厄介事は嫌でもよってくる。
今回は少し長めです。
宿で一泊出来ることに安心していた。
だが、貨幣の価値も相場の値段も分からないのですぐに不安になった。
こんなことを相談できるのはエリナかサラ位だ。
後ついでに門番のデカルト。
そんなことを考えていると腹の虫が鳴る。
思えば、ここに来てから何も食べていなかったので無理もない。
宿で売店かなにかやってないかと思ったが貨幣の価値が分からないので、部屋に置いてあるサービスの丸いパンと水を飲み、腹を膨らまし、寝て明日に備える。
二日目の朝。
日は既に出ていた。時間のことも知らなかった。
これも教えてもらうことにした。
本当に受付嬢に迷惑をかけるだろうな…と考えたが、放っておくのもいけないので早めに報告し連絡することがあればして、相談をする。
と、一般人の当たり前とやらを自己暗示のように自分に言い聞かせていた。
トイレっぽいところで用を足し、洗面台っぽいので顔を洗おうとするのだがデザインが特殊すぎて分からず3分ほど格闘していた。することを終わらしたら、受付の人に礼をして組合に向かった。
(本当に受付の人、すいませんでした…それとありがとうございます。)
到着するまで、ずっと感謝の念を送っていた。
組合に着いた時もう既に中からは喧騒が聞こえてくる。
もう既に平常運転中。
カウンターへ向かい昨日言っていた講習を受けにいく。
「おはようございますエリナさん。昨日言っていた講習を受けに来ました。」
「おはようございますシズヤさん。二階へ行っててください。講師の先生を呼びますので。」
講習の内容も知らないけど…まぁいいか。
二階に向かうとまた一風変わった景色となった。
ガラスケースに牙や爪、眼球に毛皮といったものが等間隔に掲示されており、立て札には『この掲示物に触るべからず』とまで念押しに書いてあった。
(この掲示物はなんだ?魔獣や魔物のものか?)
と考えていると後ろから声がかかる。
「これらは災害級魔獣や魔物のものだ。珍しいだろう。」
振り返り姿を見るとそこにはお年頃の??お爺さんがいた。
誰だろうと思ったが返事を返すのが先だと思い返事をする。
「はい、ですが、災害級とは一体なんですか?」
「ほほぉ、知らんのかい、国1つ滅ぼしかねない力量や魔力を持つ魔物や魔獣の総称じゃ」
と機嫌が良さそうに答えた。
「成る程…そんな恐ろしい奴等には遇いたくないですね…」
「…そうじゃろう?…じゃが…お主」
「シズヤさん。準備ができたので…って元老?!」
エリナが驚くのも無理もない。
この老人こそ組合のトップなのだからだ。
しかも、元老の顔を見たことがある人は組合の中では、そうそういないが特別な機会でしか会えないのだとか。
そんな御方が登録したての者に話しているのを見るとどうしたのかと疑いたくもなるものだ。
「おぉー、お主は確かエリナ君だったかな?」
「は、はい、元老。しかしどうしてシズヤさんとお話を?」
「なに、掲示物を物珍しそうに眺めておったのでな。」
はぁ、と生返事を返すがそれだけで会うのはおかしいと思った。
それは依頼主の依頼を請け負う際、報酬などを取り決めするのだが、二階のいくつもの相談室から、依頼人がお帰りの際に掲示物を物珍しそうに見ることがあっても、今回のように元老は現れたことがなかったので、元老の言うことに釈然としなかった。
「とりあえずシズヤさん。講義室で講習を行ってくださいませ。」
「なら、儂もいこうかの。」
えっ?!とエリナがまた驚嘆の声をあげる。
講義室には長机が沢山設置されていた。
黒板の前にはダンがいた。
そのダンも目を見開き元老が姿を表していることに驚きを隠せなかった。
「じゃ、じゃぁ、講習を始めるぞ…」
「お願いします」「お願いするぞい」
ダンはひきつった笑顔を見せながら講習を始める。
三時間ほど聞かされた内容は、手に負えない魔物や魔獣と遭遇した場合の対処といった冒険者の原則事項、冒険者同士のいざこざの処罰など処罰行為の例と罰則などだった。
他にも技術講習、戦術講習などあるようで、暇になったら行ってみようと思った。
「ところでお名前をお聞きしたいのですが構いませんか?」
「おー、そうじゃったな、儂は『ロドム』。気軽にロド爺と呼んでくれ」
「ありがとうございます。自分は水鏡 静也です。昨日冒険者になりました。」
「ほーぅ、期待の新星じゃなぁ」
「そんな恐れ多い、自分は右も左も分からない新参者ですからそんな期待されてもご期待に添えませんよ。」
「自分を過小評価するのは慢心しなくて良いのじゃが、少しは自信を持つことじゃ。」
「そう、ですか…、ありがとうございます。親切に教えていただいて。」
と言って静也はロドムと別れた。
―――ロドムside―――
ロドムは静也を見送ると真剣な表情で考え始めた。
(あやつ、一体何者なんじゃ?体から溢れんばかりの生命力と魔力…かと思ったら今度は急にピタッと止んだり…コントロールがまったく出来ておらん…もし、コントロールができれば…きっと白金級冒険者を越えるであろう…)
ロドムは元は白金級冒険者であった。
それ故経験が多く培われた直感は既に超能力的な部類へと到達しスキル<超直感>の取得に成功している。
冒険者をしている際、更にスキル<魔力眼>とスキル<生命眼>の取得にも成功していた。
通常、上級冒険者は生命力操作か魔力操作を持っているものだ。
それなのにコントロールも出来ていない一人の者が、元白金級冒険者にまで到達しかねない程のモノを持っていた。
それ故に期待の新星と素直に褒めた。
しかし彼は、照れるところか恐れ多いとまで自分を過小評価しているときた。
ロドムの脳裏にはある1つの考えがよぎっていた。
謎多き古代文明『インタクロ文明』の使者なのではと…
その文明人は莫大な魔力を所有しており、人知を越える魔法を使える。それに加えとてつもない身体能力を持つという。
ロドムは最初は信じてはいなかったが、古代文明には接点があった。
それ故、インタクロ文明の文明人があの彼なのでは?と思ってしまった。
確証はないがそうではないのかと思ってしまっている。
ロドムのインダクロ文明人?観察が始まった。