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創造神に成りきってみた結果→

大体夜に更新していきます。よろしくお願いしますm_ _m

 この世は誰かに仕組まれている。そう疑念を持ったのは俺が6歳の頃だった。

 

 探していたものが諦めた頃に出てくる。楽しみにしていたゲームソフトだけが延期する。町内会の懸賞でどうでもいい2等が当たって欲しかった3等が外れる。

 

 明らかに運の悪さで片付けられないことが1日の内に連続した時、思ったのだ。


 幸運と欲望が負の相関にある。


 何者かがこの世を操作している。


 その日を境に、俺は何者かのあぶり出しを始めた。何者かは創造神と名付けた。


 まず幼い俺がやったのは呼びかけあぶり出しというものだ。


 呼びかけあぶり出しとは、何も居ない空間に「そこに居るのは分かっている。出てきてください」と呼びかけるシンプルなあぶり出し行為だ。


 これはまぁ短絡的な発想だけあって効果はなかった。幼い俺にはこれが限界だった。


 少し歳を取って、もう少し知恵を絞ってみた。呼びかける、といった行為がもしかしたら悪いのかもしれない。創造神ともあろう存在ならば、俺の考えていることを見透かせるはずだ。それも知らないと言わんばかりに声をかけていたら、本当は創造神の存在を知覚していないのがバレバレだ。


 ということで今度は「そこに居るのは分かっています。出てきてください」と念じることにした。


そしてこれが10年後のあぶり出し方法の基礎を築くことになる。


 紆余曲折を経て10年後。


俺は、創造神に成りきっていた。


途中経過は列挙すると長いので割愛する。とにかく様々な試行錯誤の末、創造神は俺の呼びかけに応じる気はないと結論付けた。


なら、創造神から呼びかけてくるように方針に変える他ない。


 そこで考えた。俺の考えていることを見透かせる創造神に対して、まるで創造神の関係者と錯覚させるほど創造神っぽい思考を維持すれば、創造神は不審に思って接触してくるのでは、と。


 そういうわけで、大きな災害が起こったら「ふむ。今回の人口調整はこんなもんか」とか、犯罪者が捕まれば「あとはヒューマンズ側の仕事だ。任せたぞ」とか、まるで俺がこの世を自治しているかのような意味深な思考を始めた。 


 これは一瞬たりとも気を抜くことが出来なかった。創造神に不審がられるには、『自分が創造神に興味を持ってもらうために意味深な思考をしている』という事実すらも意識してはいけないのである。本当に、深層意識から全て成りきる必要があったのだ。


 これが、かなり困難を極めた。そして苦痛だった。


 自分の意識とか感情というものを完全にコントロールするのは、並大抵な所業ではなかった。やってみると分かると思う。


脳みそというやつは、隙あらば勝手に曲を流してきたり、自分は創造神ではありませーんと唐突にネタバレをしてきたり、時には「おげげげげげげパオーンパオーンwwwwwwww」などと意味不明なことを叫びだす。創造神ともあろう存在は絶対にそんなことを考えるはずがないので必死に抑えようとするが、抑えようとするほど事態は悪化した。俺はこれらを、音楽ループ現象、あまのじゃく〜自分いじめ現象〜、おげげパオパオ現象とそれぞれ名付けることにした。 


 これら三現象に俺は長い間苦しめられた。


完全に克服できるようになった時には、俺は四十を超えていたと言えば苦労は分かってくれるだろう。


ちなみに補足しておくけど、俺の外面は至って平凡な人生だった。普通に学生生活を過ごし、社会人となり、独身ではあるが人並みの生活を送った。


これはあくまで創造神との勝負だ。ヒューマンズから平凡に見られようがそこは問題じゃない。



◇◇◇◇



 そしてついにその時はやってきた。俺が四十八の時だった。


 遠い国でかなり大きな地震があって、たくさんの人が死んだ。


いつものように自治を独りごちる。今回は「ふむ、もう少し人口を減らすべきだったかなぁ(汗)」とか言ってみる。


すると翌日にもう一度同じ場所で大地震が起こってしまった。またたくさんの人が死んだ。


 その日の0時ちょうどに、俺はこの世から消えた。徐々に姿が薄れて最後には光子となって霧散する、みたいな演出はなく、突然スイッチがOFFになったみたいにパタリと消えた。

 

目の前の場面が切り替わった後の俺は、おおよそ三十年ぶりに常人の思考になってしまった。ならざるを得なかった。


えっ……なにこれ。


 まず身体が消失していた。


次に視界がおかしかった。全天カメラみたいだった。360度あらゆる方向が驚くことに一つの視野に収まっている。


 上方では宇宙の星々が映っているみたいな球が、ギターの弦みたいに並列する何本もの光の線に沿って並び動いている。

 

 下方では宇宙らしき景色の映る一つの平面が広がっていて、沸騰したマグマみたいにポコポコと、そこから気泡のように宇宙色の球が浮かんでくる。


 その他の景色は黒だった。


 正面にだけ、白く輝くものがあった。


 もしかしてあれは創造神……? やはり居たのか? ついにあぶり出しに成功したのか……?


 あ、あのぅ創造神ですか?


 思わず問うてみる。声が出なかったので念を飛ばした。だが反応はない。


 まぁ、もはやあれが創造神ではなくともいい。この空間の存在が、既に世界の非自然性ないしは傀儡性を裏付けていた。俺の想像通りこの世は、仕組まれたものだった! はぁ、ついにやったぞ……。


 と、俺は人間の姿を失ってようやく人間らしい思考を取り戻し、長年の苦労を噛みしめる……間すらなく、直後、無音の中で、大量の情報が俺に流れ込んできた。


 そして次の瞬間、異世界に居た。


この間およそ十秒。四十年待ち望んだ邂逅は十秒で終わった。結局創造神との会話とかはなかった。


 会話とかはなかったのに、俺は俺の使命を知っていた。



 俺はこの時には既に、この世界の秩序を守る者(オーダーキーパー)だった。



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