防具選びは何か、楽しい
「このフルプレートメイルはどうですか?攻撃されても痛くも痒くもないですよ?それに隙がないですよ。」
「ですが、重そうですし、逃げるのに困りますよね…」
勿論、静也からすれば重さもほとんどないであろうが。
「でしたらこのライトプレートアーマーはどうですか?機動力も確保できて、万が一に攻撃されてもそう簡単に傷をつけさせませんよ?」
「いいですね。こんな感じのものって他に何かありますか?」
「この感じの物なら…軽鎧がいいですかね?一応このライトプレートアーマーは置いておきます。この重鎧達はしまってきます。ほかの軽鎧を取ってきます。」
といって何段もある木箱を持って走っていった。
試しに近くにあった木箱を持ってみたら、以外と軽かったので、あんなに楽々に持っていけるのに納得していた。
これも勿論スキル<傘の極意>のお陰である。
足早にトマスは戻ってきた。
木箱の中には乱雑にしまわれた防具、所々傷のあるものまであった。
「この木箱の防具は使用者が死亡したり、使わなくなったりした時に譲り受けた物なんで、合わないものもありますので、実際に着て試してみるといいです。」
「多くてどれがいいのか全く分からないですね」
「実際に着て、動いて動きが阻害されるなら加工したり、別のものにしてやるといいですよ。防具選びは誰だってそんなものですから。」
木箱から軽鎧を出しては着て、しまっての繰返し。
時折見つけるましな品物は出しっぱなしにしていく。
そして、全ての木箱を開けて出したもので決定する。
皮鎧、ライトメイル、ライトプレートアーマー、チェストプレート。静也が実際に着て唸った選りすぐりの中古達。
先ずは皮鎧。動きの阻害感が殆どなく、動きやすさに重きをおいていた分それが欠点になる。防御面が疎かで不安になったのだ。
次にライトメイル。これは皮鎧に比べて金属製の安心感のある素晴らしい一品。動きの阻害感も殆ど無い非のつけようがない素晴らしい一品。だが露出が多くて安心感が地を貫く。
次にライトプレートアーマー。門番達の主要防具のひとつ。防御面ではフルプレートアーマーの次に良い。露出も殆どなく安心してつけられる。が、走りにくかったのが少し残念。
最後のチェストプレート。下腹部まで届く守備範囲。中古達の中でも最も数の多い防具だ。序盤、中盤、終盤どこに持っていっても恥ずかしくない一品。防御が安定しているためデザインも豊富。
少し動きの阻害感はあるが気にならないので良し。
静也の心はもう決まっていた。
『チェストプレート』に決まった。
その豊富なデザイン性、安定した防御性能、守備範囲。何処をとってもバランスのとれた最高の防具をこれ以上知らない。
「チェストプレートですか。確かに防御面、機動性でもバランスの良いこの防具ならシズヤさんなら満足することでしょう。」
「トマスさんのおかげです。ありがとうございました。良い鎧に出会えました。」
「礼を言うのはこっちの方ですよ。防具選びもそうですし、装備に触れさせてもらえたのですから。」
チェストプレートを装備したまま防具の片付けを手伝い、関所の簡素な建物にお邪魔させてもらった。
その時にグロール魔樹海の開拓作戦の話を聞いた。
国が兵隊や冒険者を派遣し魔樹海を開拓することを聞いた。
しかしデカルトは無謀だと言っていた。
それは魔樹海の魔力影響のことだ。
人間が足を踏み入れて数分後、人間の魔力が増幅しすぎて爆発することを聞き、絶対にいかないと思っていたが静也は既に魔樹海を生還している。その事に静也は気づいていなかった。
もう既に外は暗くなりつつあった。
静也は急いで宿をとりに行こうとしている。町を走っていた。
回りの人からしたらとんでもない早さで人が走っている。
暗くなりつつあるのに町はまだ人が賑やかにしていた。
町の街道には、魔石ランプと呼ばれる静也の前世の世界で言うところの街灯に当たるものが点灯していった。
夜でも明るい町の人達の注目に気づかず宿まで走る途中、視界の端であるものが見えた。