表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/107

道具 その2

道具屋の倉庫には珍しい物が置いてんじゃないのか。

誰しも少なくとも考えた思う。

静也もまたその一人になりつつある。


「お客さーん」


少女が静也を呼んでいる。きっと言ったものが用意できたのだろう。

向かうと少女がバスケットを抱えていた。


「はい、用意できましたー回復ポーションが3個。おまけにもう1個付けとくね。」

「ありがとう、ところで気になったのだけど棚にある木の札なんだが、あれはなんだ?」

「あー、あれね…あれは召喚獣の召喚札なんだけど…運要素もあるし在庫がないから売ろうとは思わないよ。一応あれは50ルターで売るよ?」


「…高いんだが…それは」

「でも召喚獣はとても強いし役にたつよ?召喚できるかは定かではないけどね?でも買う価値はあるよ?それに、成功したときの召喚獣は強力らしいから、か・な・り・お得だと思うけどね?」


召喚獣とは1種の魔物だが知性があり、召喚主に従うので、国の方ではかなり人気の魔物だ。少女が言っていた通り強力だ。

召喚した後は売るもより良し、狩り素材を取るもよしと無駄の無い。


(まぁ、所持金には余裕があるし、運試しみたいな物だろ、やってみるか。)


「わかった。それも買おう。まだ見せてもらえるか?」

「勿論、全然構わないよ!付いていようか?」

「ああ、その方がありがたい。…追加料金とか言わないよな…」

「しないよ!そんなセコい女じゃないもん!」

「ははは!ごめんって。じゃぁ頼むが、店の方は良いのか?」

「あー、大丈夫、ここあまり目立たないからそうそう人が来ないんだよね。」

「それで生計立てられてるのか?」

「大丈夫!私副業で別の仕事してるから。」

「若いのに大変だな…何かあれば相談に乗るぞ?」


少女が少し暗い顔になった。


「ありがとね。けど、大丈夫!」


少女がはにかんで見せた、作り物の笑顔だったのに静也は気付いていたが、これ以上踏み込んではいけないと察し聞くことをしなかった。


「…あ、そうだった。自己紹介がまだだった。俺は水鏡静也。静也って呼んでくれ。」

「あ、私は『ティア』。宜しくね!」

「ああ、じゃ、早速見にいくか。おすすめがあったら言ってくれ。」


二人は倉庫の中に入っていく。

もしかすると野宿することもあるだろうといわれ点火道具や調理器具などと自身の保護のために防御効果のある銀のアミュレットを買った。

中でも一番高かったのは銀のアミュレットだった。値段は3000ルターだったが、効果はそれ相応の物だった。

その効果は正面からの飛び道具攻撃を確率で無効化する物だった。確率と言われ少し心配になったが、これも万が一のときに頼りになると思われる。


「なあ、ティアはここを一人でやっているのか?」

「うん、お父さんとお母さんは別々に暮らしているの。だから少しでも楽させてあげたいから…あ!ここは私が自分で買ったの、すごいでしょ!」


静也は思わず頭を撫でてしまった。

無邪気故にここまでしてしまうのだ。両親が好きだから頑張りたくなるのだろう。

けれど、それで体を壊してしまうのは違うと思った。


「凄いなティアは…本当に…」


ティアは涙を堪えていたが静也は気づかなかった。それは静也も涙を堪えていたので目の前が霞んでいたからだ。



購入金額は3320ルターになった。

店の外は雨がどしゃ降りだった。店のなかの魔導ランタンが点きやや薄暗い部屋のなかで少女と二人きりというシチュエーション


(どうしよう、傘を差して帰ればいいんだけど…)


静也が帰れない理由はティアが『雨が凄く降ってるよ!雨が止むまでいなよ!』とグイグイと推すからだった。

まさかここで『傘があるから大丈夫!』なんて言えるほど簡単な場面ではなかった。

それはティアがとても不安そうにしていたからだ。

何でかは聞けるほど静也の肝は据わっては居なかった。

とりあえず黙って<傘ストレージ>に買ったものを見えないように仕舞った。


「なあ、ティア…本当に俺はここに長居してもいいのか?」

「大丈夫だよ。それに『ゴロゴロゴロ…』し。」


(え?なんて言ったんだ?雷の音で聞こえなかった…)


「雨凄いな…雷まで落ちてくるんじゃないか?」

「うぇ?!あ、うん!そうだね!凄くゴロゴロなってるからね!うん!」


(なんか、凄くわたわたしてるな。どうしたんだ?)


「どうしたんだ?そんな慌てて。」

「なんでもなーい!」


と言ってバスケットを静也の頭に被せた。


(なんなんだ…一体…)


静也はそこまで鈍感ではないが、部屋が薄暗くてわからなかったのだ。

ティアの顔が真っ赤に茹であがっているのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ