表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/107

生きてゆくということ その3

静也は現状に絶望していた。

なんで、こんなことになったのか思い返せば自分の準備不足。

金のないことで急くかのように魔物や魔獣を狩りに行ったのが間違いだったことに今更気付く。

行くのなら、帰り道を記憶できるようにするべきだったと…猛烈に後悔していた。


安直に行動した自分に静也は苛立った。

しかしこんな時ですら魔獣や魔物は襲ってくる。

静也のいらだちは爆発寸前だった。そんな時に襲ってきたのは猿のような魔獣だった。

猿の魔獣はそんなのお構いなしで襲う。

猿は静也に気づいた。普通じゃない。まさに鬼の形相で歯ぎしりをしている。


 ≪スキル〈バーサークモード・傘〉を習得≫


そのアナウンスが聞こえた瞬間、静也の目が充血し、獣のような荒い息をはく。

まるでとり憑かれたかのように。

これがスキル〈バーサークモード〉と呼ばれる状態。

このスキルの発動条件、取得条件には共通点がある。それは『感情が高まって爆発したときに起こる』というところだ。

発動は、先ほど述べたものと、任意発動の両方がある。

しかし、スキル名に傘が入っていることに今の静也には考えるだけの理性は今はない。

静也は傘を逆手にもち、傘の石突で猿の眼を深々と突き刺した。


≪スキル〈傘突き〉を習得、それに伴い傘変形〈アンブレランスモード〉を使用可能≫


目を失うだけ命を落とすまでにいかない。

猿からは耳をふさぎたくなるようなつん刺すような叫び声。

そのアナウンスも叫び声も今の静也は聞こえていない。

しかし無意識中に傘変形〈アンブレランスモード〉を使用した。

傘の生地が固いものへと変わり生地が親骨にちゃんと張る形になる。だから傘を開くことができない。これが〈アンブレランスモード〉の代償。


石突は鋭利になりまさにランスといってもいい代物になった。

そしてまた猿に突き刺した。

じわじわと嬲り殺しにする。

猿の甲高い声が森の中に響く。


鬱陶しく感じたのか傘で頭を刺した。

刺したあとはなくなっており、顔面に大きな穴が開いて鮮血がだくだくと流れていたがすぐさま猿は消えた。

先ほどからの猿の声を聞いた他の魔獣共がわらわらと湧いてきた。

傘がもう一本召喚する。またもや無意識中にスキル〈傘〉を使用した。

もう一本も〈アンブレランスモード〉へ変形させる。両手ランス状態。


≪スキル〈双槍使い・傘〉を習得≫


またも無意識中に傘をふるう。

まさに神がかった動きでだ。

周りの魔獣共を討伐するのに1分もかからなかった。

鬼の形相だったはずの男が今度は笑いながら殺しにかかるのだから襲ってくる魔獣や魔物もさすがに恐怖を感じざるを得なかった。

周りの魔獣共を討伐し終えると何を思ったのか通常の長傘を召喚し地面に突き立てる。

そして傘の倒れた方向へ走った。律儀に傘を拾って。

何の意味があるのか傍から見ればわからないしどう考えてもそんなことはしないだろう。

しかし、その行為には意味があった。


≪スキル〈位置把握・傘〉を習得≫


なぜ習得条件がわかったのか、誰もわかるまい。

静也はバーサーク状態で走っていた。まるで意志があるかのようにその方向にまっすぐと進んでいた。

走ること十数分、樹海を抜けたところで静也のバーサーク状態が解ける。


≪システム〈■■■■〉を取得≫


そこでやっと静也の意識がはっきりする。

静也からすると、樹海の中で意識を失い気付いたら樹海の外にいる、という状態になっている。

無事に元居た町が見えるところに帰ってこれていることに安心したが、腑に落ちなかった。


(無事に帰ってこれたのはよかった。だけど運がよかっただけだ。もしかすると死んでいたかもしれない。素直に喜べない。意識がなかった時の記憶もないし…)



もう二度と、こんな目には合わないと、そして安全に穏便に生活することを心に決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ