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王都

王都。


別に来るは初めてでは無いが、どことなく新鮮さ……というより、違和感を感じる。

その違和感の正体は僕の心にあることは分かっているが、割り切れるほど僕は強くは無い。


王都は王城を中心に広がっていて、活気の溢れる大通りには露店がいくつも鎮座している。

建物は色付きのレンガ造りがほとんどで、地面は色違いのブロックで小さなアートとなっている。


人はもちろんのことエルフ、獣人が出歩いているのはこの国が異種族国家であるからだ。

これが他の国となると人間しかダメだとか人間は入国禁止だとか色々と規制があったりする。


「おらっ!さっさと運べ!」


一際目立つのは、奴隷の存在だ。

この国は異種族も優しいがその代わり法律が厳しい。

小さなケンカごとでも処罰の対象となることもある。

ちなみに刑罰の重さは自宅軟禁(もし自宅が無い場合騎士団の詰所)>懲役>有期奴隷>無期懲役>奴隷>死刑となっている。

有期奴隷と奴隷の違いは、有期奴隷は期間が設けられ、尚且つ人権が保証され、『立場が低い人』という扱いを受けるるが、奴隷は期間もなく永遠で、人権が保証されず、主人となる者の命には決して逆らってはいけない、『モノ』として扱われるということだ。


僕は奴隷制度などどうかと思うが、僕にはそれをどうこうできるほどの力なんて持っていないから何もできやしない。


ちなみに法律の全てを僕は記憶していて、どういう行為をすればどの刑罰に当てはまるかなどは分かる。

類稀なる記憶力と考察力。

こればかりは『博士』であったことに感謝すべきだ。


「ああんテメェ俺様にぶつかってきやがったな!」

「んだとゴラァ!?やんのかボゲェ?」


ふと、外で怒号が飛び散った。


僕は馬車の窓から外を眺めると、そこにはごっつい男の人が二人、言い合っている。


「ちょっと止めて」

「かしこまりました」


僕は馬車の御者さん(ウチのメイドさん)にストップをかけ、馬車を止めさせ、馬車を降りる。


「喧嘩は良くないですよ?」


両手で啀み合う二人を制し、二人に抑制をかける。


「ああ?んだテメェ」

「クソガキが邪魔すんじゃねぇぞゴラ?」


もちろん御二方は聞く耳を持たず、僕に殺気を向けてくる。


馬車は王都の入り口から乗っているもので、御者がカールフィンデン家の者であるだけであり、馬車自体は借り物である。

よって外観だけでは貴族のものだとは思わない上、僕も貴族の服を着ていないため、ただの偽善者のガキだと思われても仕方ないだろう。


「僕はカールフィンデン侯爵長男、ヴィル・カールフィンデンと言う者です。見なかったことにしておきますので、どうかお引き取り願いますでしょうか?」

「カールフィンデンッ!」

「侯爵家……」


自己紹介をしただけで、二人の目は見開かれる。

正直貴族であることを名乗って物事をどうこうするのは好きではないが、善行を積むためなら仕方ないだろう。


「チッ……悪かったよ、叫んじまって」

「あ、あぁ……俺も、ぶつかって悪かった」


二人は仲直りし、そそくさと行ってしまった。


途端、喧嘩の様子を見ていた人々から歓声が上がる。


「さすがはカールフィンデン家!」

「あの人がカールフィンデン家の長男だったのね」

「カールフィンデン侯爵もお優しい方だとは聞いていたが、流石はそのご子息様だ!」


え、えぇ……父上って、まさか結構国民的アイドルだったりするのかね?

あんま領外に出たことが無いからこの反応は予測外だな。


この束の間の満足感が、僕に一瞬だけ婚約者騒動を忘れさせてくれたことは良かった。

すぐさま絶望のどん底に叩き落されることも知らずに……



そしてその一部始終を、仮面の男が一人、ずっと見ていたことは誰も知らない。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「そちらが会場になります。そしてここが、本日ヴィル様に泊まっていただく宿となります」

「うん、分かったよ」


『博士集会』は明後日開催だ。

『博士集会』の場は宿のすぐ近くにあるホール状の建物で、サーカスのテントを思い浮かべてしまう。

ただ色は白で統一され、看板もシンプルなもので、堅苦しさが伝わってくる。

正直、遊びで行く場所じゃ無いだろう。

いや、別に遊びに行くわけじゃ無いけどね?


そして『博士集会』集会所から一番近い宿屋。

3階建ての建物で、一階が食堂、ニ、三階は宿泊スペースとなっている。

裏口からは庭があるようで、庭のスペースに浴場もある。

時間で男女が分けられているタイプで、女性の方が先、男性の方が後という分け方らしい。

まぁ、女性の方が先に風呂に入りたがるのは仕方のないことだろう。


「ヴィル様、こちら、鍵となります」

「ああ、ありがとう」

「朝、昼、夕食に時間指定はないようです。それと、誰かが夜中ノックしても入れてはいけませんよ?」

「あ、うん、分かった」


日中はメイドさんが扉の前で見張っているようだが、流石に深夜とは行かずらしい。

でも、子供じゃないんだから、そんなこと言われていい気はしない。


メイドさんが渡してくれた鍵を見てみると、『304』と書いてあった。

三階の一番端っこだ。

階段登るのめんどくさい……


部屋に入ると、中々想像以上であった。

ベッドはダブルで硬くないし照明用の魔道具もちゃんとしていて掃除も行き届いている。

窓からは庭が見えて、浴場が見えるが、天井が付いているため覗きはできない。

残念だ。

いや、覗かないよ?


それにしても、なかなか広い部屋であることから、この宿屋もそれなりに高級な場所であると思った。

別にボロ屋でもなんなら馬車の中でもいいのに……

と、少し控えめな僕である。


「ふあーーあ、眠い」


転移魔法で王都までは一瞬だったが、そこから馬車での移動があったため、体力の無い『博士』には消耗モノであった。


僕は、少し本を読んだ後、照明を消し、眠りに就いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「僕はカールフィンデン侯爵長男、ヴィル・カールフィンデンと言う者です。見なかったことにしておきますので、どうかお引き取り願いますでしょうか?」

「カールフィンデンッ!」

「侯爵家……」


俺は、ヴィルが喧嘩の仲裁をしているのを見ていた。

ヴィルは控えめで貴族の尊厳などは気にしないはずであったが……この際は身分を利用してことを収めることが最善だと判断したためだろう。


「レイモン様、写真の現像が出来ました」


我が人形(ドール)である、フィストが戻ってくる。

彼女は空間を歪まさせ、遠距離の物を見たり、触れたりすることができる。


しかし、あのクソ勇者ども、訓練ほったらかして今日も今日とてニャンニャンするとは……正直ずっと観察しているこちらの身にでもなってほしい。

天界から見ることもできるが、俺はアクティブな人……神のため、実際に出向く方が良い。

体も、いつくるか分からん戦闘のため体を慣らしておいた方が良いしな。


フィストから受け取った写真には四人の人間が映し出されていた。

勇者トオル、騎士王フィナ、大魔導師モーナ、聖女アイナだ。

アイナは正直に言うとまだ堕ちてはいない。

パーシェルのおかげでな。

だがこの写真があればヴィルをさらに追い詰めることとなるだろう。


心苦しいがこれも世界のためだ。


新たなる世界に生まれ変わるための。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



ヴィル「そういえば寝取られ組の『フィナ』、『モーナ』、『アイナ』って全員最後が『ナ』だね。これって関係あんのかな」


作者「あ、ほんとだ!」


ヴィル「ただの偶然かい」


作者「そんなことは置いといて、この間ブクマ件数見たら900超えててビビったわ」


ヴィル「辛辣気味なコメントが多いけどね」


作者「でも普通に嬉しい。辛辣気味なコメントでもいただけることが何より光栄」


ヴィル「え、M ?」


作者「違うわボケ。とりあえず、これからもどうかよろしくお願いします」

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