生きてゆくということ その4
時間はまだ昼過ぎ。
町の関所へと向かう。気持ちは浮かないまま、あとは売りにいくだけ。
気持ち的にいいものじゃないが、生きるのに必要だとかなり妥協した。
「ようシズヤ。どうだ?稼げそうか?」
「デカルトさん。こんにちは、今日は死にそうでしたよ…」
というと、デカルトは笑いながら
「そういうもんだ冒険者というのは。命を懸けて一獲千金を狙う。それで生計を立ててるやつもいるんだ。」
「そうなんですね…実は今日気を失っているとき魔物や魔獣が手持ちにあってそれを売ってもいいのかって思っているんですよ」
「いいんじゃねぇか?おいていったやつが悪い、もしかするとわざとなのかもしれないぞ?」
「そんなもんですかね?」
「そんなもんだ」
と即答するデカルト。
うろたえながらもシズヤは先にデカルトが述べていたことに渋々受け入れることにした。
町に入る前に冒険者カードを見せ、町に入る。
組合に入り、受付嬢のエリナの所に向かう。
「討伐した魔物や魔獣の買い取りはどこでやってるんですか?」
「買い取りはこの組合の隣の建物で行えますよ。」
ありがとうございます。そう言おうとした途端
「やぁ、エリナちゃん!」
と、チャラそうな声が後ろから聞こえる。
振り向くと正に派手やかな衣装に身を包んだ男がいた。
「おい、退けよ。俺とエリナちゃんが話してんだろ?」
エリナの方を見ると困ったような顔をしていた。
「あの、すいませんがエリナさんが困っているように見えるんですが…」
「あぁ?!お前の目は節穴か?いつもの可愛い笑顔のエリナちゃんじゃないか。」
どっちが節穴なのか疑いたくなる。
周りの冒険者は見て見ぬふりをしていた。
以前サラが言っていた言い寄ってくる男なのだろうと静也は察した。
「いいから退けよ。この銀級冒険者の邪魔をしてくれるなよ。」
「俺はまだエリナさんと話していましてよね。それにエリナさんが困っているのが分からないんですか?」
そう発言するとチャラい男は震えながら吠えた。
「貴様ぁ!許さん!表に出ろ!ぶっ殺してやる!」
チャラい男はキレた。
「いけません!冒険者同士のいざこざはご法度ですよ!」
「うるせぇ!俺は銀級冒険者だぞ!そんなやつより強ぇんだよ!そんなやつを構うなよ!俺だけをみていてくれよ!」
と何を思ったのか腰につけている剣を鞘から抜き剣先を静也に向けた。
静也が動かないことに他の冒険者は感心していたが、実はただビビって動けてなかっただけである。
その時元金級冒険者のダンがやって来た。
「おいおい、二階にまで聞こえていたはずの騒音が消えたと思ったらよぉこんなことだろうと思ったぜ。」
気持ち顔の白いダンがチャラい男を睨む。チャラい男は蛙が蛇に睨まれたかのように硬直した。
ダンは溜め息をはき、頭をかきむしりながらあることを提案する。
「だから、ここは『決闘』でいこう。それで気が済むのならな。」
周りはざわめいていた。
「おいおい、決闘って…そりゃあんまりじゃ…」
「あの少年かわいそうにな…登録したてのやつに決闘ってダンのやつ何考えてんだよ…」
「おいお前あの試験見てなかったのかよ。あのダンに合格って言わせた男だぞ」
「嘘だろ?!あの『爆炎のダン』をか?!」
「だがあの『流水のアレン』もなかなかだぞ。ダンに負けず劣らずだろう。」
「「「それはない。」」」
そんな会話が絶えず流れる。
「俺は構わん。さっさとこのガキを殺せるならな!」
アレンは静也ににらみをきかす。
「決闘は裏の広場を貸し切りにして行う。準備をしておけ。」
ダンはため息をはき、そそくさと二階へいった。
誰も気づいていないが実は元老ロドムからの指示であった。
流石にダンもロドムの指示には反対をした。登録したての静也に決闘はいささか厳しいのでは。と。
だがロドムの無言の鋭い眼光に物怖じし、うなずくことしかできなかった。
その無言の眼光に恐怖をしていた。故にダンが顔面蒼白気味だったのだ。
堂々とした姿勢のままでいる静也を誉める冒険者達。
周りの喧騒のなか、静也の思考はとまっていた。