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騎士王フィナ

「………は?」


彼女ーーフィナが去って数刻したのちに、僕はやっと意識が戻る。


先ほどのは何か白昼夢を見ていたのだろう、そう自己暗示をかける。

そして、その真偽を確かめるべく大聖堂の扉を開ける。


中は、相変わらずステンドグラスから光が差し込み、奥には女神アトナ像がその優美ながら神々しい姿を見せている。


ただ、中には人っ子一人とて居らず、どこかもの寂しさを感じられるものであった。


「……いない……いやあたりまえか?」


どうやら、先ほどのは白昼夢ではなかったようだ。


『ヴィル、ごめん。私……王都まで行ってくる』


彼女は、確かそう言っていたはず。

なぜなのか分からないが、僕はこの言葉によく分からない危惧を感じていた。


転移魔法を使ったならば、彼女の身には問題はない。

ましてや、フィナは剣術に長けていて、仮にゴブリンの集団やオークが襲って来たとしてもある程度ならば対処できるであろう。


僕は『博士』だ。

何事においても、感情に身をまかせるだけではなく、頭脳の中で考察をし、冷静な判断を下すべきである。


しかし、フィナがいなくなったこの現状に僕は少なからず焦燥を感じていた。


「とりあえず……帰ってみるか」


このままここで突っ立ってても意味が無い。

そう判断した僕は、馬車に乗り込んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「さて、それでは、『職業鑑定』を行わせていただきます」


目の前には聖職者の人がいる。

私ーーフィナ・シェルティンは、本日成人となる15歳の誕生日を迎え、婚約者のヴィル・カールフィンデンの見送りのもと、『職業鑑定』を受けようとしていた。


「フィナ様、女神アトナ像(・・・・・・)に向かって(・・・・・)手を合わせて下さい。なるべく無心で」

「は、はい」


聖職者の人の言う通りにする。


ああ、これで私も15歳かぁ。

成人を迎え、婚約者(ヴィル)とも遅かれ早かれ結婚するのだ。

あまり実感が湧かない。

モーナは貞操「フィナ様」概念が強く、モーナの前ではヴィルにベタベタ触ることができない。

アイナは『妹』という特権を「フィナ様」活かしてヴィルにお手つきしまくっている。

全く!アンタも一応ヴィルの婚約「フィナ様」者なんだから自重しなさいって思うのよね。


「フィナ様っ!!」

「ひゃっ!は、はい⁉︎」

「無心でお願いします。心だけでなく、顔にも出ていましたよ。喜怒哀楽が」

「ふぇっ⁉︎す、すいません……」


私としたことがはしたない。

神の信託を受けるには、雑念が入ってはならない。

ただでさえ遠い存在に、他の事物のことを思うと、よりお声が聞きづらくなる。


そう、無心よ、無心、無心、無心、無心……








『騎士王』







「っ⁉︎」


どこからとなくそのワードが頭の中をよぎった。

瞬間、『剣の技術』なる知識がドバッと頭の中に流れ込んでくる。


その流れて来たものを私は吸収して、全てできるようだと知覚する。


剣と一体化したようなこの感触、脇に差している剣を振るいたくてウズウズしていた。


「どうやら、職業結果が分かったようですね」


聖職者の人が振り向き、私にそのようなことを言ってくる。

『職業鑑定』というものは、まず受ける者が神に祈り、聖職者がそこにスキルである『鑑定』を触媒としてねじ込み、神から受者に信託を下す。


本来ならば、聖職者の方(・・・・・)はどのような職が授けられたのか分からないのだ。


「え、あ、はい……」

「では、どのような職業を授けられたのか教えてもらっても構いませんか?鑑定書をお書きしますので」

「え、えっと、き、『騎士王』です」


そう言った瞬間、聖職者の人の目が見開かれる。


「……『嘘判定(フォルスチェッカー)』に反応なし……」


何やら聖職者の人が口ずさむ。

私は頭にハテナマークを浮かべ、小首を傾げる。


すると、聖職者の人が先程とは打って変わって真剣な目線になり……


「フィナ様、お時間よろしいでしょうか」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「お分かりになられたでしょうか」

「………」


私は沈黙を保つ。


聖職者の人から聞かされたことは、とても拒否感の強い物であった。


曰く、『騎士王』とは『魔王』を倒す秘密兵器の一つであるとか。

とても胡散臭いが、今の私なら上位の魔物でさえ倒せてしまえると思う。

これはいい。

これで、ヴィルを守るべき力を得たと思えたからだ。


曰く、『騎士王』となった者は、必ず王に報告をしに行かねばならないとか。

別にこれもいい。

対『魔王』の秘密兵器がどこか知らない場所に居るとなったら王国……いや、人類が困る。

それに、報告だけなら時間を取らないと思うから。


曰く、『騎士王』は他の『大魔導師』、『聖女』、そして『勇者』とともに王国の管理下に置かれ、『魔王』討伐に心身を捧げること。

これがダメだ。

つまり、これから知らない人たちと一緒に半端軟禁生活を余儀なくされ、その上戦いの場にまで身を出さないといけないと言われているのだ。


つまり、ヴィルとの結婚も果たすには『魔王』を討伐してからでないと国が認めないとされているのだ。

ここで、私の頭にはあるワードが浮かび上がった。


『駆け落ち』


だが、私は一王国の侯爵令嬢。

王国の意に背くことはするべきでない。

この意思は、すぐさま打ち砕けてしまうこととなってしまう。


それに、ヴィルには私だけじゃなくて、モーナや、アイナもいるもの。

私がいなくたって、ヴィルは大丈夫。


そう思い、私は王都に出向くことを了承した。


だがその思い込みは、のちに世界を変えることとなってしまう。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「ヴィル、ごめん。私……王都まで行ってくる」


そうヴィルに言い残し、王都に向かった。


聖職者の人はすぐさま国王陛下との面会を請願。

通常なら面会はすぐさま通るものでは無かったが、『騎士王』が現れたと伝えると、至急の面会を了承された。


そんなにすごいものなのか、と。


すぐさま謁見の間に案内され、国王陛下の前に通される。


「面をあげよ、フィナ・シェルティンよ」

「はい」


国王陛下に面を向かせる。

侯爵令嬢という肩書きもあり、国王陛下とは何度か会っているが、一対一なのは初めてだったりする。


「最後に会ったのはヴィルとの誕生日であるな」

「はい」

「そう畏まらんでも良い。『騎士王』となったのだ。立場では儂と同等になる」


えぇ……『騎士王』ってそんなにすごいの……


「さて、では簡潔に説明しよう。『騎士王』とはまず『魔王』を討伐する」

「それに関してはもう説明致しました」

「………そうか」


国王陛下が得意げに説明ようとしたところに、先程から国王陛下の後ろに立っている聖職者の人が言う。

カッコつけたかったんでしょうね。


私は、少しだけ親近感が湧いた。


「ふむふむ、ほぉ、『騎士王』についての説明はしたのか」


国王陛下に耳打ちをする聖職者。


「それでは、お主に言うことがある。まず、お主は王国の管理下に置かれ、この王城に住むことになる」

「……はい」

「次に、これから、お主には『騎士王』としての修行がある。それを毎日欠かさず行うのだ」

「…………はい」


日常は簡単に崩壊する。

今朝までヴィルとの当たり前の生活を営んできたというのに、これからは別々に暮らすこととなった。


あぁ……ヴィルに会いたいよぉ……


「そして最後に、残念ながら『大魔導師』と『聖女』がまだ見つかっておらぬのだ。だが、その代わりに『勇者』はすでにおる。


入ってこい、『勇者トオル』よ」


謁見の間の扉が開かれ、銀色に光る鎧に身を包んだ人が現れる。




「俺の名前は『トオル・アカバネ』。よろしくね、フィナ」


私は、『トオル』と名乗った男に何か、よく分からなくて、甘酸っぱい『感情』を抱いた。

作者「テスト勉強がキツイ」


ヴィル「作者は一夜漬けタイプだもんね」


(トオル)「ちゃんと毎日予習復習をしないと」


フィナ「座学は嫌いなのよね……」


国王「儂も儂もwマジ赤点取らなかったらそれでいっしょ」


一同「誰だお前」


学生の皆さんは勉強頑張ってください。

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