鈴音・スズネ
間に合わんかった……
ということで、今日の夜に(20時間後辺り)もう一本更新します。
「ああん♡ヴィル君かわいいなあ〜」
数日前までかわいそうかわいそう言ってて酒に溺れてた人がすでにいつもの調子を取り戻している。
この人の親バカっぷりは正直世紀末ものだと思う。
でも聞いてて悪い気はしない。
「姉さん、一度確認するのだけれど、ヴィル君の父親って本当にいないのですよね?」
「え?あ、うん。ボクがあのカールフィンデン侯爵とかいう人に幻覚を見せてやってヴィル君を託したんだよ」
ヴィルはアルナ様の子供であることに間違いはない。
だが人間のように有性生殖を行い胎生するのではなく、どちらかというと無性生殖だ。
アルナ様が勝手に妊娠して勝手に産む。
どういうメカニズムか分からないところが神らしいな。
数日後
『ヴィル様、監禁期間が過ぎました。これよりヴィル様は外出の許可を会得されました』
『………分かったよ』
お、どうやらヴィルの謹慎が解けたようだ。
謹慎といっても、地下室で引きこもりの生活をしていただけだけどね。
風呂も食事もしっかり出されて(食事は喉が通らなかったみたいだけど)刑罰としては不十分なんじゃないかなとは思った。
いや、元々ヴィルに罪はないと思うけどね。
でもなんでだろうか。
長らくヴィルのことだけを見ていたおかげで、彼のことをもっと知りたくなった。
彼と話がしたい。
彼と触れ合いたい。
いつしかもう、私はもうヴィル色に染まってしまったのだろうか。
軽尻女では無い。
そもそも私は達のことが好きだったのに裏切られたのだから。
これはその報復でもあるのだろう。
自分の中で達より素晴らしい人物を見つけることによって、自分の中の想いを上書きできる。
乙女とは、恋をする生き物なのかもしれない。
だが、私は一度裏切られる悲しみを覚えてしまった。
だからこそ今は、そしてこれからは絶対に裏切らない人を欲しているから私はヴィルを選ぶのだと思う。
今のヴィルを見ていると、体の底からムズムズしてて、歯がゆい。
「ただいま戻りました」
神としての務めを果たしてきたアトナ様が戻ってこられた。
アトナ様は下界ではそこそこの信仰を集めている神様で、時折供物をちょびっと回収してきて自分で食べている。
ちゃっかりしている人……神だ。
「お疲れちゃん。どこ行ってたのさ?」
「本日はレイモンさんのとこへ行ってきました」
レイモン……ああ、男神様の一人ですね。
そういえば聞いたのですが、地球の神様って実在するんですね。
ちなみに私が地球の冥界にいた時に世話をしてくれたペルセポネ様は清楚風に見えて内心何考えているのか分からない人でした。
今となっては神様って意外と身近なモンなんだなーとも思い始めています。
「で?なにを?」
「勇者、および勇者パーティの監視を頼みました。あのコを連れさせて」
ん、んん?
どうやら私とも関係がないわけではなさそうですね……
「さてと……あー、ヴィル君は謹慎が解けたようですね」
アトナ様が下界の様子を見て呟く。
この人も正直言ってヴィルのことを狙っているのではないかと思う。
明らかにアルナ様とヴィルを見る目が違う。
アルナ様は我が子を見守る親の目だが、アトナ様はオスを見るメスの目にしか見えない。
頭がパーもとより頭の中にヴィルしか入っていないアルナ様は気付いていないようだが……
ヴィルを最初にもらうのは私です!
例え恩神であろうとそれだけは譲れません!
「ああ、そういえば『博士集会』が王都で開催決定したようですね」
アトナ様はそれをアルナ様に伝えると、そのままヴィルのことを見続けます。
「『博士集会』……そうだ、スズネちゃんも行って見たらどうかな?」
「え、私も、ですか?」
「うん、ヴィル君もどうやら参加するようだけど」
アルナ様からそういう誘いが来た。
だが、私はまだ自分の体を上手に扱えない。
もし戦闘になってしまったら勇者パーティの一人と同等レベルで終わってしまうかもしれない。
それにヴィルの覚醒もまだだし……
「………まだ地上には降りてはいけないのでは無いのですか?」
少し睨みをかけて言う。
もちろん怯んでくれるとかは思ってはいない。
せめて形だけの抗議がしたかっただけなのだ。
「確かに君の『改造』はまだ終わってはいないけど、ヴィル君との初コンタクトはしておいたほうがいいんじゃ無いかな?ほら、何か影響を与えない限り」
影響……ですか。
コンタクトを取る時点で少なからず影響は与えることにはなると思うのですが……
そう悩んで苦笑いを浮かべますが、アルナ様が説得の言葉をかけます。
「ヴィル君に会えるんだよ?」
うぅ……確かに魅力的なのではありますが……私って元々失敗など恐れない堂々としたタイプだったのですが最近になって結構引っ込み思案になってしまいました。
原因は他人との交流が無かったのと過去のトラウマです。
アルナ様、アトナ様そしてたまに来る神々の皆さんとは会話をしたりはするのですがやっぱり話が続かないのです。
そのためいつしか会話に抵抗を感じることができてしまいました。
そして決定的なのは男性の存在です。
過去に一回、男神のルール様が訪れた時があったのですが、私がいきなり息継ぎが難しくなり、霊体の状態で死にかけました。
それ以来ルール様もアトナ様と通話でことを済まし、他の男神の方は入れないとアトナ様が言ってくれました。
自分でも信じられないくらいです。
恐らく魂に男性への恐怖が植え付けられているのでしょう。
「行きたいですけど……他の男性が……」
もし、半端な力を持ったまま他の男性に会ってしまうと、私は狂気に飲まれその人を殺してしまうかもしれません。
他の男性とあっても大丈夫なように精神強化もいずれはしてくれるそうですが、今の状況では流石に無理です。
それに……ヴィルのことも傷つけてしまうかもしれませんし……
「今まで見ていましたが実際にヴィル君に会ったらダメかもしれません。これはヴィル君にあっても大丈夫か否かの実験でもあります」
アトナ様が説得してくる。
なるほど。
確かに何事においても実験は必要ですね。
このまま初めてを迎えてその時にヴィルを攻撃してはいけませんもの。
「……分かりました、そうであれば行かせていただきます」
「おー、さすがは我が妹」
あ、あれ?
私、まさかアトナ様にいいように手篭めにされちゃった?
ということで、私の下界旅が決まりました。
下界の様子を見ます。
そういえば、アイナっていう人は薬を飲まされているんでしたね……
この世界の薬は魔法の付与もありすごくよく効くのがウリです。
なんとか精神を持ちこたえているのも、『人情』を司る女神パーシェル様のお陰でしょう。
でも、流石に不憫だとは思います。
アイナは、結果的にどうなるのでしょうか?
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ヴィル「スズネ視点だね」
作者「ここだけの裏話、スズネちゃんは地球では一年生にして学園一の美少女で学園アイドルだった………っていう設定」
ヴィル「でトオルはそんな彼女をもってたっと。ちなみにイケメンで」
作者「リア充ばぜろぉ」
ヴィル「明日ホワイトデーだけど返す人は?」
作者「いねぇよ!今年は母親からも貰えんかったわい!」
ヴィル「親にすら捨てられた不憫な作者www」
作者「わーらーーうーーーなーーーー!」




