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みんなが居る日

僕は本を読み漁る。


僕が読んでいるのは、『勇者』についての本だ。


『勇者ーーこの世の全ての悪を薙ぎ払う為に君臨する人間の最終兵器。

その力は絶大で、剣を振るえば海を割り、地を蹴れば大空に舞い、魔法を使えば城一つ吹き飛ばす。

勇者は、数百年に一度現れるが、それと同時に『騎士王』、『大魔導師』、『聖女』の適職者が現れる。

四人まとめて人々はこう言うーー『勇者パーティ』と。

また、この世の魔族全てを統べる『魔王』にとっては、『勇者』は最大の脅威となりうる』


常識だ。


この世界において、誰も彼もが知っているであろう事柄。


僕は他の誰もいないこの小屋(・・)で、ゆっくりと、うつ伏せになる。


僕、ヴィル・カールフィンデン………いや、今はただのヴィルか。

ヴィルは、薄汚れ、疲れ果てたこの身をゆっくりと、休めさせるのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「ただいま〜」


僕は屋敷の扉を開け、帰宅したことを伝える。


『お帰りなさいませ、坊っちゃま』


メイドさん達が両サイドに立ち並び、深く礼をする。

僕はあまり偉そうなのは好きじゃ無いんだけど……侯爵家長男だからこの扱いは妥当なものか。


「あ!おかえりなさいませ!お兄ちゃん!」


最初に出てきたのは、我が愛妹であるアイナだ。


前から思っていたのだが、僕に対し敬語を使うのは良いが、それならば呼び名を『お兄様』だとかにしてくれないと妙にアンバランスだ。

だがまあ、可愛いから良いか。


「おかえりなさいませ、ヴィル様」


次に出てきたのは、モーナだ。

こちらはしっかりとスカートを掴み、足を片方後ろに下げ、きちんと礼をする。


モーナは王女であるが故に礼儀がしっかりとし過ぎている。

僕とは後々に夫婦になるわけだし、あまりかしこまらないでも良いとは思うが……

ましてや今はまだ公爵家長男と王女様の関係なのだ。

逆に僕の方が彼女に対し敬語を使うべきなのだろうが……初対面の頃からこんな感じのため、無理に変えようとしてもぎこちなくなる。


「うん、ただいま、二人とも。あれ?フィナは?」

「フィナ姉様はただいまお母様と一緒にケーキを作っておられます。まだもう少し時間はかかると思いますので、お兄ちゃんは部屋で待機していてくださって構いません」

「パーティーも夜からですし、私達と一緒に部屋でお茶でもしませんか?」

「そうだね。じゃあ、そうするとしようか」


そういえば、今日は僕の誕生日だ。


フィナは毎年僕のためにケーキを作ってくれて、その味と見た目の豪華さは年が経つにつれてレベルアップしていっている。

昔から手先が器用で、料理系統はもうほとんど完璧に仕上げている。


全く、良いお嫁さんになるね。

もらうのは僕だけれど!


「それで、結果はどうなったのですか!?」


アイナが、キラキラお目目で聞いてくる。

ここで「……『奴隷』」などと言ったらものすごく冷たい空気になるだろうが、幸い僕の鑑定結果は『博士』だったため、気兼ねなく言える。


「『博士』だよ」


『博士』は、学問を追求、研究する者のことで、領主の職業としては大当たりなものだ。


ちなみに『博士』というのは逆に力や魔力が全く無いことを指す職業なので、戦線にて活躍したい者達にとっては大ハズレなものである。


「まぁ、それは良かったですね!」


モーナが嬉々として声を上げる。

アイナは目がまる二つになっていて、口を半開き。

アイナはどうやらあまりわからないようだ。


「お兄ちゃん、『博士』ってなんですか?」

「『博士』っていうのはとっても頭が良い人達のことだよ。僕にとっては、当たりだね」

「そうですよ、アイナ様。ヴィル様はもともと勉学に励まれておりましたので、学問系統だと私も思っておりました」


紅茶をすすりながら、モーナは自慢げに言う。

まぁ、ただし戦闘能力皆無のモヤシですがね。


とまぁ、そんな感じに駄弁っていると、すっかり外は暗くなり、僕の誕生日を祝うためのパーティーが開かれた。


「それでは、我が息子であるヴィル・カールフィンデンの成人に、乾杯」


父上が言い放つ。

いつもは人数が少なく寂しいこの屋敷の食卓も、今日の日のために他の領主やカールフィンデン領民が集まってくれた。


テーブルの上にはフィナが作ってくれたと思わしき三段のケーキがどかっと置いてあり、最上層には僕、アイナ、モーナ、フィナの四人のマジパン、そして中央にはチョコレートプレートに『私達の親愛なる旦那様へ』と書かれていた。

結構恥ずかしかったのは言うまでもあるまい。


食卓の上にはケーキの他にもローストビーフ、七面鳥、コーンスープ、オムレツなどの料理が並び、シェルティン領名産のリンゴをふんだんに使ったデザート(もちろんアップルパイもあるよ)もあった。


みんながみんな僕の為に用意されたのだと知ると、思わず涙が流れてしまう。


「誕生日、おめでとう。ヴィル」

「ありがとう。フィナ」


隣に座るフィナがフルーツジュースを飲みながら微笑んでくる。

その笑顔が僕にとっては日常なのだ。

羨しかろうて。


ちなみに僕は成人したためシャンパンを飲んでいる。


「まあ、これで僕の方が一歳上だね」

「私はヴィルのこと別に年上だとは思ってないわよ?」


そういった他愛のない会話。

これがもう残り僅かなのは、まだ知らなかった。



ちなみに……


「あぁ、あと数刻したら国王陛下もいらっしゃるそうだ」


父上がそのようなことを仰られた。


その後はみんなギクシャクしてて会話も減ったとさ。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



一ヶ月と数日後、今度はフィナが誕生日となった。

僕の時と同じように『職業鑑定』には当日の午前中に行くみたいだ。

『職業鑑定』は基本的に親が連れて行くものだが、あいにくシェルティン領主は欠かせない仕事があるらしく、父上も今は他の場所に出向いているため、僕がフィナの付き添いとなった。


「ふあーー。この間も来たけど、相変わらず大きいなぁ〜」


あんぐりと口を開ける呑気な僕。


その様子を見て、フィナはクスリと笑う。


「そういえばフィナって、どんな職業が良いの?」

「んー……ヴィルが『博士』だから、私はヴィルを守れるような立場になりたいな。剣には自信があるんだよ!」


とか言って力こぶを見せてくるフィナ。

実際はあまり膨れてはいない。

というか、見た目だと筋肉もあまり付いているようには見えない。


だが、実際には騎士の人にも勝てる程の腕前を持っているわけで。


「フィナに守られるっていうのは男として情けないんだけど……ね」

「でも、ヴィルは十分に強いよ。私なんか、勉学にそんな力を注ぐことなんかできないもん」

「そうかな?」


自嘲気味に言う。

僕は最近屋敷の書庫に籠ることが多くなって来た。


「『職業鑑定』って結構人の人生に関わるものなんだと思う。私は」


扉に向かい、ノックする。

コンコン、と、扉が心地よいリズムを奏で、中からあの例の聖職者の女性が………違った。


「いらっしゃいませ、フィナ・シェルティン様。準備はできております。さ、こちらへ」


今日の女性は、前回僕の時と違う人だった。


今日は非番なのだろうか?




しばらくして、フィナが中から出てきた。

優に30分は待っただろう。

僕の時のように、貧血で倒れたりでもしたのだろうか?

しかし、何か雰囲気が違った。


その目は、どこか遠くでも見ているような。


「ヴィル、ごめん。私……王都まで行ってくる」


フィナは、僕にそれだけ告げ、隣にいた聖職者の人と一緒に転移魔法でどこかに行ってしまった。

作者「さーてさてさてここから少しずつ話が進んで行きます」


ヴィル「魔神に会うのはもう少し後だね」


モーナ「相変わらず進行が遅いですね、作者様」


アイナ「まぁ日間ランキングで少しずつ高順位になってきて調子に乗りすぎないように注意してくださいよ」


作者「え、あ、はい」

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