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神殺しの刻 その2

悪戯の神の拳は起死回生の神の胸を貫いていた。

起死回生の神の口や鼻、目、耳からは血が吹き出てくる。

傷から、首から上の穴から流れた血でその場に血溜まりができていた。


悪戯の神が拳を引き抜くと出血は激しくなり滝のような流血が起こる。それにより血溜まりは範囲を広げる。

神力、もしくは魔力の影響で再生は阻害され傷は深く、広がり死期を近付ける。

血が吹き出て一気に無くなり、気が飛んでいきそうになる。

瞼が重く、眠くなる。抗いがたい眠気が起死回生の神を死の世界へ誘う。

悪戯の神は手に着いた血の感覚に酔っている。

起死回生の神はむせながら、喘ぎ喘ぎに言葉を発する。


「…不思議、だな…異世界に来て…神になって…それでも、また死、ぬなんてな…」


起死回生の神はガクリと膝を付ける。観念したような表情で語る。


「神になって何、年経ったか…な。もう、あっちのことは、気にしないことにしたんだ、が…これが走馬燈ってのか…」

「…今更命乞いしても遅いぜ。そして悔め、己の弱さに」


悪戯の神は拳を握りこむ。


「これが最期なら…最期の足掻きをさせてもらう…」


起死回生の神は脱力する。すると体から光の粒子が浮き出る。


「何をするかは知らんが、じゃあな。」


悪戯の神の拳は起死回生の神の頭を叩きつける。

頭があったであろうところからほ噴水のような血潮を撒き散らされている。

悪戯の神はその血潮を浴び、光悦の笑みを浮かべ天を仰いでいた。


「はぁあ、たまんねぇなぁ!この感覚…何百年、何千年ぶりか…!神のものだとまた格別!…まぁ、どっちがいいのか差が分かんねぇからなぁ…シズヤ君ので試すか、ナァ‼」


悪戯の神は静也が吹っ飛んでいった方向を見ると驚異的な脚力で悪戯の神は音速の如く走って向かう。



一方の静也は走って二柱(ふたり)の元へ走っていた。

徐々に距離は詰めっているが、まだ着きそうにない。起死回生の神が死んだことすら知らず走っていた。

刹那、前方に走っていたはずが、後方にまた吹き飛んでいた。

腹部が強烈に痛む。

何が起きたのかわからないでいる静也は、ただ流れに身をを任せていた。

スキル<防御強化・傘>のおかげで痛みは少ないが、木で身を打つ痛みよりかなり痛い。

腹部直撃、内臓の中にあるものが吐き出そうになる。


「ははは!俺の拳を耐えるか!面白い!起死回生のより楽しいかもしれないな!」


目の前に一瞬で映る男、悪戯の神が残像を作り出しながら、不規則に動く。


「何を驚いているんだ?あぁ、見えなかったのか。それはすまない、加減はしてやるが、殺しはやめないぜ?」


地面に足を付け着地する。今度は態勢を崩すことなく無事に着地する。


「まだ驚くことがあるぜ?シズヤ君を加護する起死回生の神は俺が殺した。この手でな。」


驚愕の事実、静也は硬直してしまう。

その様子をみた悪戯の神は満足げに、不気味に笑みを浮かべる。


「あっけなかったぜ?突き一発で胸に穴が開いたし、拳叩きつけるだけで頭が無くなるしで。…ククク…ははははは!!本当に弱かったぜ!流石、最下級神ってところだな!下級神である俺にすら負けるんだからなぁ!!ハハハハハ!!弱い弱い!ハハハハハハ!!」


静也は傘を握りしめていた。

一度と言わず何度も命を救ってくれた神が、目の前の残虐非道の目の前の男に殺された。

殺意が心を蝕み始める。


「てめぇ!このクソ野郎が『落ち着けってシズヤ、俺はまだ死んではねぇよ』…え?」


激昂する静也の脳内に起死回生の神の声が響く。


「ほほぉ…依代作成か…。俺はそのスキルは捨てたから使えねぇけど、便利だなぁ…何度も生き返れるんだからな!」

「何がどうなってるんだ?!死んだって悪戯の神が言ってたはずだけど…」

『すまないが、お前さんの体を一時的に依代にさせてもらうぜ。でないと存在が消滅するから。』

「ど、どういうことですか?!どこに?!」


静也はキョロキョロと周りを伺う。


「で?依代に入ってどうするんだ?そいつなら勝てると思っているのか?まぁ、楽しめるからいいが。」

『ああ、こいつならお前に勝てる。圧勝する。ワンサイドゲームになるぜ?お前なんて足元にも及ばないほどにな。』


起死回生の神が悪戯の神を挑発する。


「ほほぅ…それは楽しみだ、ナァ!!」


悪戯の神が踏ん張ると凄まじい圧が放たれる。思わずまた吹き飛びそうになると


『シズヤ、体借りるぞ!』


起死回生の神が静也の体を乗っ取る。

身体が勝手に動く。視界、感覚どれも良好。自身の筋肉が動いている感覚も風が頬を撫でる感覚も感じられる。


『お!お前、<防御強化・傘>をとってんじゃん。よし、勝率がぐんと上がったぞ!ついでに感覚もはっきりしてんならこれから体で覚えてもらう。』

「え」


話についていけない静也は思わず間の抜けた声を出す。


「フハハ!やはりそいつの体は面白いな!意思は人間のそれだというのに、肉体は神のものに似ている!起死回生!お前か?!お前が創ったのか?いいや、無理だな!最下級神じゃ精々細胞一個くらいだ!だれが創った!言え!」


笑いながら、これでもかというほどの大声で起死回生の神に質問している。

しかし起死回生の神はだんまりだった。

当の静也は脳が追いつかず呆然としていた。


「まぁ、そんなことどうでもいいな!行くぞ!」

『来るぞ、痛みもあるから我慢してくれよ。』



「えええええええええ!?」


静也は叫ばずにはいられなかった。



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