一歩ずつ、踏み出して行く
すまん寝てたw
テスト期間が終わりましたから、安定した投稿ができそうです。
「はぁ〜」
僕は今、カールフィンデン侯爵家の地下室ーー監禁部屋にいる。
監禁部屋といっても真っ暗な空間で寝床である布が敷かれているのみの用意されている罪人監禁室とは違い、カールフィンデン侯爵家の地下室はベッドもランプも少ないものの調度品も少々ある。
まぁ要するにあまり不自由は無かったということだ。
しかしそのおかげで僕がこの部屋にいる理由となった、アイナが『聖女』認定された事に対する慰めにはなっていないが、な。
でも少しだけ気持ちは落ち着いたと思う。
なんというだろうか……悪夢を見ていたことが現実であったのだと割り切れるようになった感じだ。
ちなみにこの部屋に僕が監禁されてから5日経ち、『女神アトナ』への冒涜罪としての監禁期間は過ぎようとしていた。
一般的に『神々への冒涜』というのはもっと長い期間の罪に問われるのだが、フィナ、モーナ、そしてアイナを失った僕に対するせめてもの慰めで期間が短くなったのであろう。
部屋に持ってこされる食事も悪いものではなく、『監禁』というより『謹慎』という感覚の方が強かった。
フィナは4ヶ月、モーナは1ヶ月足らずで『例の写真』が来た。
あの写真は不思議だ。
モーナの写真では、勇者、モーナ、フィナという感じで、ベッドの上で三人になっていた。
みんな注意して見なかったようだが、その写真にはとある矛盾があった。
その矛盾とはーー『鏡』である。
写真を撮る道具というのは中に光のパターンを記憶する魔石が入っており、レンズと呼ばれる部分を通して光がカメラ本体の中に入り込み魔石にパターン入力、その魔石を使っていて紙やガラスなどに光を元にした色を着色させる魔道具を使えば、写真は出来上がる。
魔石は魔力に反応し光のパターンを記憶する。
そのため使用者はシャッターを切る時に指から魔力を持っていかれるが、カメラに内蔵されている魔石が小型のため、消費する魔石も微量で済む。
基本魔石は光のパターンを記憶するのは一つにつき一枚だが、魔石さえ交換すればカメラ自体は繰り返し何度でも使える。
ただその魔石が値を張るため、侯爵である我が家も写真を撮るというイベントなどそれこそ家族写真などの記念写真だけだろう。
話が逸れたな……
それで、写真というのは魔石の光のパターンを忠実に再現しているため、写真は『真実の記録』とも言われ裁判などでも有効な証拠とされている。
だがよく見てみると……鏡に映っていないのだ。
『撮影者』が。
写真にはフィナ、モーナ、勇者が映っていて、その後ろには部屋に設置されていたと思われる鏡があるのだが、この角度だと絶対に映っているはずの撮影者が見当たらないのだ。
そのため、僕の脳裏ではとある可能性がよぎる。
『これら写真は、何者かが意図して作成した、偽物なのではないか』と。
しかし、三歩歩けば魔法と出会うこの世界、上級魔術の一つとして『千里眼』という、遠方の風景を映し出す魔法もある。
だが僕は、この画像が偽物だということにかけてみた。
ーーーーコン、コンーーーー
そう頭の中で自分を言い聞かせていると、外から施錠するタイプの扉からノック音が聞こえた。
「ヴィル様、監禁期間が過ぎました。これよりヴィル様は外出の許可を会得されました」
「………分かったよ」
どうやらウチのメイドさんのようだ。
僕は少し落ち着いた雰囲気でこの監禁部屋から出て行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「少し…落ち着いたようだな」
「はい、父上。この度は、私の一時の逆上により女神アトナ様を冒涜するような行為に出て、非常に申し訳なく存じます」
「いや………いいのだ。……三人も失うのは、流石に人生をまだロクに経験をしておらぬヴィルには辛いであろう。………しかし、ヴィルの婚約者三人が揃って『勇者パーティ』とは……女神様に何か特別なご意思でもあるのだろうか……」
父上が両手を合わせ祈りを捧げる。
アトナ様はこの世界を創り出したとされている7柱の神々の一人で、『正義』を司る神様だ。
それ以外の神々は、『信念』を司る男神レイモン、『人情』を司る女神パーシェル、『祝福』を司る女神シェルティー、『栄光』を司る男神フォルティル、『盟約』を司る男神ルール、そして、『制裁』を司る女神アルナ。
アトナ様を信仰しているのはカールフィンデン領の者達だけのようなもので、一般的な者達は『祝福』を司る女神シェルティーを信仰している傾向が強い。
それ以外であると騎士家の者は『栄光』を司る男神フォルティル、商家の者は『盟約』を司る男神ルールを信仰する、という感じに分かれている。
父上はアトナ様を信仰するが故に、善政をしかれる良き領主様になれたのだと自負していて、それ故もあり今、カールフィンデン領の者はアトナ教になる者が多くなった。
ちなみにその前の代ーー祖父上の代までは『制裁』を司る女神アルナを信仰していたらしいのだが……これはまた別の話だ。
「そうだ。それと……なんだ。こんな時にいうのもどうかとは思うが……『博士』の集会に興味は無いか?」
「へ?」
『博士』は何か特定の事物について研究し続けるのが仕事みたいなもので、この世界において過去に偉業を成し遂げた偉人達の過半数が『博士』であったとされている。
ちなみにそれ以外は過去の魔王討伐における戦争時に活躍した者達だ。
そんな『博士』は決まって数年に一度『博士集会』と呼ばれる集会にて、研究発表会を行うのだ。
その集会は約一週間に渡り、パーティーのような形で『博士』同士の情報交換、交流を深める。
参加資格は『博士』職のある者のみで、その会場というのは毎回ランダムなのだが……
「実は、次の『博士集会』というのが王都で開かれるのだが……どうだね?」
王都に行く。
それは、彼女たちに会うチャンスかもしれない。
でも、会っていいのか?
彼女たちは僕とは遠く離れた存在。
写真が事実であったならば、彼女たちは二度と戻ってこないかもしれない。
でも、僕は真実が知りたい。
だってそれは……
「………行きます」
「………良いのか?」
「『博士』ですし、それに……『婚約者』、ですから」
『知らぬが仏』
こんな言葉、異世界の偉人は良いことを言う。
俺の絶望は、この時に一歩自分から踏み出していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「はあ〜……トオル、今日は訓練に疲れて先に寝ちゃったわね」
「ほんとです!私達は疲れていてもトオル様に毎日抱いて貰いたいというのに!」
「……アンタ、一年前ではやれ不純異性交遊だの言ってなかったかしら?」
「そ、それは……フィナ様とトオル様が目の前であんなに激しくしておりますと……私も一人間なのですし、我慢の限界というものがあります!……それに、今はもう後戻りできませんし……」
「まあ、確かにこれじゃあいつかトオルの子を産むわね」
「そっちの意味ではなく、写真のことなのですが……」
「あら?トオルに抱かれて嬉しくないの?」
「そ!そんなことはございません!私はこの身を一生トオルに捧げるつもりです!」
「ふふ、冗談よ。……それより……ヴィルはもう知ってしまっているのよね」
「……はい、恐らく」
「でも、私はトオルのことを裏切るつもりは無いわ。私も一生、トオルに仕えるつもりよ」
「トオル様は最強の『勇者』です。『魔王』にだって負けません!」
「ええ、そうね。………それと話は変わるけれど」
「んあ"ーーー!ぐずり!ぐずりぐだざい!も"、もう私おがじいでずぅぅぅーーごわれぢゃい"まずぅぅぅ!!!」
「うわー。涙に鼻水に涎で顔がグチャグチャですね。おしっこも漏らしてるし……素直に抱かれないから、こうなるんですよ」
「はい、今注射するからねー」
「ばやぐ!ばやぐぐずり!…………ふぁぁぁぁぁぁ〜〜、あっ…………………………………」
「それにしてもこの薬、一発ですぐ堕ちる強力なやつですがさすがは『聖女』といったところでしょうか」
「そうね。昼間の修業の時の正常さがまるで嘘みたいね」
「ですが所詮は女、いつか絶対にトオルの虜になるはずです」
「全く、自分がこうなってまで思い続けることができるとは、さすがは兄妹の絆といったところね」
「ほんとですよ。『人情』を司る女神パーシェルの加護でもあるのでは無いかというほどに」
「でも、トオル曰く女神はずっと私たちの味方よ。心配しなくても、この子だってすぐトオルに自分から腰を振るわ」
「ふふふ。ええ、その時はヴィルに写真だけでなく生で見せたいほどです。私たちがどれほどトオルを愛しているかを」
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「私も、ですか?」
「うん、ヴィル君もどうやら参加するようだけど」
姉さんとスズネちゃんが会話をしている中、私はこっそりとヴィル君のことを見続けます。
ああ〜〜可愛いなぁ〜〜♡
でも、これから惨劇がこの子を襲うのよね……
でも頑張るのよヴィル君!
お姉ちゃん応援してる!
……一応関係は叔母だけどね……
いや、神には年齢という概念が無いから姉で良いはず!
「………まだ地上には降りてはいけないのでは無いのですか?」
「確かに君の『改造』はまだ終わってはいないけど、ヴィル君との初コンタクトはしておいたほうがいいんじゃ無いかな?ほら、何か影響を与えない限り」
正直に言いますと、私たちはスズネちゃんにとある大切なことを隠しています。
ですがそれをスズネちゃんに教えるのもまだ先。
『地球』の神々からなんとか譲り受けましたが……スズネちゃんの魂を譲って貰う際ハデスさん、ものすごく私と姉さんの胸元をガン見するものですから、ペルセポネちゃんに言いつけてやりましたよ!あの子ヤンデレ妻として有名ですからね!
「ヴィル君に会えるんだよ?」
「行きたいですけど……他の男性が……」
スズネちゃんは男性恐怖症だ。
まぁ仕方ないでしょう。
ハデスさんから譲って貰う際、魂がボロボロでしたもん。
ですがもう心配はないですよ。
これから、貴女を裏切る人なんかいませんから。
「今まで見ていましたが実際にヴィル君に会ったらダメかもしれません。これはヴィル君にあっても大丈夫か否かの実験でもあります」
「……分かりました、そうであれば行かせていただきます」
「おー、さすがは我が妹」
姉さんは世界に影響を与えるなとは言いましたが……
このコンタクトは彼女にとって大きな影響を与える。
そうでしょう?
私は、テーブルの隅に置いた、『人情』を司る女神パーシェルが飲み残した紅茶のカップを見ながら思いました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ヴィル「ん?なにこの『☆』?」
作者「ああ、ここから後書きですよーっていう分かりやすい境界線。とある読者様のご意見で」
ヴィル「へえ、まぁ確かにこれで見たくない人は避けやすくなるよね。あれ?僕ら以外に居ないようだけど」
作者「所詮はこのコーナーオマケだからね。数多くのキャラがメタ発言してたらちょっとコメントが……」
ヴィル「なるほど」
作者「でも時々他にキャラ出したりするから」
ヴィル「まあ、二人だけじゃ寂しいわな」
作者「ということで、これからはこんな感じで行くのでよろしく」