第11話「宣伝活動」
第11話目になります。今回も楽しんで頂ければと思っております。
第11話「宣伝活動」
あれから1週間が経とうとしていた。
俺は順調に話数も重ねていき気が付いたら、その話数はすでに13話まで達していた。俺が得意とする速筆が功をなしてハイペースで投稿を続けられている。それに、ptも気が付いたら300ptに到達していた。1週間で300ptなら凡人作家の中でならいい方だろう。しかし、俺はそこからが伸び悩んでいた。
ちょうど300ptに達した辺りから、中々ptが延びていく気がしないのだ。それに加えて、残りの期間は1カ月と3週間を切っている。今のままのペースで行くとなると、到底10000ptなんて夢のまた夢だった。
「さてと、どうしたものか。今のままだと確実に勝負には負けるよな」
「だったら、もう勝負を諦めて私のに下僕になりなさいよ」
「って梨衣先輩! どうして、当たり前のようにここにいるんですか?」
しかも、昨日とか当たり前のように家に泊まってたし。
「それは、彼女だもん。休日は彼氏と一緒に過ごすって決まっているでしょ」
「だから、俺たちは恋人同士じゃないですって!」
「でも、このままだとそうなることが確定じゃない。だから、今からイチャイチャしよ?」
「しませんよ!」
だから、どうしてそうなるのだ? それにまだ勝負が着いたわけでもない。まだ、なにかしらの方法はあるのだ。
今回の作品はよりリアルに近づけながらの非日常感を出すように心がけている。その甲斐あってか、今までには考えられない位のptは集まっているがそれでもまだ足りない。
他になにか沢山の人に読んでもらう方法はないものか。
俺は普段、小説投稿サイトに小説を投稿すると、その活動報告が出来る欄を使い小説の投稿のお知らせを行っていた。あとは、前置きとかか。しかし、それは便利な反面、そのサイトを使っている人の目にしか入らないということで、それにそこで更新情報を見たとしても、全員が全員作品を読んでくれるとは限らないわけで。
「難しい問題だな」
俺は思わずそう呟いてしまう。どうやったら、凡人作家は10000ptに到達できるのか、分からない。天才と凡人はやっぱり違うのか?
「ねぇねぇ、成未くん」
ナチュラルに家でくつろいでいる先輩が声をかけてくるので、俺はそちらに振り返った。
「どうしたんですか? 梨衣先輩」
「成未くんってSNSとかはやってないの?」
SNS、ツイッターとかフェイスブックとかのことか。
「やってないですね」
今時、SNSをやっていない若者は珍しいらしい。しかし、俺はやっていなかった。昨今ではそういうツイッターやフェイスブックといったSNS絡みの事件が相次いでいると聞いたことがあったので、どうにもやる気が起きなかったのだ。
「梨衣先輩はやってるんですか?」
「私も前はやってなかったんだけど、担当編集者の人にツイッターで告知をすれば宣伝効果になるって言われて始めたの。効果があるかどうかは分からないけど」
「ツイッターか。でもな~、やったところで本当に意味があるのかな?」
「でも、ツイッターをやることによって感想とかは気軽に言ってもらえるようになったっていう利点はあったかな」
「たしかにそれは、利点かもな」
たしかに、作家にとって読者の生の声を聞くというのは貴重なことではある。
「う~ん、どうしたもんか」
「別にやってみてもいいと思うけどな。別にみんなみたいにそこまでツイートとかしなくてもいいんだし。私だって、そこまでツイートはしてないよ。ただ、小説の更新情報だけとかに限定したりしてさ」
「なるほど。たしかにそれなら変なことは起きなさそうだな」
「うんうん。それにその方がもっと成未くんの小説を見てもらえるだろうし」
う~ん、たしかに今のままでは手詰まりな感じが否面ないので、やれることはやっておくべきだとは思っている。
「分かった。やってみるよ」
俺は先輩にそう言うと、ツイッターのアプリをインストールして、登録していく。
えっと、これがこうしてこうなって、これで登録完了と。早速、ツイートしてみるか。
Naru『新作である「メモリーズ・ユアーズ~君と歩む1年間~」を投稿いたしました。ぜひ読んでみてください』
これでいいのかな?
俺が不安に思っているとすぐに反応が来る。
Shinoがフォローしました。Shinoがあなたにリプライしました。
『Naruさんの新作読ませて頂きました。これからの展開に期待ですね!』
ん? このShinoって絶対に先輩だよな。
俺がそう思っていると、先輩はいきなり俺の発言をリツイートしていた。先輩の方を見ると、ぐへへと笑っている。
まさか先輩、それがやりたかったわけじゃないよな?
「でも、これで少しは人気が出てくれるといいんだけど」
「あとは自分のマイページに、ツイッターを始めたっていう報告をすれば、もっと読んでくれる人が増えるかも」
そっか、そこでも報告した方がさらにツイッターの方も見てくれる人が増えるのか。ツイッターでも宣伝して、いつものサイトでも宣伝をする。二重の宣伝効果があるわけか。
「それだけじゃないわよ。ツイッターって人が発言したことを、リツイートって言って、他のユーザーがどんどん呟いていってくれるの。だからこそ、すごい宣伝効果になるのよ」
へぇ~~、今までこういったことはやっていなっかったが、そんなにすごいものなのか。とにかく、ツイッターをやった効果はそのうち分かるか。
俺は一度伸びをした。とりあえず、これでしばらくは様子見かな。あとは俺にはどうすることも出来ないし。連載は始めてしまったんだ。今からやめることなんて出来ない。
だったら、俺は出来る限りの最高の作品を書きあげて、さらには宣伝活動も頑張って興味を持ってもらわわなくてわ。
なんだか、最近は先輩との勝負のことしか考えていなかった気がする。
たまには気分転換に外にでも行こうかな。新しいネタとかも探しておかないと、作品もマンネリ化していってしまうだろうし。
俺はそう思って椅子を立ち、手ごろなパーカーを羽織った。
「あれ、成未くん? どこかに行くの?」
「ええ、ちょっと散歩がてら本屋とか行こうかと思いまして。最近、小説を書くことしか考えてなかったので、少しは気分転換をしようと思ったんですよ。じゃないと、作品もマンネリ化してしまって、それこそ読者に飽きられてしまいますから」
俺がそう言うと、先輩の目がキラーンと光った気がするは気のせいだよな?
「なになに、成未くん今から外に出かけるの?」
「ええ、そうですけど。梨衣先輩はここにいていいですよ。梨衣先輩だって、原稿を進めないといけないんですから」
俺は先輩が言わんとしていることをなんとなく察して、先に潰しておこうと思ったのだが、先輩には通用しなかった。
「ふっふ~ん、成未くんがお出かけすると聞いて私が大人しくここで待っていると思った? 残念、待っていませんでした」
「やかましいですよ、梨衣先輩。その目は絶対になにかを企んでいる目ですよね⁉」
「やだな~、私がそんな企んでいるなんて。私が過去にそうやって企んで成未くんを騙したことなんてないでしょう?」
「どの口がそんなことを言うんですか……」
過去に何回もありましたよね!
「とにかく、成未くんが出かけるならもちろん彼女の私もついていきます。せっかくのデートイベントは見逃せません! それにいつものお家デートはそれはそれで良いけど、私だってたまにはNaruくんの小説に出てくるようなデートがしたい! こんなささやかな彼女の願いを叶えてはくれないのかな?」
そう言って上目使いで俺のことを見てくる先輩を、俺は素直にずるいと思ってしまう。そんな頼まれ方をしたら断れるわけがない。
「はぁ~、分かりましたよ。一緒に行きましょう。それと梨衣先輩、俺が一緒に行こうって言ったのは、彼女としての願いを叶えるためではなく、あくまでも日頃お世話になっている梨衣先輩にお礼をしたいから一緒に出かけるだけですから!」
「もう、そんな誤魔化さなくてもいいのに。成未くんも素直になっていいんだよ。私とデートしたいって言ってくれれば、私は成未くんとなら喜んでデートに行くのに」
まったくこの人は人の気も知らないで、すぐにそんなことを言うのだから。
こないだ、松井先輩にも言われた通おり、梨衣先輩の告白を断るなんて本当にあり得ないことだと俺自身も思っている。だけど、そうするしかなかった。そうしなきゃいけなかった。
「どうしたの? 成未くん」
俺が思考に囚われていると、先輩が心配そうに顔を覗き込んできた。不意打ちで顔を近づけれたため、俺は思わず後ろに飛び退いて距離を取ってしまう。
「なっなんでもないです!」
「でも、顔が真っ赤だよ? もしかして、ちょっとは私のことを意識してくれた?」
「うっ……」
先輩の思わぬ返しに、俺は言葉に詰まってしまう。
「梨衣先輩のことは、前から意識してますよ」
「えっ?」
先輩は驚いた声を上げていたが、俺は自身の発言を誤魔化すかのように言葉を発した。
「とにかく、散歩に行きましょう」
俺はそう言ってささっと、部屋から出て行ってしまう。
「ちょっと待ってよ、成未くん!」
慌てて追いかけてくる先輩を待ちながら、俺は考えてしまう。
もし、先輩と付き合うことになったら、小説のような恋が出来るのだろうか?
考えていて、自分でバカバカしいと思ってしまう。
そんなこと思うことさえアホらしい。だって、俺は……
「成未くん行こう!」
俺の思考が暗い方に向かっていると、先輩が俺の手を取って歩き出してしまったため、俺は先輩に連れられるまま歩き出した。
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