借りれますか?」

「書類の処理がございますので、早くて明後日になります。構いませんか?」

「はい、勿論構いません。」



ノーナとふたりで、宿に戻り、ヴィットにもう一人泊まることを伝えると軽く了承してくれた。

二人分の料金を払い部屋に戻っていった。

シャワーの使い方を知らなかったようで、色んなアクシデントに巻き込まれながらベッドでノーナを寝かせ、静也はソファで寝る。

明日はノーナの服を買おうと思って眠りに落ちていった。




≪おはよう、シズヤ。≫

「おはようございます。ノーナさん。」

≪相変わらず堅苦しい奴め。そんなに改まる必要はないぞ?≫

「ははは…」


朝一番に美人から挨拶を貰えるのはこれ以上ないご褒美だとは思うが、彼女の目のやり場に困る。

男用の服の為、ぶかぶかなのだ。それはまだいいが、彼女はサキュバスクイーン、彼女の肌は艶めかしいので、露出が高い服程、その艶めかしさは高くなるため、耐性のないものは魅了される。


そうならないために目を泳がしているのだが、どうしても視界に入る。

これから彼女を匿うのに、魔が差して彼女に手を出した、なんてことにならないように自制をきかせないといけないと思っていた。


彼女と一緒に生活していれば、自ずと魅了に対する耐性は強くなるため半年もかからないうちには彼女と普通に過ごせるだろう。


静也たちは身支度をして、服屋へと向かうのだった。



「いらっしゃいませ。」

「すいません、女性用の服は置いてますか?」

「はい、もちろんございます。お連れの方でしょうか?」

「そうなんですけど、事情があって人前に出ることができないんです。」

「そうなんですか…でしたら。おーい『クローザ』お前の出番だ!」

「はーい!」


クローザとは静也が悪戯の神と戦い、服を見繕ってもらった時の女性店員だ。


「あれ?お客さん、来てくれたってことはサイズを測らせてくれるってことですか?!嬉しいなぁ!どんな服が合うかいろいろ考えてたんですよぉ?!はぁはぁ、上から下までぜーんぶ!そう!全部私考えられる限りのことは考えて衣服の設計図まで書いたんですよ!どうです?見たくないですか?!」

「は、はは。俺じゃなくて彼女のを見繕ってほしいんですよ…ははは…」


この饒舌っぷりと言い、ある人とそっくりだ。


「あの、もしかして、トマスさんの親戚だったりしますか?」

「あ、わかりますか?いやぁよくそっくりだって言われるんですよぉ。トマス兄と私ってそんなに似てますか?」

「はい、ものすごく。」

「お客さん…」

「あ!すいません。それで、彼女なんですけど、訳あって身体を見せることができないんですよ…目測で前自分の服を見繕ってくれたじゃないですか?あの時のようにできますか?」


クローザはノーナをまじまじと見ていた。

その眼は真剣そのものだった。


「無理じゃないですけど…外套ごしで目測しましたら、大分サイズが大きくなってしまいますよ?」

「大丈夫です。それで、要望としまして、できるだけ露出の少ない部屋着がいいんですが。」

「部屋着ですか…もっと着飾ってもいいんじゃないんですか?見た感じ、いいスタイルですし…」

「…まぁ、そうなんですけど。そこのところはあまりふれないで欲しいんですよ…」

「まぁ、訳ありってならしょうがないですね…」


クローザは服を取りに戻っていった。

何かを企んでいるようなそんな顔が一瞬見えたが…



クローザが大量の衣服を積み重ねて戻ってきた。

積み重なった衣服の山は今にも崩れそうな状態でいた。


「す、すいませぇん!いっぱいあったものですから、いっぱいもってきちゃいましたぁ」

「わ、わわわ!危ないですよ!すこしずつ持ってきてください!」

≪危なっかしいやつよの≫

「こ、こら!クローザ!一体何をいているんだ!」


そして最悪の出来事はすぐに起きた。

クローザがわざとらしく持ってきた衣服の山を自分でわざとらしく転んでノーナに当てたのだった。

その拍子にノーナが被っていたフードがとれてしまった。


「ま、まさか、その子…魔族だったのか?!」

「なぜここに魔族が…!誰か組合か関所にいって来い!」

「ひぇ!」


店内にいる全員は大慌て、最悪の出来事は起きてしまった。


「待ってください!皆さん落ち着いてください!」

「お前!ソイツが魔族だと知って連れてきたのか!」


男性店員はノーナを指さし静也に怒声を浴びさせる。


「今すぐにでも殺すんだ!他の魔族か魔物が来るだろ!」

≪…すまぬ…やはり妾がここに来たから…≫


店内の慌てっぷりに言葉はわからないノーナも流石に察することができた。


「それは嘘です!そんなものありはしません!」

「嘘かどうかもわからないだろうが!魔族なんて庇ってどうする!もしものときにお前は責任が取れるのか?!」

「取れます!虚無だって自分が倒しますし、魔物だって自分が倒します!」

「魔族は俺達の害だ!悪だ!俺たちを破滅させるんだ!」

「魔族だって生きているんです!自分達人間と何一つ変わらないですよ!言葉が通じないだけで、なんで殺そうとするんですか!彼女がここに来た理由を知らないで、彼女が、ノーナがどんな過去を送ってきたかも知らないで、なんでわかりあおうとしないんですか!」


人間の魔族に対する感情は嫌悪だったり、憎悪だったり、やはり見るだけでそんな感情になるらしい。

加えて、魔族が他の魔族や魔物をおびき寄せるなどという嘘が広がっているのも、魔族を嫌うが故のものだ。


この騒ぎは店の外にも聞こえており、すぐに警護団が来る騒動になった。

魔族の存在、ノーナの存在は瞬く間に村中に広がっていった。


ノーナと静也は関所の地下にある牢に閉じ込められることになった。

後日、村長と話し、ノーナと静也の処分が言い渡される。



詰めたい地下牢で、二人は身を寄せ合い、暖を取っていたのだった。


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