ケツと賢者アナール
勇者一行を乗せた小型ジェット機は魔界を爆走し、魔王城へ激突した。
「あいててててて……」
勇者たちが辺りを見渡すと、1人の老人が鎖で壁に繋がれていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
僧侶が駆け寄り、戦士が鎖を剣で断ち切った。
「あ、ああ……ありがとう。私の名は賢者アナール。かつては地上にいたが、次元の狭間に落ちてしまい捕まったのじゃ」
白髪のカッパ頭に前歯が抜けた賢者の顔は、可哀想だが笑いそうになった。
「ぷ!……で、賢者様は何故魔王城に?」
「これごと、ここへ幽閉されたのじゃ」
賢者が懐から小さな白い玉を取り出した。
「勇者よ。そなたは命名神の呪いにかかっているのじゃろ?」
その言葉に黙ってコクコクと頷く勇者。
「これを呪われた場所に入れれば、呪いは解ける」
魔法使いと僧侶の顔色が僅かに変わる。
「なぜこれを俺に?」
「魔王を封印すれば、1000年以上は平和が訪れる。しかし、やはり誰かの命を犠牲にする事は間違っている気がしてな」
「……言っている意味がよく分からないが……」
眉をひそめる勇者の後ろで黙って首を振る魔法使い。それを見て何かを察する賢者。
「いや、気にしなくて良い。伝説の武具があればきっと魔王は倒せるはずじゃ……」
「ああ、ちょっくら魔王を倒してくるよ」
玉を受け取り、勇者は振り向き城の奥へ進んでいった。慌てて追いかける戦士。深くお辞儀をし、後を追う僧侶。魔法使いは懐から魔女から新たに貰った1枚の羽を取り出した。
「もう一人呪いを解いて欲しい女性がいるの」
賢者はしばらく魔法使いを見つめ「ああ、分かった」とだけ返事をした。賢者の表情はどこか遠くへいっているかの様に心ここにあらずといった感じだった。
城の最奥の扉まで到着した勇者一行。扉の中からはかつてない程のオーラが溢れていた。
「よし!皆準備はいいな!!」
いつになく真面目な表情の勇者。
「いくでござる!」
戦士の足は震えていた。
「こんな凄いオーラ……勝てるの……?」
戦う前から尻込みする僧侶。
「泣いても笑っても最後ね……」
魔法使いは杖を強く握りしめた。
「よし! 行くぞ!!!!」
勇者は魔王への扉を大きく開いた―――!!
いよいよ次回 最終決戦!!




