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不安

「シズヤ!無事だったのか!虚無はだうした!」


村の関所の近くに来るとデカルトに出迎えられる。

関所にはほかにも冒険者が多く居り、戦闘態勢でいた。

誰も彼もが怯え、恐怖し萎縮していた。

酷い者では、膝を抱え震えている者もいる。


「虚無は倒しました!もう大丈夫です!」

「本当か!本当なんだな!」


静也が頷くと村のほうから歓声が響く。

大地を揺らし、空気も揺らす歓声に静也とノーナは驚いた。


人間しかいない村を目の前にノーナは緊張していた。

それと同時に恐怖もしていた。

人間も魔族も互いに違う種族。受け入れられるはずがない。きっと、あの村に入りもし自分が魔族だとばれたなら、きっとあの村の中の全員が自分を殺しにかかるのではと。

震えは徐々に強くなる。歯がカチカチと鳴る。


すると、手に暖かな感覚がした。静也が優しく手を握ってくれていた。


「大丈夫です、俺がなんとかします。」

《…だが、妾は魔族、それゆえ人間は妾を拒むだろう。そして、妾を連れて参ったお主も妾らと同じ魔族と思われ、殺されるのでは…》

「死なないですし、死なせません。俺がついてますから。」


不安にさせまいと、静也はノーナの手を優しく握る。

ノーナの震えは治まっていく。

会ってすぐで、人間だというのにノーナは不思議な安心感を抱いていた。

しかし、はやり不安でいた。


「ところでよ、そいつは誰だ?外蓑で体を隠してるって、訳アリか…。」

「まぁ、そうなんですけど…」

「…とりあえず、人の居ないところに行くか?」

「お願いします。」




一同は人気のない一軒の建物の中に入っていった。

そこは、すでに人が住んでいなく、村の住人からは幽霊が出るとうわさされているところだ。


「それで、そいつは誰なんだ?隠さなきゃいけないようなやつなのか?外蓑で隠してるってことは裸ってことはわかる…でも、指すら見せないってのはどうなのよ…」

「先に約束してくれませんか。」

「…何をだ?内容によるだろ。」


静也の真剣な表情にデカルトは構えなおす。

ただ事じゃないということはデカルトはわかっていた。


「先の虚無事件の犯人…っぽい人って言ったらどうしますか?」

「…マジだったら、そりゃタダじゃ置かねぇな。他の国にも被害があったんだからな。お咎めなしにするほど俺達警護は甘くない…」

「…事情があってもですか?」

「法皇の定めた法律で言ったら、『罰の重さは軽くなる』だ。だが、これはまた例外だ。」


『シズヤ、お前が嘘を吐けないのはわかるが…後先考えずに話すのはどうかと思うぞ。』

「…起死回生の神様…俺どうすればいいんですか…」

『俺の言うこと全部そのまま言ってろ。』


「それで、そいつは誰なんだ?いい加減話してくれや。」

「…その前にその法皇の法ってどこまで通用するんですか?」

「あ?…そう言われてもな…人間全員に適用されるな。」


それだったら、と言いノーナの頭を外蓑から晒す。

あまりの事に、デカルトとノーナは驚いていた。


「お、おま…そ、そいつは、ま!」

「はーい!すこし待ってくださいね!」


静也はデカルトの口を手で塞ぐ。


≪し、シズヤ…妾は大丈夫か?≫

「大丈夫大丈夫!大丈夫です!」


デカルトが落ち着くのに十分掛かった。



「それで、なぜお前は魔族なんぞをこの村に入れた。ことと場合によってはこの村から永久に追放するぞ。」

「まず、魔族をなぜそこまで嫌っているのか教えてくれませんか?」

「話を挿げ替えるな。質問をしているのは俺だ。」

「…ノーナがかわいそうだったからです。それに服を買ってあげないと。」

「魔族がかわいそうだって?おかしなことを言うもんだ。」


デカルトは嘲笑する。

この世界の人間が魔族を嫌うことは別段おかしな話ではない。

むしろ、魔族をかわいそうと思う人間のほうがおかしいと思われる。


「もしかして、お前魔族の変な魔法にでも掛かっているんじゃ…」

「違います!俺は魔法になんて掛かっていません!」

「魔法に掛かったやつはみんなそういうんだ。」


デカルトはおもむろに立ち上がると近くに置いていた剣に手をかける。

そして、鞘から剣を引き抜き切先をノーナに向ける。

ノーナは観念したかのように頭を垂らす。


「待ってください!彼女だって生きています!虚無が出てきたのだって事情があって、ですよねノーナさん。」


静也はノーナの前に立ちかばう。


《…よい、もうよいのだシズヤよ。妾は最後におぬしと会えてよかったと思うぞ。》

「なにあきらめてるんですか!まだ終わりじゃないですよ!」

「…おい、そいつが何を言っているのかわかるのか?!」


デカルトが剣先を向けたまま質問する。

デカルトの表情はありえないものをみているような顔だ。


「は、はい。わかりますけど…もしかして…ノーナの言っていることがわからないんですか?」

《その通りだ。妾もそやつが何を言っておるのかわからぬ。》

「あぁ、そいつが何をいってんのかわからない。」



「え?」


静也はかなり驚いていた。

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