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絶望と同情

R15の限界が分からん

ちょっと性的描写があるかも知れません

ダメだったら直そうと思います

フィナが居なくなって早半年、モーナまでもが『勇者パーティ』の一員となってしまった。


職業は『大魔導師』。

もともと魔法に長けていたモーナにとっては素晴らしすぎる職業だろう。


そして、『職業鑑定』の直前にモーナは言った。


「大丈夫ですよ。例え、私も選ばれてしまっても、私だけは、ヴィル様にこの身を捧げることは定まっていることですから」


明らかに僕のよそよそしい雰囲気を読み取ったモーナ。

このセリフは実は何度も聞いているものだが、何度聞いても安心することはできない。


その原因としては、やはりフィナだ。


彼女とは行ってからもちゃんと手紙のやり取りを行なっていた。

転移魔法のお陰で物輸に全く困らなくなったこのご時世、手紙など早ければ数時間、遅くても一日中には届く。


そのため、フィナとの唯一の講談手段であった手紙のやり取りだが、とある日を境に頻度が減り、最後に手紙が届いたのはもう2ヶ月も前である。


僕は心配になり父上を通し国王様に伺ったところ、日頃の訓練がより厳しくなり、手紙の返事ができないとのことだ。

まぁ、そうだろうな。

フィナはたった数ヶ月居なくなったからといって僕のことを忘れたりなんかしないはず。


そう、そのはずなのだが。


どこか心の中で彼女を思う思いが強くなっている。


ただの勘だが、このまま放置すると取り返しのできないことになる気がしていた。


でも、それは思いすぎであると自分にも言い聞かせた。


僕は昔から心配症で、モーナとの出会いーー僕が王城にて迷子になっているとき、父上に先に置かれて帰られてしまったとか思ってしまった。

その話を聞いたモーナは慎ましく笑い、気づけばその話こそが今のモーナとの関係を構築した元素の一つでは無いだろうかと思った時もあった。


そして、今回もきっとただの思いすぎなのだろう。

そう頭の中にねじ込むように入れていたのだが、とある日ある写真の添付で文なしの封筒が贈られてきた。


名無し。

僕はそのことを疑問に思いつつ封筒を開けたのだが、それが悪夢の始まりであった。


その写真が、夜の王城の一室で、知らない男と裸同士でキスをしていたのだ。


その後すぐ分かったのだが、その男は『勇者』であった。


これを見た僕は数日間は部屋に閉じこもった。

毎日アイナ、モーナ、父上と母上から励ましの言葉をいただいたが、僕を部屋から引き出すことには成功し得なかった。

だが、フィナの両親ーーシェルティン侯爵夫妻からの謝罪の言葉が決め手となり心に傷を負いつつも部屋から出てきた。


シェルティン侯爵夫妻はフィナの写真を見て、まず先に激怒した。


『こんな軽尻女に育てた覚えは無い』

『婚約者なる者が居よう者が例え勇者とあろうと他の異性と戯れるとは断固として娘とは認ません』


シェルティン侯爵の僕の思うことを体現した発言に、僕はシェルティン侯爵夫妻に心を開いたのだと思う。



その頃の僕らは、フィナの写真の衝撃に呆気を取られ、誰一人差出人に興味を持ち得無かった。



僕はフィナのことが好きだ。

この言葉に、嘘偽りは無い。


だが、僕はフィナは恨むことはできない。


この世には、『洗脳魔法』なるものが存在する。

それはその名の通り、対象を洗脳するものであり、本人の意思にそぐわない事をさせることができるという。


今では衰退していたが、『博士』である僕は魔導師の本を読み漁りその魔術に辿り着いた。


『洗脳魔法』は一時的なもので、完全な洗脳を行うにはそれこそ魔王や神にしかできない。

人間が使うものは、タイムリミットがある。

そして、洗脳中に起こった出来事を記憶させるか記憶させないかは術者次第である。


つまり、いつかフィナに問いだし、もし彼女が『やったけど、それは無理矢理』と言った時、『知らないわそんなこと』と言ったときは正しく洗脳魔法にかかっていた時である。


嘘をつく可能性もあったが、母上の職業『巫女』ーー聖職者の一種ーーにある、『嘘発見(フォルスチェッカー)』があれば尋問は容易い。


そういうことで、僕の中でも気持ちの整理がついたというところで、次はモーナの番だ。


もし『勇者パーティ』のメンバーに立て続けに選ばれてしまったらと思うと、食事も喉を通らず、夜中も寝付けない。


「大丈夫ですよ。例え、私も選ばれてしまっても、私だけは、ヴィル様にこの身を捧げることは定まっていることですから」


笑顔で僕を必死で安心付けようとしていたモーナ。

僕は頑張ってその言葉を信じたい気持ちだったが、心配症である僕はどこかモーナを信用出来なかったんだと思う。


そしてそのことをアイナに話すと、


「最低です!お兄ちゃんは最低です!洗脳魔法で操られていたかもしれない。そう言ったのは誰ですか!フィナ姉様を信じきる前にモーナ姉様まで疑ってどうするんですか!」

「………」


アイナの言霊の剣幕が僕の心に容赦なく突き刺さる。


同棲が決まった日にフィナからもらったビンタ。

アイナに抱きつかれ嫉妬したモーナのボディーブロー。

そしてアイナの言霊。


僕は彼女達のことはちゃんと愛している。

だからこそ、彼女達を怒らせたことは少ない。


「ですが……もし、もしですよ。フィナ姉様が本当にお兄ちゃんを裏切り、そしてモーナ姉様までもがそれに乗ってしまったら……私が二人を連れ戻します」


涙目になったアイナ。

いつもは無邪気に笑っているからこそ涙を見ると急に胸が痛み出す。


「それと……私は例え婚約者という立場から去ったとしても、『妹』であることには変わりありませんから……」


アイナにはフィナやモーナとは違う肉体関係がある。

半分の遺伝子こそ別の親から頂いたものだが、僕らは兄妹である。


この関係は、物理的に成り立っているものであり、例えどんな魔法であっても覆ったりしない。


気が付いたら、僕は自分より背が低く、自分よりも生まれが一年以上遅いアイナの胸で泣き崩れていた。


今思えばとっても恥ずかしいことであったが、その頃の僕にとって唯一の心の支えがアイナであった。


だが、今回はフィナの時と違い、モーナからの手紙は一通も来なかった。


そして、モーナがいなくなって数日後、また写真添付の手紙を寄越された。


無言で開封する僕。


中に入っていたのは……


勇者とモーナ、フィナがヤり合う姿を映した写真であった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



そして、回って来てしまったアイナの誕生日。


「う、ひぐっ……」

「…………」

「ひっ……ひっ……」

「アイナ……」

「大丈夫ですお兄ちゃん、必ず、二人を連れ戻して来ますから」


涙を浮かべつつ、最後は僕に対し笑顔を見せてくれた。


『勇者パーティ』に選ばれた者は光栄だ。


だが、僕にとっては、『勇者パーティ』ほど残酷で不公平な職業は無い。


『聖女』となってしまったアイナが僕に向ける笑顔。


その笑顔が、僕にとっては劇物の何物でもない。


歯を噛み締め、拳を握った僕は、『女神アトナ像』に殴りかかる。


「くそ!くそ!どうしてなんだよ!神さまぁぁぁぁぁぁ!!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



『はん♡あん♡あぁぁぁぁぁん♡!!』

『トオルゥ♡もっとぉぉぉぉ!モーナだけじゃなくて、わたしにもぉ〜!』

『あぁぁぁぁぁ♡♡♡!!!モーナ姉様!フィナ姉様!私、もうダメですぅぅぅーー♡」


私ーー瀬藤鈴音は、目の前に映し出されていた光景に多くの感情を抱いた。


『激怒』ーー男の方、『勇者トオル』に対し、自分を捨てた上で、他の女、しかも三人と激しくヤり合っていることに。


『憎悪』ーー三人の女、一人は時間をかけて真実の愛に気が付いたまでは許す。

しかし婚約者が居よう立場でありながらいとも簡単に身体を許してしまったこと、そしてその婚約者に対し何も言っていないことに。

もう一人の女、来る直前まで婚約者に安心を促す言葉を並べていたにもかかわらず、今ではトオルに腰を振っていることに。

王女という立場からして、性的な行為について厭離してはいたが、目の前での激しい行為に我慢できず、ものの一瞬で虜となってしまった。

我慢すれば婚約者ともいずれできたであろうに、所詮はビッチか、そう思った。

そして最後の女。

今朝方まで兄であり婚約者の唯一の心の支えになっていたにも関わらず、それをやすやすと裏切り今ではイキまくっていることに。

もちろん最初は必死に他二人に勧告をしていた。

だが二人により薬を盛られた彼女も今はトオルのものに早変わり。

こんなにすぐ人というのは変われるのかと苦笑してしまう。


『恐怖』ーー男そのもの、そして男と関係を持った女達を見て数ヶ月前のトラウマが蘇ってしまったこと。

地球とこの空間、そしてこの異世界は時間の動きが違うようで、トオルのすぐ後に私が死んでこちらに来たようだそうだが、私は男たちに一ヶ月の監禁生活、そして六ヶ月に渡る肉体改造を施され、死に至った。

思いも出したくない。

監禁され、毎日男性と関係を持たされるまではただの屈辱で済んだ。

ある日飽きられ薬物だのなんだのを私の身体に打ち込まれ、私の身体は15の人間の女とは思えないほどにもなっていた。

途中から意識が無かったが、死んだ瞬間は頭がクリアになり、去り際に見た自分の姿は実体のない要するに霊体になった私が自分の姿に吐き気を催した程だ。

あのあと出会ったのがアトナ様とアルナ様だけで本当に良かった。

もし男に会っていたら霊体のままもう一度死ねる自信があった。

時間が経ち落ち着いた私であるからこそ物越しであるからこの映像を見ることができており、目の前に男がいたら気絶するか自我を無くし容赦無く殴り殺したであろう。


そして『悲哀』ーー愛する者達に裏切られた少年に対する同情心。

男性恐怖症の私でも彼にだけは心を許してしまう。

彼に過去の自分を映し出してしまう。

彼は婚約者達を今でも信じているのだろうか?

否。彼はもう信用しないだろう。

一度にあらず二度までも、そして彼はまだ知らないが彼の妹までも、彼の元を去ってしまった。

このことを知ったら彼は壊れてしまうだろう。

彼は今とある地下室にて一夜を過ごそうとしていた。

彼は聖堂のアトナ像を破壊しようとしたところを拘束され今彼は監禁室にいる。

拳は痛々しく傷まみれ。

青くなっているところもあり、骨折してもなお殴り続けたのだろう。


私だけが彼の心情を知っている。

この半年間、ずっとここで彼のことを見て来た。

もう彼とは関係の無い人間と言われても無理だろう。


私だけが彼の元に寄り添ってあげられる。

私の屈辱ながら元彼のせいで彼の三人の婚約者が奪われてしまった。

私は、何故だか自分にも罪悪感を覚えてしまった。

その罪悪感は、日に日に膨れ上がっていき、彼に物凄く寄り添ってあげたかった。


私は彼のことが好きなのかもしれない。

裏切られた少年ヴィル。

裏切られた少女鈴音。

どこかシンパシーを感じてしまったのだろう。

同類を見つけた時というのは実に心が動くものだ。

そのため、彼と会ったら思うがままに甘やかそうと思った。


そして、先程まで自分の像を殴られていたアトナ様は、無表情で監禁されているヴィルのことを見つめている。


アルナ様は、自分の息子の無残さに耐え切れず酒に走っている。


「ふぁ〜〜ん。ボクのヴィル君が、がわいぞうだよぉぉぉ」


急にシリアスから一転してしまったが、基本人の死さえも笑う魔神(アルナ)だ。泣くことは滅多に無い。しかし実の息子にはこのようになっている。


そういえばこの間知ったが『職業鑑定』はアトナ様の信託などではなく、あくまで適した職業として受ける者に自然と気づかせるものであり、実際アトナ様は関係していないそうだ。

ヴィルはアトナ様の像を殴っていたが、それに対し何も反応しないアトナ様も、少なからず哀れみの感情を持っているのであろう。


だが、まだダメだ。

私が、私達が動くのはもう少し後。


トオルが、『勇者パーティ』がこの世の害悪だと判断された時だ。

















それまで、待っててね、ヴィル。










作者「結構な長文になったためまた一日、というか数時間遅れました」


ヴィル「3時てww大丈夫?」


作者「大丈夫だ。問題ない」


鈴音「さてこれからますます深刻になって行きますよ」


アイナ「あれ⁉︎これから私達ってもうお役御免ですか⁉︎」


作者「さあ?どうだろうね」


フィナ「そういえばこの後書き、賛否両論みたいよ」


モーナ「そんなメタ発言が多発してますからねー」


作者「なんと言われようと、俺は辞めるつもりはないぞ!」


アトナ「皆さま、お気を悪くされたのなら愚作者に変わりましてお詫び申し上げます」


アルナ「あーあ、女の子にあたまさげさせて、恥ずかしく無いのかい?」


作者「女の()………?」


アトナ&アルナ「「あん?」」


作者「いえすみません」

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