プロローグ(上)
作者「これは……作者の実話を90度ひねって妄想とクズイケメン対する憎しみを取り入れた話であるっ!」
ヴィル「要するにただの作り話だね、うん」
注)真のヒロインはまだまだ先だぞっ!
『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず』
とある異世界の偉人が言った言葉だとか。
だが僕はそんなものは肯定しない。
なぜなら、身を以て知っているからだ。
この世界の『理不尽』を。
だから僕は目の前にいる『モノ』にこう答えるのだ。
「力を、くれ」
と。
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僕の名前はヴィル・カールフィンデン。
この世界では多く存在する、貴族の中の一つ、カールフィンデン侯爵家の長男である。
念のため最初に断りを入れておくが、貴族だからといって平民達に威張り散らして悪態をついているわけではない。
僕の父上は、とても優しく領民達からの信頼も厚く、他の貴族達からの繋がりも良かった。
僕は、心から尊敬していたのだ。
だが、そんな父上に悲劇が舞い降りる。
僕が1歳くらいの時、母上が亡くなってしまったのだ。
母上は元々身体が病弱で、僕を産む際も僕を取るか、母上を取るかの瀬戸際だったらしい。
だが、母上は父上の反対を押し切り、僕を産んで下さった。
幸い、僕も母上も無事だったが、母上に後遺症が残ってしまった。
母上の体は日に日に弱っていき、僕が産まれて僅か数ヶ月、その命を落としてしまったのだ。
そんな母上のためにも、僕はこの身を大切に生きていこうと思った。
父上は母上を亡くされてしまったというものの、辛い感情を押し切り、領民達へはいつもと変わらないように接してきた。
そして僕が1歳の時に、父上はとある女性と再婚した。
そして、その新しい母上と父上の間にできた僕と1歳差の子供、アイナ・カールフィンデンが僕の妹となった。
そして、月日が流れ、僕は12歳となった。
「お兄ちゃん、おはようございます」
朝、目が醒めると、愛らしい笑顔をした、我が妹、アイナが僕の隣にいた。
「うん、おはよう。アイナ」
朝の挨拶を交わし、アイナのプラチナブロンドの髪を優しく撫でる。
「はにゃ〜〜〜♡」
すると、アイナから甘く、可愛らしい声が上がる。
可愛い奴め。
「さて、それじゃあ朝ごはんを食べに行こうか」
「はいっ!」
アイナからまた笑みが溢れる。
その笑みと朝日が重なり合い、アイナより一層愛おしく見えた。
僕とアイナは手を繋ぎ二人で朝食へ向かう。
途中メイドさんとすれ違ったりしたが、『おはようございます』と朝の挨拶を微笑ましい目で言われた。
僕たち兄妹は仲がとってもいい。
幼い時から、アイナは僕がそばいることによってすぐに泣き止んでくれた。
父上も母上も僕らの関係をにこやかに見守ってくれた。
だがアイナももう11歳。
そろそろ兄離れをして、ゆくゆくは兄嫌いになるんじゃないかなと内心ビクビクな僕である。
いつかアイナからの呼び名が『お兄ちゃん』から『ヴィル』と呼び捨てにされるかもしれない。酷ければ『お前』になるかもしれない。
そんなことを考えていると、食堂に着いていた。
扉を開くと、父上と母上は既に席についていた。
「おはようございます、父上、母上」
「うむ、おはよう、ヴィル、そしてアイナ」
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはよう、ヴィル君、アイナ」
上から、僕、父上、アイナ、母上だ。
そして、席に着き、朝食のメニューを見てみると……
「アップルパイ?」
ウチではアップルパイが出ると、とある人物が来るという意味を表す。
その人物とは……
「フィナ姉様が来られるのですかっ⁉︎」
アイナが声を上げる。
フィナ・シェルティン。
隣のシェルティン侯爵領の娘だ。
また、僕とアイナの幼馴染でもある。
年齢は僕と同じく12歳。
そのため、アイナは『姉様』と付けている。
シェルティン侯爵領ではリンゴが名産品で、敬意を示すため、シェルティン侯爵領の者がこちらに来る時は、必ずリンゴ料理が出されることになっている。
それで、フィナの場合、アップルパイとなる。
「そうだよ、アイナ」
父上が優しい笑顔でアイナに答える。
それを聞き、僕とアイナは目を合わせ、互いに喜ぶ。
「……あぁそれとヴィル君とアイナ。今日、フィナちゃんとある大事なことを言うからから、用事は早めに済ましてね」
母上がなんとも言えない表情で僕らに言ってくる。
僕とアイナはまた互いに目を合わせ、首を傾げた。
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屋敷のチャイムが鳴る。
そしてすぐさま僕は部屋を飛び出る。
言い忘れていたが、フィナは僕の婚約者だ。
僕とフィナがまだ幼い頃に、僕の父上とフィナの父上がそう定めた。
世間では、貴族の政略結婚は幸せにはならないなどと言われているが、僕はそうとは思わない。
逆に、僕は幸せ者だと思ってしまう。
フィナは、ウェーブのかかったオレンジ色のセミロングで、いつもは堂々としているが僕と話すときに恥ずかしく顔を赤く染め上げ目線を逸らす。
その時にフィナをからかうとポカポカと叩かれたりする。
それもまた、可愛らしいのだが。
ところで、僕には二人、婚約者がいる。
一人は先程紹介したフィナ。
もう一人はなんと、妹でもある、アイナだ。
この国では、実の兄妹や姉弟じゃ無い限り結婚はしても良いことになっている。
まぁだが普通兄妹愛や姉弟愛というのは薄いもので、近親婚というのは珍しい。
だが、僕は兄としていつまでもずっとアイナのことを守っていきたいと思っている。
そして、アイナも僕のことを慕っていたため、晴れて兄妹婚約が成立した。
一応正妻はフィナになるそうだが、僕は二人もちゃんと愛そうと思っている。
この国では大人になって結婚できるのは15歳からとなっており、結婚も男女共にその年齢に達するまでできない。
また、15歳になったら、とあるイベントがあるのだが……コレはまぁいいだろう。
だだっ広いこの屋敷の廊下を駆け回り、エントランスホールに顔を出す。
そこには、ウチの侍女たちが扉の両側にずらっと立ち並び、頭を垂れていた。
そして、扉の外から入ってきたのは………
「ヴィル、久しぶり」
僕の幼馴染で婚約者の一人でもある、フィナが後光を垂れて歩いてきた。
「久しぶり、フィナ」
「えっ…あ、う、うん」
『ヴィル、久しぶり』というところまでは頑張って平常心でマニュアルどおりにできた。
でもそこからのことは考えてなかったようで、僕がはにかむとフィナは目を逸らし、恥ずかしそうにしどろもどろになってしまった。
……今回も、少しからかってやろう。
「なんでフィナは僕に目を合わせてくれないの?僕のことが嫌い?」
「えっ、あっ、違っ」
「そうだよね……僕なんか父上が勝手に決めた政略結婚の相手……所詮、愛なんてものは無いのかな……」
わざとしょんぼりした顔で顔を俯く。
「えあっ……ヴィル………グスッ」
フィナが泣きだしてしまった。
後ろのメイドさんが必死に笑いをこらえてるのだが……
「プッ……ハッハッハッハ」
「…………ヴィル?」
フィナは涙目で僕を見てくる。
フィナの頰には涙の跡があり、僕はフィナに近づき、涙を拭う。
「んんっ……」
「ごめんね、フィナっていつもからかうと面白いから、つい。でも、今回は泣かせちゃったこと、申し訳なく思ってるよ」
そう謝罪すると、みるみるうちにフィナの顔は赤くなり……
「もう!ヴィルのバカ!知らない!」
盛大なビンタを頂いた。
こんな日常が永遠に続くだろう。
呑気なこの頃の俺は、そう思っていた。
作者「さて始まりました第一回後書きコーナー」
ヴィル「ここでは登場人物たちのオフシーン……つまり舞台裏のような、本編では無いキャラクター達のワイワイガヤガヤを見ることができる……オマケです」
アイナ「そうそう、これ三作目だそうですね」
フィナ「過去の反省を生かして、この作品に有効活用してもらいたいわね」
作者「自分のもう一つの作品『魔王軍第零部隊隊長〜絶望の化物〜』もよろしくお願いします」
ヴィル「あれ?もう一作は?」
作者「………消した。なんか痛かったから」