Happy End
「おお!生まれたか!」
父親は生まれたばかりの赤ん坊を抱き、喜びの表情を浮かべた。
「さっそく名前を考えないとな……」
赤ん坊を降ろし、その場をグルグル回り出す父親。
「そうだ! トンヌラ はどうだろう!」
父親がドヤ顔で母親の顔を見る。
「 却下!! 」
母親は父親の発言を一蹴すると、赤ん坊を抱き頭を撫でた。
「あなたは名付けのセンスが無いのは、昔から変わらないのね」
母親が笑う――
――5年後――
「とーちゃん!」
「ん?なんだい?」
「何してるの?」
「剣の稽古さ!たまにはやらないとね!」
一心不乱に木刀を振る父親。
「ふーん、とーちゃん何だか勇者みたいだね」
「そうか!?格好良いか!?」
「お腹出てなければね……」
「我が子ながら厳しいぜ……」
――更に5年後――
「とーちゃん……」
「息子よ、何も言うな。男にはやらねばならぬ時もある」
「頭焦げてるよ」
「息子よ、流石に火を吹くのは反則だと思わないか?」
「僕も一緒に母ちゃんに謝ってあげるからさ。元気出してよ」
「はは、すまんな……」
「で?今度は何やったの?」
「カジノ通いがバレた」
「とーちゃんカジノ弱いからなぁ」
「……ほっとけ」
――更に5年後――
それは息子が16歳になる
誕生日の事であった。
「おきなさい。おきなさい。私の可愛い息子よ……」
「今日はお城へ行く日でしょう?この日の為に母さんはお前を勇敢な男の子に育てたつもりです」
「さあ、母さんと父さんに着いてきなさい」
「よく来た勇敢なる勇者の息子よ!魔王亡き今、世界は平和だが未だに魔物の残党が見られる。街の酒場で仲間を見つけ、これで装備を整えるがよかろう!では、また会おう。息子よ!」
「とーちゃん……」
「ん、どうした?」
「50Gと棍棒1つしかくれないってどういう事?」
「昔は鋼の剣と鉄の鎧をくれたが、装備頼りでLv上げを怠る奴が増えて止めたんだ」
「大丈夫よ、いざとなったら誰かさんのお下がりがあるわ!」
「おい!いきなり最強装備を渡すな!」
「行っちゃったわね……」
「ああ……」
「大丈夫かしら?」
「俺とお前の子だ。きっと大丈夫だろう」
「だから心配なんじゃない……」
「お、おう……」
「何だか昔を思い出すわね」
「そうだな……」
「あ、1つ息子に言い忘れてた!」
「なぁに?」
「袋に名前はつけるなよ……って」
――End――
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