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ショートショート

ショートショート「パソ美とレン子」

作者: 夕凪 もぐら

 


 あのな、ぼくんちにある家具家電その他諸々にはな、基本その全てに名前が付いててさ、その全てが意思を持ち喋るんだ。


 パソコンのパソ美、電子レンジのレン子、テレビのテレ夫、エアコンのフリーザ様、洗濯機のセンちゃん、縫いぐるみのもぐ次郎。どうだい? 笑っちゃうだろ? いい歳してさ。


 一時期はみんなしてお喋りしてさ、随分賑やかだったかな。パソ美がヘソを曲げてフリーズした夏だって、レン子が沈黙した冬だって、みんなで騒がしく笑って過ごしてきたよ。


 でもな、今はもう誰も喋らないんだ。だってさ、名付け親が、この部屋から出て行ってしまったのだから仕方ないよ。うん。


 もちろんぼくが仕事を終えて、ただいまって言っても誰も返事をしてくれない。うん、解ってる。理解している。オママゴトは一人じゃできないんだって。


 だけど理解している癖して、夜眠りにつく時は、カビ臭いもぐ次郎に顔を押し付けて寝るんだ。カビ臭くてホコリ臭いのに、おネムの匂いがして、よく眠れるんだ。


 ごめんな。もぐ次郎。つがいのもぐみは、もう帰ってこないんだ。あの人がもぐみだけを連れていっちゃったんだ。本当にごめんな。もう会わせてやることは叶わないんだって、謝りながら眠りにつくんだ。


 それでさ、いつも朝起きるともぐ次郎は一人でコッソリ泣いたのか、ぐしゃぐしゃに湿っていて、なんだかばっちいから、朝一ネットに入れて、そのまま洗濯機のセンちゃんにぽーいっと投げ入れる。そして、そのまま天日干しするんだ。ぼくはそんなに雑だからもぐ次郎の綿は寄れて、型崩れしてきたけど、今でも健気にもぐみを待ってるよ。


 ぼくはそんなもぐ次郎とみんなに、「おはよう。行ってきます」って言ってから、部屋を出ていくんだ。



 



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― 新着の感想 ―
[一言] 切ない! でもこのお話で一番可哀そうなのは、もぐ次郎ではないでしょうか! もぐみと会えない上に、雑な洗濯をされて、カビ臭くてホコリ臭くされて、しかもいつも朝起きると「ぼく」の涙でぐしゃぐし…
[良い点] ども、音韻です。 良い点。 読みやすい。 だけで終わらせる私が居ます、すいません。 人の小説って、やっぱ難しいんですわ。 それを主にしてる読み専の人達はマジですごいんだなぁって思います…
[良い点] なんか、そういえば、小説ってのは日常の些細なことでも、感じたことを文字にしてつらつら書くことなんだなってのを、思い出させられました。 どうしてそんなことをこの作品で感じたのかは、自分でもよ…
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