厄介事入りまーす。
流れ的に裏の広場で『決闘』を行うことになった。
武器は傘、防具は服…とは言っても相手は剣を持っているので切り裂かれるのは目に見えていた。
いまだに自分に自信が持てていない静也は後の自分の殺され方を考えていた。
裏の広場に重い足で向かった。
広場にはすでにアレンが広場の真ん中で任王立ちしていた。
既に静也は相手が勝つことを見越して今後のことを考えていた。
いまだにスキル<傘の極意>の効果に気づいていない。
静也は重たい足を頑張って広場に運んでいった。
「まってたぞ。くそガキ。死ぬ覚悟はできたか?」
アレンは青筋を立てながら静也に威圧的な目を向ける。
その威圧的な目に気付かづ、この後のことを考えていた。
「おい!聞いているだろうが!」
その怒声を聞きやっと気づいた。
「あ、いや、聞いていませんでした。」
正直に答えるとアレンの青筋が増え怒鳴ろうとしたその時
「それでは、決闘を開始する。勝敗の決定方法は「相手を殺すことだ!」…ということだ。勝利者には敗者の殺生与奪の権利が贈呈。」
ダンの説明にアレンが間髪入れずに怒鳴る。
なにかの説明もなくダンは決闘の合図をする。
「…では開始!」
(今から俺は死ぬのか…この世界で第二の生を受けて2日目で死ぬのか俺は…でも…なんでわざわざ遅く走ったふりをするんだ?まさか…追加試験?!攻撃を当ててなかったから…なら、やるしかない!)
勿論、そんなわけがない。何度も言うがスキル<傘の極意>の影響である。
傘を右手にアレンに向かって走る。
距離を詰めると傘で上半身を何度も軽くたたく。手首を利かしながら上半身をかるーくたたく。
ほぼ無抵抗のアレンは傘にたたかれていく。
勿論、頭は叩いていない。
5、6発たたいたところで、手を止めて距離を置く。
途端に世界は早くなり、大歓声が聞こえる。
するとアレンは急に倒れて静也は驚きを隠せなかった。
急いで駆け寄り大丈夫かと確認を取りに行く。
アレンはただ気絶していた。それを確認でき静也は安心した。
そこにダンがやってきた。
「殺生与奪の権利はお前にある。どうするんだ?」
「どうするって…?」
「生かすのか、殺すのか。」
「殺すわけないでしょう!そんなひどいことをするわけ…」
「お前は何を思って、何を考えてそう言っているのか知らないが、お前は殺されていたのかもしれないんだぞ。今日だけじゃねぇかもしれねぇ。いつも命が狙われるかもしれない。そんな相手を生かしておくのか?」
真剣な目で訴える。しかし、その目には別の何かを望んでいる目をしていた。
「それでも殺すまでにはいかないと思ったからです。」
(そもそも、追加試験だから。殺したら流石に不合格でしょう?)
勿論違う。試験ではない。
「…それが答えでいいんだな…」
「はい」
するとダンは静也の腕をとり、あげ
「勝者『木級冒険者・シズヤ』!」
歓声で大地が揺れる。決闘ですら地味に終わる。
「この度はありがとうございます。」
「いえ、困っているようだったので。」
この騒動が終わったのは夕方になりつつあったときだった。外はもう茜空のもとだった。
「それでは買い取りしてもらいにいくので。」
「はい。本当にありがとうございました。」
エリナに小さく手を降り組合の隣にあるという買い取り所へ向かう。
隣の建物は組合の隣にあっても違和感がなく組合のひとつと思ってしまうくらいのものだった。
ご丁寧に看板まで吊り下げている。
何故気付かなかったのか、不思議なくらいである。
明けましておめでとうございます。良いお年を。