ケツの故郷 後編
「俺の店が……」
酒場は地獄絵図と化していた。
顔色が紫だったり青だったりのオッサン達が泡を吹いて倒れており、じゃんけんで負けたオッサンが涙ながらに勇者のケツに手を入れ、キノコを食べる光景は悲惨な物であった……。
「 魔物が出たぞー!!!! 」
突如外から叫び声がした。僧侶が回復魔法で酔いを冷まし、急いで外へ駆け出した!
外は火の手が上がっており、村の中で魔物が暴れていた。火を消す者、魔物と戦う者、逃げ出す者。酔いつぶれている者。村は混乱に陥っていた!
「二手に分かれよう!僧侶と戦士はそっちを頼む!」
「分かったでござる!!」
戦士と僧侶が村の反対側へと走っていく。
「うおーーー!!」
魔物と互角に戦う村人たち。いつも思うが不思議な光景だ。勇者達も加勢し、次々魔物を退治していく。
「出たな勇者ども!!」
巨大な鉄球を振り回す大男が現れた!
「こいつがボスのようだな。魔法使い!一瞬で終わらせるぞ!」
「言われなくてもそうするよ!」
魔法使いが魔法を唱えようとした瞬間、大男の封印魔法が先手を取った。
「しまった!!」
魔法を封印された魔法使い。
「くそっ!脳筋のクセに姑息な事を!」
勇者は魔法使いを庇う様に戦うが、徐々に追い詰められる。
「戦士と僧侶を呼んでくる!」
「ダメだ!俺の後ろに居ろ!!」
勇者は守備範囲から離れた魔法使いが鉄球の餌食になると考えた。
「がはは!隙あり!!」
余所見をした勇者。敵の鉄球が勇者の身体を捉え、岩壁に激突させた!
そのまま動かなくなる勇者。
「はっはっは!他愛も無い!次はお前の番だ!!」
鉄球が魔法使いに襲いかかる。
「……よくも」
俯いたままの魔法使い。
「死ねーー!」
鉄球が魔法使いの目の前に迫った―――
鉄球が地面にめり込み、辺りは砂埃に包まれる。
「ぐふふふ……」
ボスは勝利を確信していた。
砂埃が晴れ、ボスが目にしたのは懐に潜り込んでいた魔法使いだった!
魔法使いは腰を深く落とし、真っ直ぐに敵を突いた!
ドゴォォン!! と豪快な音が鳴り、敵の胴体に魔法使いの正拳突きが突き刺さった。
「な……ばか、な……」
ボスはそのまま倒れた。
それを見た魔物達は一目散に逃げていく。
「大丈夫ですか!!」
僧侶と戦士が駆け寄り、倒れた勇者を手当てする。
「何とかね」
首を鳴らし、勇者を酒場へと運んだ。
酒場では再び酒盛りが行われていた。まだ、何人かキノコ食ったまま倒れたままだけど……。
「いやぁ、お陰で怪我人も無く助かりました。どうぞ好きなだけ食べていって下さい」
村人たちから手厚いもてなしを受ける戦士と僧侶。
勇者は運ばれたベッドでそのまま眠っていた……。
「少し借りるわね」
部屋から出て行く魔法使いの手には、羽が握られていた……。




