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男として その1

ティアとの約束で、依頼に行く前には寄ることになっている。

場所は一度寄ったところなら忘れないので、スムーズに店に寄ることができた。


「いらっしゃいませー…あ、シズヤの兄ちゃん!来てくれたんだ!」


と、店の在庫置き場からティアが足早に駆けてくる。


「こんにちはティア。今から知り合いと薬草採取に行くんだ。その前にここに寄ったんだけど迷惑じゃないかな?」

「ううん!全然そんなことないよ!来てくれただけでも嬉しいよ!」


可愛い…抱きしめたい…頭撫でてやりたい…と、庇護欲が湧いてしまっていた静也は衝動的行動を抑えるのに必死だった。


「あ、シズヤの兄ちゃん、昨日かった召喚の木版は使った?」


あ、そういえば、そんなのも買ったな…と昨日のことながら忘れかけていた。


「いいや、まだ。どうしたんだ?」

「使ってたならどうだったのかな…って思って」

「じゃあ、ここで使っていいかい?」

「いいけど…あ、ここじゃ狭いから外に出よう!」



(外に出たのはいいけど…どうやって使うんだ?)


静也は召喚の木版とにらめっこしていた。


「どうやって使うんだ?これ…」

「埋め込まれている魔石に魔力を注ぐだけだよ。それでなんで召喚獣が出てくるのかは知らないけど…」

「やり方がわかっただけでも十分だ。」


静也は以前、魔牛アングリーボアとの戦闘で使った魔法である程度魔力の存在には気付いた。

その感覚を思いだし、わき出る何かを魔石に向け流そうとする。

ちゃんと魔力が流れたのか魔石から発せられる光が徐々に強くなり五秒もしない内に目が開けられなくなるほどの光になった。


光が収まり視界が元に戻りそこで目を開ける。


「なにが起こったんだ?」


目を開けてもなにも変わらない場景。まだ目が眩んでいるティアと何事かと寄ってくる村の人


「と、とりあえず、私の店に。」


ティアの提案に従いティアの手を引き店へと入る。



店のなかに入り、暫くしてティアの視界が直った。


「召喚に成功した?召喚獣がいないなら失敗だけど…」

「失敗だね…ま、物は試しでやってみて最初から成功するなんて思っていないから大丈夫。」


持っていた木版は焼き焦げたかのように炭化していた。


「でも、あんなに光るんだね…ビックリしたよ。」


人前だと言うのに強烈な光を放つこの道具、召喚するときに光るのかは定かではない。本当に召喚の木版かというのもだ。

本当は別の物かもしれないというのを考えてはいなかった。


ティアから買ったものだからと、ある意味ティアの店で売っているものが静也の中でブランド化していたからだ。もはや静也のティアに対する好感度は落ちるところをしらない。むしろ堕ちていたからだ。

無邪気に向けるティアの笑顔に静也の心は貫通する勢いで射貫かれた。


「そうだな。びっくりしたな。」


感想は素っ気無いが、静谷の表情は口角はやや上がりどことなく父親顔をしていた。

静谷の父性が開花した瞬間だった。

しかし、静也は忘れかけていたものを思い出す。

アイナとの薬草採取依頼だ。

忘れかけていたものがふと頭によぎるのでそれを捕まえたらそれだったのだ。

思い出して、静也は名残惜しそうにティアの店から出るのだった。

急いで出て行ったのではっきりとは見えなかったがティアの表情もどこか名残惜しそうにしていた。



昼にはまだ届かないが、太陽はもう頂点に届こうとしていた。

急ぎ足で関所へと向かう静也、先程の光の件で人はそちらに向かっていた。

すぐに鎮静化されたので、すぐにいつもの人通りになる。


建物と建物の間で何か揉め事をしているのを見かけた。

足を止め、覗いてみたらアイナがいた。

傍らにはガラの悪そうな男3人、男3人がアイナを取り囲んでいるような状態だ。

見るからにアイナは困っていた。


「とっとと何処かに行って。私は貴方たちに付き合っているほど暇じゃないの。」


すると、巨漢の男がポケットからあるものを取り出した。


「おいおい、キレーなおねーさんよぉ、いいのか?んん?()()がどうなってもよぉ?」


男は下卑た笑みを浮かべながら一つのペンダントを握っていた。

どうやらアイナの大切な物らしい。

ここで飛び込んでガラの悪い男達を颯爽と倒し、一言堕とし文句を言う。なんてことは出来なかった。

なぜなら静也はチキンだからだ。見た目が怖い男達を相手にしようなんてなかなか思わないのだ。

自分が首を突っ込んでいいことじゃないだろう。自分には関係のないことだし。と言い訳をつけていた。

しかし、彼の手には一本の傘が握られていた。

本当はアイナを助けたいと思っているからだ。

一歩進めば自分が厄介に、退けば彼女が厄介に巻き込まれる。

わかっている、けど女の子一人守れないのも男としての甲斐性が疑わしくなる。


首を振り雑念を飛ばす。

意を決して、静也は厄介に首を突っ込んだ。

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