表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/107

他人から見た自分

隣の建物の中に入ると、内部は綺麗に整えられている。

買い取り店は清潔さを維持しているようで、張り紙には『清潔に!』と書かれていた。


「いらっしゃい。買い取りか?解体か?どっちだい?」


カウンターには大柄なおばちゃんがいた。


「買い取りを頼みたいです。」

「いいよ、で?買い取って貰いたいやつはどこだい?」


と言われたので、傘を召還し、開いてぼとぼとと死骸を出していく。

おばちゃんはとても驚いていた。が、静也自身も倒した記憶のない死骸が出たとき、驚きが隠せなかったのか口が開きっぱなしになっていた。


「か、鑑定する奴を呼んでくるから、待っててな。」


回りにいた冒険者や他の人も驚いて口々に


「あの少年…傘から魔獣を出したのか?!」

「傘で?嫌違うだろう。きっと魔法が使えてて、手品まがいにあーやったんだろうよ。」

「わざわざか?あり得ないだろう。だとしたら何処の道化師だ?」

「あの魔獣…グロール魔樹海に生息するやつにそっくりじゃねぇか?俺、魔獣一覧って本で見たことある。」

「本当だ!あれは狂気猿に、姑息猿、それに弾丸蜥蜴じゃねぇのか?」


まわりの喧騒は静也のことに早変わりしていた。あまりの恥ずかしさに静也は何もしないで突っ立ていた。

周りの冒険者などは静也が何者なのかを考察している。


「あいつがやったのか?!」

「それは無いって、あのまともな防具も着けていない奴にやれるわけ無いだろ。どうせ上位冒険者の下っ端で売って来るように使われてるだけだろ。」

「でも、ここの冒険者であの危険種を倒せるやつなんているのか?しかもあんなに沢山…」

「そ、それはあれだろ…違う日のもあるんだろうよ。」

「魔獣の死骸をか?それは無理がある。日を置けば魔獣の死骸は腐る。しかもとんでもない早さでだ。そんなのを日を置いて売ろうとすれば、安くなるってのは冒険者なら誰でも知ってるだろ。」

「じゃぁ、あんなやつがあの危険種を討伐したって言うのかよ?」

「あくまで、もしかしての話だが、あいつは実は上位冒険者で、あーゆう風に下級冒険者を装っているとしたら?」

「だとしたら何が目的なんだ?」

「知らないが…それ相応の考えがあるんだろうよ。」


勿論、静也は上位冒険者でもなければその下っ端でもない。

2、3人ほど呼ばれ、鑑定に取り掛かる。

鑑定士達は感嘆の声をあげながら、鑑定をしていた。

鑑定士の一人に得物はなにかと聞かれ、傘だと答えるや否や驚愕の声を上げられた。


小一時間程するとカウンターのおばちゃんが麻布の袋と紙を持ってきた。

見た感じかなり入っているので宿には困らないな。

と安心していた。その中にどれだけ入っているのかわからないが。


「はいよ。34匹の魔獣と42体の魔物の死骸を鑑定した結果の買い取り金額ね。どれも高位魔物だから買い取り額は高いよ。あんた結構やるのねぇ。」


とおばちゃんに褒められる。誰かに褒められるのは悪い気はしないのか、静也は頭を掻いていた。


「で…買い取り金額はどれくらいですか?」

「詳細はこの紙をみてくれたらわかるけど、合計金額で178650ルターよ。これで防具なり武器なり道具なり買いなさいよ?長生きしたいのならね。」

「き、肝に銘じておきます…」


おばちゃんのその一言が嫌に胸に突き刺さった。

昼過ぎに起きたことを思い返すと、実に耳が痛い思いだった。


「素直でよろしい!だけど、騙されやすそうだろうから、そういう輩に気をつけな。」

「はい。」


開いた傘に麻布ごと金と詳細の書かれた紙ごといれ、傘を閉じる。

これを見たおばちゃんは、ありえないものを見たかのような表情をしていた。


「あ、あんた…今のはどうしたんだい?」

「あ、これは傘ののうり」


するとおばちゃんが急にカウンターから状態を乗り出して静也の口に手をあてる。


「むやみに自分の手札を明かす行為はいつか後ろから刺されるかもしれないって覚えておきな。」


というと、おばちゃんは手を放す。


「す、すいません。」


気圧され、謝ってしまった。


「わかったら、次から気を付けるんだね。あと、死ぬんじゃないよ、折角稼げそうな奴なんだからね!せいぜい私たちのために魔物共を狩ってくるんだね。」

「は、はい…あ、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

「あぁ言うのを忘れてたね。あたしは『ジョアン』。覚えたらさっさと行きな。」


ジョアンに背中を思いっきり叩かれ、つまずきそうになる。


なんだかんだで優しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ