ケツの銅像
「はい、到着しましたよ」
魔女の移動魔法で城の入り口まで連れてこられた勇者。
「すまない、ありがとう」
柄にもなく素直にお礼を言う勇者。
その時、はぐれた戦士、魔法使い、僧侶が城の入り口に到着した。
「あ、居た居た!」
魔法使いがこちらに気付き、手を振る。戦士は相変わらず無表情で、僧侶から舌打ちが聞こえたのは気のせいだろう……。
皆と合流する勇者と魔女。
「こちらの方は?」
勇者の安否や城に早く着いた事情より、魔女が気になる魔法使い。
「ふふ、初めまして。あたしはこちらの勇者様をお届けしたただの魔女よ」
そそくさーっと挨拶する魔女。
「魔女」と言っている時点でただのでは済まない気がするが……。
「もし、またお会いしたくなりましたら、この羽をお使い下さいませ」
と1枚の羽を勇者に手渡す魔女。
「あ、ありがとう。(さっき出した羽かな?)」
すぐに羽の臭いを嗅ぐ勇者。魔女の顔が少し赤くなった。
「では……」
魔女は移動魔法で山の奥へ戻ってしまった。
「何よ、その羽」
魔法使いが不思議そうに尋ねる。
「さ、さあ?」
小屋でのやり取りを聞かれたくない勇者。そそくさと羽をケツの中へと押し込んだ。
「さ、城の中へ入ろうか!」
流れを断ち切る様に、魔法使いの背中を押し、城の中へと入る勇者一行。
城の中は、小デブのオッサンの銅像が所狭しと並んでいた。
「悪趣味だわ〜」
魔法使いが素直な感想を述べる。同調する様に僧侶が間髪入れず頷いた。段々と遠慮が無くなっている。
「いや〜、よく来たよく来た!!」
城の奥から、小デブのオッサンが小走りで出迎えくれた。
「王、久しぶりです」
勇者が挨拶を交わす。
「え゛!?」って感じの顔をする魔法使い。
「んん〜、しばらく見ない間にまた成長した様じゃのぅ!」
勇者の肩をバンバンを叩く王様。
「よし!記念にわしの銅像を1つやろう!!」
その辺から小さめの銅像を取り出す王様。勇者の顔が引きつる。
「お、王様。銅像なら前にも頂きましたよ……。(前に貰った銅像もまだケツにあるのに……)」
それとなく断る勇者。
「大丈夫じゃ。像ならまだまだ沢山ある!!」
満面の笑みで銅像を渡す王様。
「は、はい。ありがたく頂戴致します」
と、頂いた銅像をケツに入れる勇者。
「なんと!! 勇者よ ケツに物を入れられるのか!!?? 」
いつもの癖でケツに入れてしまった勇者。
「やっちまったぁ〜」って顔で後ろ見る。無表情の戦士、笑顔の魔法使い、軽蔑の眼差しの僧侶。
「ゆ、勇者よ!! もっとケツに像を入れてくれ!!」
迫真の顔で訳の分からぬお願いをする王様。
「へ?」
てっきり怒られるかと思った勇者は、軽く肩すかしを喰らった。
ドドドドっと銅像を持ってくる王様。勇者のケツに次々と銅像が押し込められる。
「いったいどうなっておるんじゃ お主のケツは?」
勇者のケツを覗きこむ王様。その瞬間、突然王様の足元が滑った!
スポッ!!
なんと王様が勇者のケツに入ってしまった!!
「ん?」
気付いていない勇者。
「あれ?王様は?」
辺りを見渡す勇者。何処を探しても王様は居ない。
「急用が出来たって、どこかへ行ったわよ。もう帰っていいってさ」
魔法使いがとっさに嘘をついた。
「そっか。じゃあ銅像出して帰ろうか!」
ちょっと嬉しそうな勇者。
「あれ?あれれ?」
突如困惑する勇者。
「ちょっと、どうしたのよ!早くしてよ!」
さっさと帰りたい魔法使いは勇者を急かした。
「ケツから出した銅像が捨てられないんだ!!」
両手に持った銅像は、どんなに手をブンブン振っても勇者の手を離れずにいる。
[ それを捨てるなんて とんでもない !! ]
「うわ〜っ!! なんだこれ!!」
焦る勇者。笑い転げる魔法使い。
「大事な物扱いなんでしょwww」
笑い過ぎて苦しい魔法使い。
「ひーーーーっ!!!」
ケツに銅像が10近く入っている勇者(あと王様も)。出した銅像をケツに戻し、泣く泣く城を後にした……。
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